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原状回復工事の相場はどれくらい?費用が決まる要素や、コストダウンのポイントを解説

「原状回復工事」とは店舗の撤退やオフィス移転時に発生する、物件を入居前の状態に戻すための工事を指します。
特に、初めて原状回復工事を行う場合では「見積の金額が高額な気がする」「本当にこの価格が適正だろうか?」等、工事費用に関する疑問や不安を抱える企業様が多くいらっしゃいます。

この記事では、原状回復工事費用はどうやって決まるのか、適正価格で発注するためにはどうすればいいのかを解説していきます。まさに今、移転を検討している、まさに今原状回復工事の見積もりを取ったという方にも、ぜひ参考にしていただければと思います。

原状回復工事費用の相場

原状回復工事費用の相場をインターネットで検索してみると、「坪単価3~30万円」といった基準が、目安とされていることが多いようです。ただしこれらは原状回復工事費用全体の平均値や、特筆事項を無視して計算した金額である場合も多く、個々の案件に無条件で適用できる数値ではありません。
あくまでも大まかに見積書の妥当性を判断する場合ではありますが、以下の金額を目安にするとよいでしょう。
・小規模オフィス・店舗(面積50坪未満):3~7万円/坪
・中規模オフィス・店舗(面積50~100坪):6~10万円/坪
・大規模オフィス・店舗(面積100~300坪):8~15万円/坪
・ハイグレードオフィス・店舗(面積301坪以上):15~40万円/坪

それでは、原状回復工事費用はどういった要素で増減していくのでしょうか。変動要素は、大きく以下の5つに分かれます。

① 賃貸借契約によるもの

・賃貸借契約書で原状回復工事の範囲・内容があらかじめ決められている
・最新のインテリジェントビル等、入退去時システム変更料がかかる

② 物件の状態による変動

・使用方法や経年劣化による損傷度合
・テナントが入居時にどれくらい内装工事を行ったか

③ 借主(テナント)都合による変動

・什器や内装等、撤去するものの量
・工事完了までの期限
・特殊な用途で物件を使用した等、通常範囲外の工事必要箇所数

④ 施工業者による変動

・施工業者の工事規模の得手不得手による単価や経費率の相違
・下請け業者の構成の変化

⑤ 市場変化による変動

・入居当時の品番が廃盤になってしまった等、部材在庫の変動
・アスベスト含有製品のため使用不可になった等、法令の新設・改訂
・世間的な材料費の高騰等、市場価格の変動

先ほどの坪単価はこれらの要素を細かく加味せずに計算したものであり、実際には物件の状態や契約内容、市場価格が工事費用の決定に大きくかかわってきます。(ただし、多店舗展開している場合のように、同規模・同仕様の工事を毎年複数件行っている場合は「類似案件の坪単価」として比較の基準になり得ます)
工事費用が適正であるか見極めるためには、工事範囲・内容が見積書の内容と一致しているかを比較するほか、上記のように、日々変動する要素も含めた精査が必要です。

原状回復工事の費用を抑えるためにするべきこととポイント

① 賃貸借契約書の内容を確認する

一般的に、原状回復義務の範囲や工事が可能な日、退去前のいつまでに工事が完了している必要があるかといった事項が記載されています。後から追加の工事・費用がかかってしまわないように契約書の内容をしっかり確認しておきましょう。また、特殊な事例ではありますが、賃貸借契約書によりあらかじめ原状回復工事の範囲・内容・数量・費用等が決められている場合があります。
まずはお手元に「賃貸借契約書」をご用意の上、あらためて内容をご確認ください。文言の解釈にあいまいな部分や難しい部分がある場合は、オーナーや管理会社に確認したり、専門家に相談したりすることでトラブルを避けられます。

② 施工業者に現地調査を依頼する

契約書を確認したら、次は施工業者に現地調査を依頼します。原状回復義務の範囲はオーナーとテナントの合意のもとで進めることが多く、「原状回復義務の範囲に絶対に含まれる/含まれない」という明確な基準はありません。特に初めて原状回復工事を行う場合のように、業界特有の判断基準やトレンドの理解に不安がある場合は、専門家であるコンサルタントに立ち合い依頼することもご検討ください。

③ 見積とスケジュールを確認する

現地調査ですり合わせした工事内容をもとに、施工業者が費用と期間の見積を算定します。工事内容・範囲・損傷具合・物件の規模・業者の繁忙期等の要素により、工事期間は大きく変動する可能性があります。一般的には、工期が短いほど費用も高額になる傾向があるため、余裕を持ったスケジュールで進行しましょう。また、過度なグレードの補修・交換等が行われていないか、この段階での確認が重要です。

④ 業者に発注し着工する

施工業者に正式に発注し、工事が始まったら、進行に問題がないかを適宜チェックしましょう。トラブル防止のため、工事期間中に一度は現地を視察することをおすすめします。工事の進捗やオーナーへの申し送り事項がないかを確認し、想定外の事柄(工期延長等)が発生した際には、すみやかにオーナーに相談しましょう。

原状回復工事費用が高額になる理由

退去時にテナントが行なう原状回復工事の範囲は、共用部分の故意による損耗等をのぞき、多くの場合で「B工事」と「C工事」に分類された箇所を指します。

「C工事」とは「入居時にテナント都合で専有部分に手を加えた箇所」を元に戻す工事のことであり、たとえば内装、コンセントや照明器具、LAN配線、社名の案内表記といった箇所がこれにあたります。C工事はテナント専有部分に関する工事のため、テナントが施工業者の選定~費用負担まで行います。

一方で「B工事」とは「入居時にテナント都合で建物の設備に手を加えた箇所」を元に戻す工事のことです。たとえば空調設備、照明設備、スプリンクラー等、建物の資産価値にかかわるため、施工業者の選定はオーナーが行ないます。ただし、設備変更はテナント都合によるものであるため、施工業者への発注・費用はテナントが負担します。
このように、工事費用を負担しないオーナーが施工業者の選定権を有していることによって、価格競争原理がはたらかなくなってしまうので、工事の費用を注視するようにしましょう。

一般的に、オーナーは工事費用よりも所有物件の資産価値維持を重視する傾向にあり、物件の瑕疵を担保する理由からも、多くのオーナーがビル施工業者を指定業者としています。大型商業施設や大型物件であれば、ビル施工業者=スーパーゼネコンであるため、費用はさらに高額になることが見込まれます。また、施工業者の観点からは、工事範囲・金額を多めに見積もって提出しておくことで、後から追加工事が発生した場合等の調整しやすくしている場合も考えられます。

コストを抑えて原状回復工事を行うために

ここまで見てきたとおり、原状回復工事のコストを抑えるためには、大きく以下4つのポイントがあります。
 ① 必ず現地調査に立ち合って、工事範囲・内容を確認する
 ② 初回提出された見積の工事範囲・内容が①と合致しているか確認する
 ③ テナントが施工業者を選べるC工事は、相見積を取得・比較する
 ④ 余裕を持った工期を設定する

また、この他にも居抜き物件として原状回復工事を行わない「造作譲渡」という手法があります。後継テナントにとっても初期費用を抑えて入居できるメリットがあるため、賃貸借契約書に記載がない場合でも、一度オーナーへ相談してみることをおすすめします。

まとめ

退去通知を提出してから退去するまで一般的には6ヶ月とされているなかで、移転先の検討や退去・工事の日程調整に加え、工事内容や工事金額の査定、工事区分の協議を専門的な知見が無い方が、これらのポイントをふまえて見積の精査・協議を完了させることは大変難しいといえるでしょう。オフィス・店舗の移転などで原状回復工事をする場合に、この記事を参考にしていただければ幸いです。
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