環境

企業が太陽光発電を使うメリットとは?デメリットも合わせて解説

太陽光発電は、太陽電池を利用して自然界に存在する太陽光のエネルギーから電気を取り出します。火力発電のように化石燃料を燃焼させて二酸化炭素(CO2)を排出することがなく、環境に優しい再生可能エネルギーです。日本においては2012年に固定価格買取制度(FIT)のスタートをきっかけに、導入が拡大してきました。事業用の太陽光発電に関しては、固定価格買取制度の開始当初は売電目的での導入が中心でしたが、近年では自社の事業で使用する電力の自家消費目的で導入を検討する企業が増えています。

この記事では、企業が太陽光発電を導入するメリットとデメリットについて分かりやすく解説します。太陽光発電設備の導入を検討されている企業の経営者の方や実務のご担当者の方は、ぜひご参考にしてください。

太陽光発電とは

太陽光発電設備の仕組みと構成、導入する場合の利用目的について簡単に説明します。

今後別記事で、より詳しく解説する予定です。

太陽光発電の仕組みと必要な機器

太陽光発電とは、太陽光のエネルギーを太陽電池により直接電気に変換する発電方法です。

太陽光発電設備を構成する主要な要素は、次の4つです。

①太陽光パネル

太陽光パネルは、太陽電池を強化ガラスで覆ったものです。このパネル1枚の単位を太陽電池「モジュール」と言います。太陽電池モジュールを直列に組み合わせた単位を「ストリング」、ストリングを並列に並べたパネル群全体を「アレイ」と呼びます。

②パワーコンディショナー

パワーコンディショナーは直流電流を交流電流に変換する装置です。太陽光パネルで発電された電気は直流電気になりますので、パワーコンディショナーで交流電流に変換することによって電力の自家消費や、送電線に流すことができるようになります。

③設置架台

太陽光パネルは、アルミなどの金属でつくられた架台に固定して設置します。屋根に設置する場合は、屋根の形状や仕様に適した架台を選定します。空地に設置する、いわゆる「野立て」太陽光パネルは、設置架台をコンクリートや杭による基礎で地面に定着させます。

④配線等その他の設備

太陽光パネルで発電された電力を集めてパワーコンディショナーに送り込む集電ユニットや、分電盤やキュービクル・売電用の電力メーターに接続するための電気配線などの資材も必要となります。発電量や設備異常を監視するためには、電流計測用の変流器(CT)や日射量計、監視カメラ等も必要です。地絡事故を防止するためのOVGR(地絡過電圧継電器)、自家消費利用の場合に系統電力への逆潮流を防ぐRPR(逆電力継電器)も太陽光発電設備に必須のものです。

太陽光発電の利用目的

太陽光発電を導入する目的としては、大きく分けて「売電」と「自家消費」の二つに分けられます。

①自家消費

自家消費型の太陽光発電は、太陽光パネルで発電した電力を自社の建物の照明や空調、生産機械を動かすための電力に使用します。自家消費した電力は、CO2を排出しない再生可能エネルギーとして扱われます。

売電

国の固定価格買取制度(FIT制度)に登録し、太陽光発電で得られた電力を地域の電力会社に売電する仕組みです。

太陽光パネルの出力10kW未満は「住宅用」、10kW以上は「事業用」と分類され、住宅用は10年間、事業用は20年間定額単価での買取りが保証されます。固定価格買取期間の終了後は、自社での自家消費に回すか、電力会社と交渉し任意の契約で売電を継続する方法があります。

太陽光発電を取り入れるメリット

ここでは、太陽光発電を導入する目的のうち、現在の主流である自家消費を行う場合のメリットについて解説します。

太陽光発電を取り入れるメリット①自家消費で電気料金の節減ができる

太陽光発電の導入にあたって、自社で太陽光発電設備を所有する場合は、設備投資としての初期費用が掛かりますが、発電した分は電力会社から電気を購入する必要が無くなるため電気料金が削減できます。

また、夏期の電力デマンド値(最大需要電力)を押し下げる「ピークカット」効果があるため、電力契約の基本料金を下げる効果も得られます。化石燃料の価格高騰などを原因として、電気料金の高騰が続いている昨今では、電気料金の削減効果が期待できます。

太陽光発電を取り入れるメリット②再生可能エネルギーの導入でCO2排出量を削減できる

政府目標である「2030年にCO2 46%減(2013年比)、2050年カーボンニュートラル」に沿って、民間企業にもCO2削減が求められています。

太陽光発電から生み出した電力はCO2を排出しない再生可能エネルギーとして扱われるため、CDPやSBT、RE100などに取り組んでいる企業にとっては有用な手法となります。

環境経営への取り組みは機関投資家のESG投資へのアピール材料の一つとなるだけでなく、企業イメージの向上や、一般消費者からエシカル消費の対象として選ばれる可能性も高まります。

太陽光発電を取り入れるメリット③停電時でも電気が使用できる

災害や事故などの予期せぬ出来事が発生した場合でも、事業継続を確保するために計画を立てるBCP(Business Continuity Plan)対策としても、太陽光発電は有効な手段となり得ます。

自立運転型のパワーコンディショナーを設置すると、日中に太陽光パネルが発電している時間帯は電力を得ることができます。また、日中の発電量の一部を蓄電池に貯めておけば夜間でも電気を使用できるようになります。

太陽光発電を取り入れるデメリット

太陽光発電の導入はメリットだけではありません。自家消費の場合のデメリットについてもよく検討した上で、企業リスクの回避策も準備しておきましょう。

太陽光発電を取り入れるデメリット①初期費用が高額になる

太陽光発電設備の導入には、高額な投資を伴います。

経済産業省の調査によると2021年の事業用太陽光発電システム費用の平均値は25.5万円/kW(出力10〜50kW)、17.2万円/kW(出力1,000kW以上)でした。単純計算で50kWの太陽光発電システムの設置費用の目安は1,275万円、1,000kWになると1.72億円にもなります。

回避策としては、自社投資ではなくPPAやリースによる初期投資ゼロのスキームを活用することが挙げられます。ただし、事業者側に支払う手数料が上乗せされるため、自社投資よりもトータルでの収支は悪くなってしまいます。

また、補助金制度を活用することも可能です。環境省では「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」を実施し、CO2の排出量削減と蓄電池を活用した企業のBCP対策を促進しています。自治体によっては独自の補助金制度を用意していることもありますので、事業所の立地する自治体へ確認してみましょう。

参照:環境省HP 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうちストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業の公募開始について

参照:東京都HP 地産地消型再エネ増強プロジェクト(都内設置)

太陽光発電を取り入れるデメリット②維持管理に費用が掛かる

太陽光発電は、長期的に保有することが前提であることから、維持費用、撤去費用がかかります。

まず、維持費用についてですが、発電効率を保つために、定期的なメンテナンスが必要となる為、継続的に発生します。撤去に関しても、パネルだけでなく、架台や配線なども廃棄処分が必要となり、撤去費用として発生します。また、地震や台風などの自然災害時には設備が損傷したり第三者へ被害を及ぼすリスクもありますので、自然災害に対応した損害保険へ加入しておくことをおすすめします。

太陽光発電の導入にあたっては、上記のような運用コストが必要であり、各種対応のための工数(=社内人件費)がかかることも把握したうえで、収支計画を立てることが重要です。

太陽光発電を取り入れるデメリット③発電量が安定しない

太陽光発電の発電量は日射量に大きく左右されますので、天候の影響を受けます。そのため、収支計画を立てるときに使用する発電量の算定にあたっては、低めに見積っておくとよいでしょう。

自家消費の場合は、大型の蓄電池を導入すると、余剰発電分を貯めておき電力需要の多い時間帯や発電しない夜間に放電することでより大きな設置効果を得ることができます。

まとめ

太陽光発電を導入するメリットとデメリットについて解説してきました。ここに挙げたデメリットについても十分に理解したうえで導入検討を行い、リスク回避策を用意してから導入することを強くおすすめします。

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