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カーボンプライシングとは?脱炭素に向けて各国が取り組む現状とメリット・デメリットを解説

脱炭素社会の実現に向けて、世界中でさまざまな取り組みが行われています。そのひとつとして「カーボンプライシング(CP:Carbon Pricing)」と呼ばれる手法があります。これは、企業などが排出するCO2(カーボン=炭素)に価格をつけて、排出量の抑止を促す政策的な手法です。日本国内においても、政府の掲げる「2050年カーボンニュートラル」の目標を達成するために各種のカーボンプライシング(CP)が既に導入されており、今後はさらに対象となる範囲が拡大され、排出企業の負担も大きくなっていく見込みです。

本記事では、カーボンプライシング(CP)の概要と種類、メリット・デメリットなどについて解説します。脱炭素社会の中で企業が社会的な役割を果たしながら成長し続けるためのヒントになりますので、ぜひ参考にしてください。

カーボンプライシング(CP)とは

参照:資源エネルギー庁HP

カーボンプライシング(CP)は、地球温暖化の主要因であるCO2に含まれる炭素(カーボン)に価格をつける(プライシング)ことで排出する企業や団体に金銭的な負担を求める政策的な手法です。

CO2排出量の抑止策としてカーボンプライシングは非常に有効な手法とされており、先進国を中心に導入が進められています。

カーボンプライシングが求められる背景

「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」では、地球温暖化による気候変動の影響を最小限に留めるために産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑えるという目標に合意しています。その目標の実現には、世界のCO2排出量を2030年までに2010年比で45%減らし、2050年には実質ゼロにする必要があると言われています。

日本政府はこれに呼応するかたちで「2050年カーボンニュートラル」かつ「2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比46%に削減を目指し、さらに50%に向けて挑戦を続けていく」という高い目標を国際社会に向けて表明しています。

GXとカーボンプライシング

2022年10月に政府主催で行われた「GX(グリーントランスフォーメーション※)実行会議」では、排出量に応じて課税する「炭素税」と、企業間で排出枠を売買しながら削減を進める「排出量取引」の2種類を組み合わせたカーボンプライシング制度を具体化する方向で話し合いが行われました。

GXの実現のためには今後10年間で官民合わせて150兆円の投資が必要とされており、その財源の一部としてもカーボンプライシングは今後重要な政策となることが確実です。
※GX(グリーントランスフォーメーション)

温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取り組みを、経済の制約やコストではなく経済の成長の機会ととらえる取り組み。内閣官房に設置された「GX実行会議」において、2050年カーボンニュートラルに向けた今後10年のロードマップが策定されている。

カーボンプライシングの目的とは

カーボンプライシングの導入は、CO2排出量を可能な限り減らすための事業活動や社会生活のありかたを企業や団体、あるいは個人に考えさせて、実践的な行動を促すことに狙いがあります。

CO2の排出量を単なるコストとして捉えるのではなく、排出量を削減する企業努力やCO2を資源として活用する研究などの発展を促し、正当な評価ができる経済の仕組みをつくることが重要です。

カーボンプライシングの種類

参照:環境省HP カーボンプライシングの意義

カーボンプライシングには、「炭素税」や「排出量取引」など排出量に直接価格をつける制度(「明示的カーボンプライシング」)と、排出量を抑制し削減する者を優遇する制度(「暗示的カーボンプライシング」)の二つの手法があります。

明示的カーボンプライシング

明示的カーボンプライシングはCO2排出量に直接価格をつける政策であり、主に次の3つの手法があります。

  • 炭素税
  • 排出量取引制度
  • クレジット取引

・炭素税

炭素税は、企業や団体などの事業活動で排出したCO2に対して直接課税する制度です。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を直接燃料として使用した量や、それを利用する発電方法でつくられた電気の使用量などによって排出量が算定されます。

国内においては2012年より「地球温暖化対策税」という名目で、実質的な炭素税が導入されています。現在の税額はCO2排出量換算で1トンあたり289円となっており、直近では2,000億円を超える税収となっています。

現在の制度では化石燃料の採取あるいは輸入者のみ対象となっていますが、本格的な炭素税が導入されると一般企業や団体にも排出量に応じた直接的な納税義務が生じる可能性があります。

・排出量取引制度(ETS)

排出量取引制度(ETS:Emission Trading Scheme)」は、CO2に代表される温室効果ガスを排出できる量(「排出枠」)を民間企業や国ごとに定めて、排出枠を超過した者が排出枠に余裕がある者から「排出権」を取引によって購入できるようにする制度です。

この取引によって、排出枠を超過した者はコストを負担する代わりに温室効果ガスの排出量を削減したとみなすことができます。現在の日本では、東京都と埼玉県において排出量取引制度が設けられています。

・クレジット取引

CO2の削減や吸収量を「環境価値」とみなして証書化し、売買取引をおこなうのがクレジット取引です。

国内では「J-クレジット制度」「非化石証書」「グリーン電力証書」の3つの制度が政府の認証のもとで活用可能となっています。J-クレジットについては、カーボン・クレジット市場(2023年10月創設)などでのクレジット取引、非化石証書については、非化石価値取引市場(2017年創設)でのクレジット取引、グリーン電力証書は相対契約での取引がなされています。

クレジット取引については下記の記事でより詳細に解説していますので、併せてお読みください。

暗示的カーボンプライシング

「暗示的カーボンプライシング」はCO2排出量に間接的に価格をつける政策です。省エネ機器や再生可能エネルギーの導入など、CO2排出量削減の取り組みに対して、政府が各種の補助金や税制優遇で後押しをすることで脱炭素を推進されています。

また、固定価格取引制度(FIT)と呼ばれる、太陽光や風力、バイオマスなどの化石燃料を使用しない再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間定額で買い取ることを電力会社に義務づける制度も、暗示的カーボンプライシングの一種となります。

その他のカーボンプライシング

カーボンプライシングは政府主導によるものだけではありません。温室効果ガス削減目標を立てている民間企業が、自社の事業活動で排出するCO2の量を抑えるために排出量に独自に価格付けをし、コストとして見えるようにする手法もあります。これは「インターナル(企業内)カーボンプライシング(ICP)」と呼ばれ、導入する企業が増えています。
ンターナルカーボンプライシングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

カーボンプライシングのメリット

カーボンプライシングを実施してCO2排出量にコスト意識を持つことで、企業や団体の考え方や行動の変化をもたらしてCO2排出量の抑制につながるでしょう。製品やサービス提供の過程において、炭素の排出量を抑えることは、カーボンプライシングによるコストの増加を回避できるため競争力を増すことになります。それによって社会全体の脱炭素化をさらに促進するという好循環が生まれます。

また、カーボンプライシングを通じて、自国内においては大企業から中小企業へ、国際社会においては先進国から発展途上国へと脱炭素のために必要な資本を再分配することで、社会全体をカーボンニュートラルへと導くことも期待されるところです。

カーボンプライシングのデメリット

カーボンプライシングの実施によって、企業の事業活動に大きな影響をおよぼす可能性もあります。脱炭素に向けた投資ができる者とできない者の格差が広がり、大きなダメージを受ける企業も出てくることでしょう。

国レベルでは他国とのコスト比較で国際競争力が低下し、規制がより緩やかな国へ生産拠点や投資先を移転しようというカーボン・リーケージの動きが出るなど、その国の経済の停滞を招く可能性もあります。

制度の適用による不公平感が出ないように配慮しつつ、社会全体としてサステナブルな発展を継続できるようなバランスの取れた制度設計が急がれるところです。

世界のカーボンプライシングの状況

1990年にフィンランドで世界初の炭素税が開始されたことを皮切りに、カーボンプライシングは欧州を中心に広がってきました。

EUとその周辺諸国では2005年より「欧州排出量取引制度(EU-ETS)」をスタートさせており、現在ではEU域内のCO2排出量全体の約4割をカバーするまでに至っています。

当初は発電所やエネルギーを大量に消費する産業、航空機輸送などの対象施設ごとに無償で排出枠を割り当てていましたが、現在は対象業種全体での排出枠をあらかじめ定め、オークションによって有償(※)で排出枠を購入する方式となっています。

※ 鉄鋼や化学などの一部の産業部門に対しては国際競争力を損なわないようにするため無償割当を継続しています。

アジア諸国や中南米でもカーボンプライシングの導入が進みつつあります。

世界最大のCO2排出国である中国では2021年より電力事業者を対象として排出権取引制度を導入しており、今後は化学プラントや鉄鋼など排出量の多い分野に対象を拡大することを予定しています。韓国では2015年から排出権取引制度が導入され、カーボンプライシングの対象事業者で国内年間排出量の約7割をカバーしています。

まとめ

各国の制度の普及によって、カーボンプライシングは現在の世界全体の温室効果ガス排出量の2割以上をカバーしているとされています。

今後の国際社会においてもその重要性はますます高まっていくことが確実ですので、制度の概要と目的について理解し自社の事業活動に置き換え、今から対策を検討しておくことには大きな意味があるでしょう。

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