物流業界はドライバーの人材不足や輸送コストの高騰など多くの課題を抱えています。これらの課題を解決するために、「輸送方式の見直し」も有効な方法の一つです。
本記事では、物流業務の効率化とコスト削減に役立つ輸送方式「ミルクラン」について説明します。ミルクランを導入するメリットとデメリット、導入時のポイントなどを詳しく解説していますので、輸送方式に課題をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
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ミルクランとは
ミルクランとは、商品を発注する側が車両を手配して、各サプライヤーを巡回して商品を集荷する方式です。ミルクランという名称は、牛乳メーカーが酪農家を巡回して生乳を集荷したことに由来します。複数箇所を巡回して集荷を行うため、「巡回集荷」とも呼ばれています。
日本国内では自動車業界や家電業界を中心に普及が進んでおり、トヨタ自動車も導入している輸送方式です。商品や製品を生産するために、多くの部品が必要になる業界や、多くのサプライヤーと契約して多くの種類の商品や製品を1日に何度も納入するような業界に向いている方式です。
近年では他の業界でも導入が進んでおり、今後もより幅広い業界に広がっていくことが予想されています。
ミルクランを導入するメリット
ミルクランを導入するメリットは、主に次の3点です。
- 輸送コストを削減できる
- 検品業務を効率化できる
- 在庫を削減できる
1.輸送コストを削減できる
ミルクランでは発注側の企業が車両を手配して集荷するため、サプライヤー側は輸送コストを削減できます。発注側も最小限の車両台数で対応できるため、輸送コストを削減することが可能です。車両の積載効率も高まり、無駄を削減することが可能です。
多くの種類があり大量の部品が行き来する業界では輸送コストの削減が大きな課題ですが、ミルクランを導入すれば輸送コストを大きく削減できます。
また、輸送コストを削減した分だけ、商品の付加価値の向上に費用をかけられるという好循環を生み出すことも可能になるでしょう。
さらに、車両台数を削減することで、CO2の排出量の削減につながることから、環境へ与える負荷も抑えられるため、環境保全にもつながります。
2.検品業務を効率化できる
検品業務を一度にまとめて行える点は、発注企業側の大きなメリットです。従来の納品方法の場合、別々の時間帯に異なる車両で納品されるため、商品が届くたびに検品業務に対応しなければなりません。
ミルクランの場合、自社で手配した車両で集荷するため、検品業務に何度も対応する時間を省けるため、業務の効率を高めることができます。検品業務の対応頻度を減らすことで、これまで商品が到着するたびに発生していた検品業務のコストを削減することも可能になります。
3.在庫を削減できる
ミルクランの場合、必要な時に必要な分だけ仕入れることができるようになるため、過剰在庫を抱えるリスクを軽減することができます。
また、自社で手配する車両で集荷することにより、発注から納品までのリードタイムを短縮化することが可能になることからも、在庫量を適正化できる可能性があります。過剰な在庫を削減することにより、在庫管理のためのスペースや人件費の削減も可能になります。
在庫の適正化は資金繰りにも大きなメリットがあるため、経営効率の向上に大きく役立ちます。
ミルクランのデメリット
ミルクランにはメリットが多い反面、いくつか留意しなければならないこともあります。主なデメリットは以下の3点です。
- 大型車両で対応できないことがある
- 集荷の時間調整することが難しい
- 配送費用が高くなることもありうる
1.大型車両で対応できないことがある
サプライヤーの中には敷地面積が狭く、大型車両を駐車して商品の積み込みを行えないケースもあります。その場合は、小型車両で集荷しなければなりません。
小型車両だと多くの商品を積載できないため、かえって効率が悪くなることもあります。
受け入れ能力に問題がないかを事前に確認しておきましょう。
2.集荷の時間調整することが難しい
ミルクランは限られた時間で複数のサプライヤーを巡回して集荷するため、スケジュールを調整することが難しいというデメリットがあります。
効率良く集荷できるように、事前に適切なルートを探しておく必要があります。また、渋滞にはまらないように、時間帯やコースなども考慮しなければなりません。サプライヤーの数が多くなるほど、集荷時間の調整が難しくなるため、効率性の低下を招く恐れがあります。
ミルクランを導入するときは、配送管理システムなどを活用して、車両の位置情報や集荷状況を確認できる体制作りが必要です。また、渋滞などで指定時刻に間に合わなかった場合の対応について、各サプライヤーと事前に打ち合わせておいたほうが良いでしょう。
3.配送費用が高くなることもありうる
ミルクランのメリットは輸送コストを下げられることですが、場合によってはコストが高くなるケースがあります。
例えば、サプライヤーの拠点が離れた場所にある場合は配送距離が長くなるため、集荷ルートに効率的に組み込めず配送費用が高くなります。
配送量が多い場合も、車両や集荷の回数を増やさなければならない場合が発生するため、コストが高くなる恐れがあるでしょう。
配送費用を抑えるには、集荷する荷物の数量や時間について、サプライヤーと事前に協議しておく必要があります。
ミルクラン導入に向けてのポイント
ミルクランを効果的に導入するために、押さえておきたい2つのポイントをご紹介します。
目的の明確化
ミルクランを導入するときは、なぜ導入するのか、その目的を明確にしておくことが大切です。
目的を明確にしないまま導入するとデメリットが目立ってしまい、コストが上がったり業務の効率が下がったりする可能性があります。「物流コストを削減したい」「業務の効率をアップしたい」など、まずは、導入する目的を明確にしておきましょう。
目的をもとに具体的な目標を設定し、それに基づいたスキームを立ち上げることで、導入後のメリットを最大化できます。集荷先の立地や貨物量、集荷先の敷地面積などを確認し、十分にシミュレーションした上で目的を実現できるかを判断しましょう。
シミュレーションの結果次第では、導入を断念せざるを得ないかもしれません。その場合は、他の配送方式も検討しながら目的の実現を目指しましょう。
スキーム構築の円滑化
想定外の問題が発生したときも迅速に対応できるよう、関係者が集荷状況を確認できる体制を構築しておくことが重要です。スキームを円滑に構築するためには、各サプライヤーとの良好なコミュニケーションが必要不可欠です。急に予定が変更になった場合でも、日頃から良好な関係を築けていれば柔軟に対応できます。
複数の拠点を巡回する場合は、いかに効率よく集荷できるかがカギとなります。集荷場所や時間帯、商品の物量だけでなく、トラブルが発生した場合の対応策などを事前に確認しておきましょう。
スキームを円滑に構築するために、配送管理システム(TMS)を活用するのも一つの方法です。
配送管理システムは、GPSを活用して最適な集荷ルートを算出できるほか、配送順や集荷予定時刻の計算などを行えます。事故や渋滞によって集荷に遅れがでそうな場合も、事前に対応策を練ることが可能です。
まとめ
ミルクランを導入すれば、輸送コストの削減や検品業務の効率化といったメリットを得られます。その一方で、集荷時間の調整が困難を極めたり、配送費用が高くなったりする場合もあるため、注意が必要です。
実際に導入する際は、目的を明確にして十分なシミュレーションを行い、必要な物流体制を確実に整えておきましょう。
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