SCM/物流

ロジスティクス4.0とは? 物流業界の現状と課題解決に向けて詳しく解説

ECサービスの普及などによる配送需要の増加や人手不足解消といった物流の課題を解決するために、AIや自動化などの先端技術を取り入れた物流改革「ロジスティクス4.0」が注目されています。ロジスティクス4.0によって、省人化と標準化がもたらされ、物流業界が抱える課題解決も期待されています。

本コラムでは、ロジスティクス4.0について、物流業界が抱える現状の課題と、課題解決のための国の取り組みについて解説します。

SCM/3PL/物流のお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、現状把握から施策の立案・実行まで一貫したサポートが可能となります。SCM改善について皆様からのご相談をお待ちしております。

 

ロジスティクス4.0とは

ロジスティクスとは、原材料の調達から商品・製品の販売までの流れを一元管理するシステム(仕組み)のことです。製品の原材料の調達から消費者の手元に商品が届くまでの流れをロジスティクスによって一元化することで、物流工程上の無駄を省いた効率化と、需要と供給のバランスの適正化が実現します。

ロジスティクス4.0は、物流業界における4回目の大きな変化(イノベーション)を指します。現在まで、以下のように人類の新技術の発見や進歩により、ロジスティクスのイノベーションが数回発生しています。

物流業界の流れ時期おもな変革
ロジスティクス1.020世紀初頭輸送の機械化 (帆船→汽船・鉄道・自動車へ変化)
ロジスティクス2.01950・60年代~荷役の自動化(ベルコン、フォーク、コンテナなどの登場)
ロジスティクス3.01980・90年代~管理のシステム化(TSM、WMS)
ロジスティクス4.02010年代~装置産業化(自動化、 ロボット、シェア、SCM)
(参考文献) 小野塚征志:「ロジスティクス4.0」、p16、日経文庫、2019

ロジスティクス4.0では、AIによる分析や倉庫の自動化、自動運転トラックやドローンといった先進テクノロジーによるイノベーションがもたらされます。

すでに多くの企業が倉庫の自動化、AIを活用した需要予測などのロジスティクス4.0に該当する取り組みを行っています。

物流業界は、輸送・倉庫管理など各工程で人手不足という問題を抱えています。また、近年のネットショッピング普及の拡大によって物流の需要が増加したことで、ロジスティクスは時代に合わせた変化を迫られています。

ロジスティクス4.0で重要な2つのポイント

ロジスティクス4.0では、人手不足や環境問題といった物流業界の抱える課題を解決しながら、市場のニーズに応えるための改革として、「省人化」と「標準化」がもたらされるとされています。

省人化

省人化とは、ロジスティクス上での人手不足を解消するための改革です。すでにロジスティクス3.0ではTSM、WMSによって管理業務をシステム化することで省人化が行われています。ロジスティクス4.0では、管理業務に加えて以下のような技術を導入することで、運転や操作、判断といった分野での省人化が行われます。

  • 輸送車の自動運転
  • ドローンによる配送
  • 追従運搬ロボット
  • AIによる需要予測など

AIが習得した情報を分析することで、ロボットでも必要な行動がとれるようになりました。これまで人間でなければできなかった、複雑な作業も自動化でき運送や梱包、検品といった工程での省人化が実現します。また、追従運搬ロボットをはじめ最近では、協業型のロボットも多くリリースされていますので、人間の安全を確保しながら生産性を向上することが出来るようになっています。

標準化

標準化とは、誰が行っても同じ結果や成果をあげられるように業務プロセスを最適化することです。モノとインターネットを結び付けるIoTの技術が進歩したことで、リアルタイムでの情報共有と蓄積が可能となりました。ロジスティクス4.0では、業務の指示や状況判断といった分野での標準化が進みます。また、ルート配送の配車のような複雑な業務も、AIの機械学習や分析によって最適な輸送方法やルートを選定できます。

標準化が進むことで、一定の知識やスキルのある人材がいないと業務が進まない属人化の解消にもつながります。状況判断や指示といった人間が行っていた領域をAIやロボットが行うことで、物流におけるオペレーションも標準化されます。その結果、業務や工程ごとの作業成果のばらつきがなくなり、品質の均一化にもつながります。人間が行っていた判断や指示、管理といった複雑な業務による負担も解消されます。

物流業界の現状の課題

ロジスティクス4.0が注目される背景には、物流業界が抱えるさまざまな課題があります。

現状の課題として以下3点について解説します。

  • 物流業界の環境変化
  • 人手不足
  • 小ロット対応への負担増

物流業界の環境変化

近年、以下のように物流業界を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。

  • EC物流の増加
  • 燃料費の高騰
  • 災害の甚大化
  • 人件費の上昇

インターネットの普及により、ECサイトは爆発的に増加しています。経済産業省の「令和4年度電子商取引に関する市場調査」によると、物販系分野のBtoCのEC市場規模は、前年の 13 兆 2,865 億円から 7,132 億円増加し13 兆 9,997 億円(増加率5.37%)となりました。EC 化率も 9.13%と前年より 0.35 ポイント増加しています。日本国内におけるEC化率は2013年より右肩上がりにあり、2013年の3.85%から10年足らずで約3倍に迫る勢いで増加しています。

EC物流が増加することでECサイト間の競争が激化し、「早く・安く品物を届ける」などの市場ニーズも高まっています。その結果輸送ドライバーの不足や物流倉庫での業務の複雑化などのEC物流における負担増につながっています。

ほかにもコロナ禍やウクライナ危機による燃料費の高騰や、近年激甚化する災害へのBCP対策なども、物流業界を取り巻く課題のひとつです。

人手不足

経済産業省・国土交通省・農林水産省がまとめた「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」では、トラックドライバーの働き手の内訳は若年層と高齢者が少なく中年層の割合が高くなっており、全産業に比べて労働時間が約2割長くなっています。

さらに、トラックドライバーの年収は全産業と比較して5%〜10%低く、労働環境や待遇が劣悪であることもなり手が少ない原因のひとつとしてあげられています。2024年度からはトラックドライバーに時間外労働の上限(休日を除く年960時間)規制が適用される、いわゆる「2024年問題」もあり、今後も対策をしなければトラックドライバーの減少が急速に進む恐れがあるとしています。

小ロット対応への負担増

EC化が進むにつれて、特にBtoCにおける小口発送の増加や消費者ニーズの高まりを受け、小ロットの頻発化による物流業界への負担が増加しています。小口発送には多くの人手とコストがかかり、生産性が低く利益を回収できません。頻発する小ロットへ対応するためにも、ロジスティクス4.0での省人化や標準化が期待されています。

物流業界の現状と課題について詳しくはこちらのコラムで解説しています。

物流課題解決に向けた国の取り組み

物流業界を取り巻く課題解決のために、国土交通省はさまざまな取り組みを行っています。国土交通省の「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」を元に、物流課題解決に向けた国の取り組みを紹介します。

物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化

物流業務の負担を軽減・簡素化し、「簡素で滑らかな物流」を実現するために、以下のような業務効率化や標準化のためのデジタル化や機械化の施策を講じています。

  • 物流デジタル化の強力な推進
  • 労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進(倉庫等の物流施設へのロボット等の導入支援等)
  • 物流標準化の取組の加速
  • 物流・商流データ基盤等
  • 高度物流人材の育成・確保

たとえば手続書面の電子化の徹底やサイバーポートの推進による港湾物流の生産性向上やデータ基盤の整備、特殊車両通行手続の迅速化、ICTを活用した点呼の推進による業務効率化などが上げられます。

労働力不足対策と物流構造改革の推進

物流業界での労働力不足と変化する物流構造を改革し、「担い手にやさしい物流」を構築するために、以下のような取り組みを行っています。

  • トラックドライバーの時間外労働の上限規制を遵守するために必要な労働環境の整備
  • 内航海運の安定的輸送の確保に向けた取組の推進
  • 労働生産性の改善に向けた革新的な取組の推進
  • 農林水産物・食品等の流通合理化
  • 過疎地域におけるラストワンマイル配送の持続可能性の確保
  • 新たな労働力の確保に向けた対策
  • 物流に関する広報の強化

たとえば倉庫等の物流施設へのロボット等の導入支援、隊列走行・自動運転の実現に向けた取組の推進、貨客混載や共同配送の推進、ドローン物流の社会実装化を行うことで、省人化やサプライチェーン全体の最適化を目指します。

強靭で持続可能な物流ネットワークの構築

甚大化する災害や変化する社会情勢でも停止しない、持続可能性のある「強くてしなやかな物流」を実現するために以下のような取り組みを行っています。

  • 感染症や大規模災害等有事においても機能する、強靱で持続可能な物流ネットワークの構築
  • 我が国産業の国際競争力や持続可能な成長に資する物流ネットワークの構築
  • 地球環境の持続可能性を確保するための物流ネットワークの構築(カーボンニュートラルの実現等)

たとえば災害発生時の基幹的海上交通ネットワーク機能の維持、「ヒトを支援するAIターミナル」の各種取組の推進、自動運転・隊列走行を見据えた道路整備などの災害対策や、モーダルシフトのさらなる推進、荷主連携による物流の効率化、各輸送モード等の低炭素化・脱炭素化の促進などの持続可能性への対応などが該当します。

まとめ

ロジスティクス4.0の概要や省人化と標準化について、物流業界が抱える現状の課題と国の取り組みについて解説しました。物流業界はEC物流の増加や市場ニーズの変化への対応に加えて、人手不足、燃料高騰、災害の甚大化など多様な課題を抱えています。これらの課題は、ロジスティクス4.0のイノベーションによって解決が期待されています。

自社での物流改革にお悩みがあるなら、ぜひプロレド・パートナーズにご相談ください。物流業界の変化や課題に対応する荷主企業の皆様の物流改革へ、一貫したサポートをご提供しております。無料相談も可能です、お気軽にお問い合わせください。

SCM/3PL/物流のお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、現状把握から施策の立案・実行まで一貫したサポートが可能となります。SCM改善について皆様からのご相談をお待ちしております。

 

関連記事

TOP