日本での貨物輸送は、トンキロベースで自動車輸送が半数以上を担い、中心的な役割を果たしています。このうち、チャーター便はその中でも大きな比率を占め、主要な輸送手段として広く利用されています。物流と聞くとトラックが高速道路などを走っている姿をイメージされる方も多いのではないでしょうか?物流においてシンボル的な輸送手段がトラックを利用したチャーター便です。
本コラムでは、チャーター便の特性、メリットや注意点、そして「2024年問題」のドライバー不足という現在の課題とその解決策について解説します。チャーター便に関連する問題に直面している方々は、ぜひ参考にしてください。
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チャーター便とは
チャーター便とは貸切便という呼び方をされることもあり、1社の荷主企業がトラックなどの自動車を借り切って、1件の納品先へ貨物を輸送する方法です。宅配便や路線便で運ぶことができない大量の荷物を運ぶ場合など、輸送に利用するトラックなどの車両に対して十分な物量を輸送する際に利用されます。
チャーター便を利用するメリット
- 他の輸送手段より早く荷物を届けられる
- 納品時間を細かく指定できる
- 荷物の破損リスクが少ない
- 特殊な荷物を運送しやすい
複数の荷主の荷物を乗せる宅配便や路線便と違い、チャーター便は納品先まで他の場所へ立ち寄らずに荷主の届け先に直行するため、輸送時間にロスがありません。そのため、速やかに荷物を届けることが可能です。
荷物の破損リスクが少ないのもメリットの一つです。チャーター便は積み下ろし作業が発着各1回で済むため、荷物の破損リスクが少なく、安全に輸送できます。荷台スペースを自由に使えるため、積み方を工夫すれば走行中の破損も防止できます。また、他の荷主の荷物とぶつかって汚れる心配もありません。
1回の納品物量がトラック1台分に近い程度あれば、一定距離まではチャーター便が最も適切な輸送手段となります。
チャーター便を利用するデメリット
- 輸送距離が長い場合は料金が割高になる
- 物量がトラック1台に満たない場合は料金が割高になる
チャーター便の料金は、荷物の量や容積に関わらず、使用するトラック1台ごとに設定されるのが一般的で、荷物の量が変わっても料金は変わりません。そのため、積載可能量に対して輸送量が少ない場合は、路線便や他の混載サービスを利用した方が経済的です。また、輸送距離が長い、またはトラック1台分を大幅に超える荷物を輸送する場合にも、JR貨物のコンテナ輸送や内航海運などチャーター便以外の輸送手段の選択が適切となります。
さらに、新年度や年末年始などの輸送需要が高まる時期は、チャーター便を手配できない場合もあります。チャーター便の台数には限りがあるため、繁忙期に利用する際は早めに運送会社に連絡して、発着スケジュールを打ち合わせておいた方が良いでしょう。
チャーター便が抱える課題
チャーター便は2024年問題に直面しています。2024年問題とは、トラックドライバーの労働時間の規制が強化されることによって生じる問題のことです。
働き方改革関連法の施行に伴い、2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働時間に年間960時間の上限が設けられ、年間の拘束時間も3516時間から3300時間まで引き下げられます。拘束時間には、通常の労働時間だけでなく休憩時間や待機時間も含まれます。
2024年問題がチャーター便に与える影響には、次のようなものがあります。
- 輸送価格の上昇
- リードタイムの延長
- 委託条件の変更
1.輸送価格の上昇
時間外労働が規制されることにより、トラックドライバーの収入の減少が懸念されています。
これはトラックドライバーの人手不足に拍車がかかることになりますので、物流会社はトラックドライバーへの基本給を上げることでトラックドライバーの収入を確保し離職を防ぐ傾向にあります。これにより、チャーター便に占める人件費の割合が上昇し、輸送価格の上昇に繋がります。
2.リードタイムの延長
拘束時間が制限されることにより、1日で輸送できる距離が短くなるため、関東~関西など輸送距離が600Km前後の輸送において翌日納品が困難となる輸送が発生しています。
3.委託条件の変更
労働時間が減少する中でトラックドライバーの生産性を向上させるためには、拘束時間に占める運行時間の割合を増加させる必要があります。運行時間と休憩時間を除いた残りが、発着地での荷役作業や待機の時間となります。荷役や待機時間が長い場合は、物流会社が輸送を断るケースも発生していますので、作業や待機時間が受託の条件として物流会社から提示されることが想定されます。
チャーター便の課題解決に向けて
ドライバーの低賃金や人手不足、運送費高騰などの課題は、従来から物流業界が抱えていた問題であり、チャーター便だけが抱える課題ではありません。これらの課題を解決するには、デジタルツールの導入や物流ネットワーク構築による業務効率化が必要です。
DX化により業務効率を改善して生産性を上げれば、チャーター便が抱える課題の解決が可能になり、2024年問題による深刻な影響を回避できます。
デジタルツールによる効率化
少ないドライバーでチャーター便に対応するには、デジタルツールによる業務効率化が必須です。まずは効率化できそうな業務を洗い出し、課題を解決できるツールの導入を検討しましょう。
運送業界で導入が進んでいるデジタルツールは、主に7つあります。
運行管理や点呼、勤怠管理など、これまでアナログで行っていた作業をすべてデジタル化することにより、全体の業務が効率化されます。ドライバーの長時間労働といった問題も、デジタルツールの活用によるDX推進で解決できます。
デジタルツール | 特徴 |
---|---|
デジタルタコグラフ | 速度、走行時間、走行距離などの運行データを取得・記録する車載機器。運行データを自動でリアルタイムに把握できるため、ドライバーの業務管理に有効。 |
自動配車支援システム | 積載率や車両運行時間などの条件を考慮しながら、配送ルートの最適化といった効率的な配送計画を立てるシステム。 |
車両動態管理システム | GPS機能を使い、トラックの現在地や荷物の状況を可視化するシステム。配送ルートの変更や顧客からの問い合わせなどに対応しやすい。 |
車両運行管理システム | 運行実績の管理や運賃計算など、車両運行に関する事務処理業務を軽減できるシステム。 |
IT点呼システム | ドライバー点呼を遠隔地で行えるシステム。ドライバーが点呼のために営業所に立ち寄る必要がなくなり、勤務時間を短縮できる。 |
勤怠管理システム | 従業員の始業・終業時刻、運転時間や待機時間などの時刻のデータを記録・集計するシステム。ドライバーの時間外労働時間を把握し、年間960時間の上限を超えないように管理できる。 |
求荷求車システム | 貨物を確保したいトラック事業者と、荷物を確保したい荷主をWeb上でマッチングするシステム。実車率アップや車両積載率の改善に役立つ。 |
上記のデジタルツールをすべて導入するとなると多額の初期費用がかかりますが、もたらされるメリットは大きいので、利用できるツールから導入を始めてみましょう。
物流ネットワーク構築による効率化
輸送業務を効率化するには、物流ネットワークを最適化する必要があります。物流ネットワークとは、倉庫や配送センターなどの物流拠点や輸送の組み合わせのことです。2024年問題を目前に、各荷主企業で物流ネットワークを見直す動きが加速しています。
物流ネットワーク見直しのポイントは以下です。
拠点数を増加し納品先地域に近い場所に在庫することにより、納品先までの配送距離が短くなり、配送コストの削減とリードタイム短縮を実現できます。
更に、納品先に近い場所に在庫拠点を設置できれば、工場や調達先から在庫拠点までの長距離輸送が在庫移動となるため、顧客への納品と異なり、輸送量や頻度を自社でコントロールできるようになります。これにより、積載率の最大化によるコスト削減が可能となります。
まとめ
チャーター便は通常運送よりも荷物を早く、安全に届けることができる方法です。メリットは複数ある一方で、2024年問題などの課題も抱えています。2024年問題に対応するには、デジタルツールの導入をはじめ、物流ネットワーク構築による業務効率化が必要です。しかし、これらの対策を自社だけで行うのは多大な労力がかかります。自社で進めることが難しい場合は、プロレド・パートナーズにご相談ください。
プロレド・パートナーズでは、物流に関わる業務をプロレドのコンサルタントが一貫してサポート致します。物流のコスト削減の取り組みが行き詰っている、そもそも何から取り組めばいいかわからないなどのお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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