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2017.02.03
【連載】『シニアビジネスマーケット』2月号に「財務にインパクトを与えるコスト削減」第4回が掲載されました

シニアビジネスマーケットの経営情報誌『シニアビジネスマーケット』2月号に「財務にインパクトを与えるコスト削減」第4回が掲載されました。
シニアビジネスマーケット第4回

出典:シニアビジネスマーケット2月号

第4回「給食のコスト削減」

給食運営についてのこれまでの動き

近年、学校や病院、介護施設をはじめ、給食業務は直接運営(直営)から外部委託(委託)に切り替える施設が年々増加しています(図表1)。食材の仕入れ、人材の確保、必要機材の購入をすべて自社でまかなう場合、多くのコストがかかるため、委託先に固定の委託費と食材費を支払い、管理を一任するほうがメリットは大きいと考えている施設が増加していることが要因です。
給食業界の歴史において、影響の大きかった制度改革の1つとして、病院における院外調理の認可が挙げられます。1986年より病院給食の外部委託がはじまり、96年には給食に院外からの料理を持ち込むことができる院外調理が認められました。これにより、他の施設で調理を行なったうえで院内に持ち込むことが可能になり、大幅な人員の削減と、生産性の向上を生み出すことができるようになりました。
今回は、委託におけるコスト削減についてご紹介いたします。
図表1

委託運営でのメリット

給食の委託運営におけるメリットをコスト削減の視点から取り上げると以下の3つがあげられます。
すなわち、
(1)人件費の削減、
(2)食材の仕入れ単価の削減、
(3)運営経費(水道光熱費、設備購入費等)の削減の3つです。

(1)人件費の削減
①専属の栄養士/調理師の見直し
直営の場合、管理栄養士に加え、調理師や従業員の採用が不可欠です。これに加えて、人員を採用するための求人費用がかかり、急な人員不足に対しては出勤者を確保する必要があります。
栄養士の設置義務のない施設では、栄養士を施設に常駐させるのではなく、他の介護施設等と兼務している委託先の栄養士を設置することで、人件費の削減が可能になります。自施設の類型や規模によって設置義務が異なるため、栄養士や調理師が必要人員なのか改めて確認をすることでコスト削減が見込まれる場合があります。

②現地調理の人件費削減(介護用加工食品、新調理システムの活用)
病院や介護施設等では、入居者の介護度によって食事の形状を変える必要があり、他の給食運営と比較しても加工調理時間に大幅な時間が必要となります。
96年より院外調理(クックチルやクックフリーズ、真空調理という新調理システム)が認められ、セントラルキッチンにおいて加工や調理した食材を、加熱処理を行ない、急速冷却によりチルド状態にした状態で各施設に配送を行なうようになりました。一度加熱したものを急速冷却しているため、一定の衛生環境が保たれた施設で調理された食事は、品質を維持した状態で施設に納品されます。その食事を施設内で再加熱することによって、安全面にも配慮した食事を短時間で提供することが可能になったのです。
院外調理された食材を活用することは、現地調理にかかる人件費の削減にもつながります。

③衛生基準に沿ったマニュアル作成と工程標準の作成
直営で給食業務を行なう場合、採用から教育まで一貫して施設内で取り組む必要があり、安心・安全な食事を提供するために、作業の標準化、マニュアル化や工程標準の整備をしなければなりません。調理の方法も食事内容によって多種多様であり、施設ですべての作業を標準化、マニュアル化するには多くの時間と人件費が必要になります。
一方、委託の場合、委託企業によりこれまでに構築されたノウハウや標準化された工程標準を使用することができます。また、新調理システムを採用した場合、調理方法を少なくし、調理済みの料理を提供するまでのマニュアル化や工程標準を整備しやすく容易に周知徹底することができます。

(2)食材費の削減
①食材の共同購買仕入れ
直営の場合、食材の仕入れ、検品、追加発注等をすべて自施設にて行なう必要があり、食材の仕入先が複数に渡る場合には、1施設分の食材費は委託と比較して高くなるケースが少なくありません。委託の場合、他施設と合わせて委託先が食材を仕入れることで、ボリュームディスカウントによって仕入れ単価を抑えることができます。また委託先によっては、複数の委託企業でグループをつくり共同購買を行なっているケースもあり、さらに食材を安く仕入れることが可能になります。

②介護用加工食品の活用
病院や有料老人ホームなどの介護施設では、患者・入居者によってソフト食、刻み食、ミキサー食など対応しなければならない食事の種類も多く、調理した食材をさらに喫食者にあわせて加工調理する必要があります。これらの対応は、通常の給食業務に加えて、さらなる製造人件費が発生します。2000年の介護保険制度スタートを機に、多くの企業が介護用加工食品の分野に参入しました。この介護用加工食品に対して、00年から喫食者に合わせた加工食品の硬さや形状を区分した加工食品の基準もつくられました。
保存方法には、乾燥、冷凍、チルド、常温の4種類があり、硬さなどの形状もそれぞれ4段階で設定されており、喫食者の介護レベルに合わせて選択することができます。日本介護食品協議会による年間生産数量では、06〜15年で比較すると、介護用加工食品の生産量は約4倍に達しており、今後もますます市場は拡大していくと考えられます(図表2)。
この介護用加工食品を使用することで、個別対応により発生する手間や製造人件費を削減することが可能です。また、人員の少ない時間帯での活用や、現地調理する食事の一部を切り替え施設の給食費予算や喫食者の介護度などのニーズに合わせて上手く活用することでよりコスト削減を行なうことが可能になります。
図表2
3)運営費の削減
新調理システムの活用
委託企業が保有するセントラルキッチンで新調理システムを用いた料理を活用すると、現地調理にかかる時間や作業を削減することができます。また、新調理システムを一部の食材で採用し、現地調理と組み合わせることによって、人員数や施設の規模、決められた食費に合わせた食事提供が可能です。さらに、新調理システムの場合、必要最低限の設備で運営することが可能になるため、設備の購入をする必要がなくなります。

今回は、給食業務の委託におけるコスト削減を紹介しましたが、コスト削減を行なうに当たっては、①自社の給食運営が直営か委託か、②給食運営にどのくらいの金額をかけているのか、③目安となる給食費の設定、以上3点を明確にする必要があります。
これらを踏まえたうえで、給食運営を直営で行なっている場合には委託運営の検討を、すでに外部企業に委託をしている場合には、今回紹介した人件費、食材費、運営費の3つの観点から、自社の給食運営を見直していただければ幸いです。


・連載第1回「シニアビジネスにおけるコスト削減とは」

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