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カーボンニュートラルとは?世界の潮流から必要性まで徹底解説

カーボンニュートラルに対する企業の取り組みが世界中で加速しています。カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡する事を意味し、アメリカ、EUをはじめとする諸国が2050年までにカーボンニュートラルを達成する事を宣言しています。

この記事では、そもそもカーボンニュートラルとは何か?日本や世界各国の企業で実施されている取り組みの事例などを解説していきます。

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世界の平均気温は年々上昇傾向

(出展:国土交通省 気象庁のHPより)

世界の平均気温は上記気象庁のデータの通り年々上昇傾向にあります。

近年ではこの気温上昇(=地球温暖化)の影響により国内外で様々な気象災害や異常気象が発生しており、IPCC第6次評価報告書にて、地球温暖化の原因は人間活動によるCO2をはじめとする温室効果ガスの排出によるものであるという事実が明らかにされました。

温暖化がこのまま深刻化した場合日本においても、農林水産業、水資源、自然生態系、自然災害、健康、産業・経済活動等への影響が出ると指摘されており、温室効果ガスの削減は持続可能な経済社会をつくるために、誰もが自分事として脱炭素へ取り組む必要があります。2015年に採択されたパリ協定にて世界共通の長期目標が定められて以降、世界中で脱炭素への取り組みが加速しました。

そしてこの世界の潮流に追随する形で2020年10月に日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。また菅前首相は2021年4月に、直近の目標として2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すと述べました。

そもそもカーボンニュートラルとは何か?

カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることであり、事業活動において排出される総排出量を、排出削減や吸収する量でプラスマイナスゼロにすることを指します。他にも「カーボンゼロ」や「ネットゼロ」という言葉を用いる場合もありますが、環境省は明確な違いについては言及しておらず、日本においてはほぼ同義として使われているケースもあります。

(出展:環境省の脱炭素ポータルより)

また、それに紐づいてよく聞かれるワードとして「カーボン・オフセット」というものがあります。こちらは「オフセット=埋め合わせる、相殺する」といった意味を持つ通り、日常生活や経済活動において努力しても削減しきれずやむを得ず排出してしまう温室効果ガス排出量を、他の場所での削減・吸収活動(削減・吸収量)により埋め合わせようという考え方です。他の場所、とはいわば森づくりによって二酸化炭素吸収を促す活動や、再生可能エネルギーの利用などにより温室効果ガスの削減を実現できる活動であり、自身で行う活動としては取り組みが難しいような活動を意味します。その活動によって削減・吸収された温室効果ガスは、一定のルールに基づき「クレジット」と呼ばれるものに変えられ、市場での取引が行われております。

「カーボン・オフセット」とは、このクレジットを購入することで、削減に至らなかった温室効果ガスの排出量を相殺し、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるということです。具体的には「J-クレジット」という環境証書を用いることでオフセットが可能となり、この方法は2008年に環境省が取りまとめた「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」にて策定されています。

この考え方に関しては賛否が分かれており、一部では「グリーンウォッシュ」だとして批判的に捉えている企業や団体も少なくありません。その理由としては、環境証書というものをただお金で買っているだけにすぎず、すでに生み出されている環境価値を取引しているだけで再エネの追加性がない、という見方が強いことが挙げられます。

再エネにおける追加性というのは新たな設備投資の伴う再エネを指し、すでにある再エネの環境価値だけを切り取って取引する環境証書に関しては、上記のような否定的な意見が出ることがあります。脱炭素へ向けては「追加性」というところも新たなポイントとなっており、国内外において追加性のある再エネへの取り組みは加速しています。

カーボンニュートラルに向けた世界の流れ(なぜカーボンニュートラルをすべきなのか)

世界の潮流と取り組み

冒頭で示した通りカーボンニュートラルは世界的な潮流となっており、2021年4月の時点で、125カ国・1地域が、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しています。

(出展:経済産業省資源エネルギー庁のHPより

企業がカーボンニュートラルに取り組む動機とは

では、企業におけるカーボンニュートラルの位置づけはどのようなものでしょうか。企業が取り組む動機として多いものを以下の3点挙げさせていただきます。

  1. 企業価値向上
  2. 投資家からの評価獲得/維持
  3. 外部からの要請

①企業価値向上

ESG戦略の一つとして成長戦略や売上機会の獲得、認知度向上のために企業が自発的に取り組んでいるものです。

世界最大の食品・飲料メーカーであるネスレは2050年までのカーボンニュートラルを宣言していますが、その中の取り組みとして「リジェネラティブ農業」という土壌を修復・改善しながら自然環境を回復させる農業にも取り組んでいます。土壌が健康であるほど多くの炭素を吸収するため、排出されるCO2削減にも寄与する、という考え方です。

また、サステナビリティ素材を使ったスニーカーを開発しているNIKEやadidasなどもこれにあたります。こういった先進的な取り組みによって企業価値向上を目指している企業は少なくありません。

②投資家からの評価獲得/維持

これは日本においては最近になって顕著に表れてきたもので、銀行や投資家からの評価を得るために取り組むものです。銀行においては「SDGs私募債」といったSDGsに関連する団体などに寄付や寄贈を行う私募債商品も出始めています。

みずほフィナンシャルグループ(FG)は、取引先企業の温暖化ガス排出量を算定するための国際基準づくりに日本の金融機関で初めて参画する。みずほも2022年度中に取引先の排出削減目標を設ける方針だ。(2021年7月1日の日本経済新聞より引用)

三井住友フィナンシャルグループ(FG)は31日、2050年までに投融資先も含めた温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすると発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループも5月に同様の方針を打ち出しており、脱炭素化に向けた金融界の取り組みが加速している。

三井住友FGは30年までにグループ全体での排出量を実質ゼロにする目標を5月に掲げた。メガバンクが相次いで実質ゼロの対象を取引先まで広げることで産業界全体の脱炭素化に向けた取り組みを後押ししそうだ。(2021年8月31日の日本経済新聞より引用) 

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は17日、2050年までに取引先も含めた温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすると発表した。脱炭素を明確に打ち出すのは邦銀で初めて。来年度にも実質ゼロに向けた具体的な取り組みに加え、30年までの中間目標を示す。(2021年5月17日の日本経済新聞より引用)

上記の通り三大メガバンクも脱炭素に言及しており、融投資先に脱炭素を求める動きも出ているなど、融資や投資を受ける際の重要なポイントになっていると言えます。また、気候変動に関する情報開示を格付けする「CDP」は、投資家が注目する項目の1つです。

脱炭素の取り組みを推進し、適切な情報開示を行う事で、高ランクの格付けを獲得し、投資家へのアピールへとつなげることが出来ます。

外部からの要請

こちらは②で述べたものと相反するものであり、評価を得るためではなく、取引先であったり互恵関係にある企業からの要請を受けたために取り組まざるを得ない、という動機になります。

例えばApple社で言えば、将来的には全サプライチェーンに対して、再生可能エネルギー100%の電気を使っている事業者しか認めないという考えを示しています。日本でもそういった動きが出始めており、トヨタでは2021年6月に直接取引する世界の主要部品メーカーに対し、CO2排出量を前年比で3%減らすよう求め、注目を浴びました。この動きの根本にある考え方として、CO2の排出量を自社だけでなくサプライチェーン全体で見る動きが強まっていることが挙げられます。

サプライチェーンとは、原料調達から製造、物流、販売、廃棄に至る企業の事業活動のすべてを包括したもののことであり、GHGプロトコル(温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を算定・報告する際の国際的な基準)ではこれらを3つのスコープに分けて捉えています。

(出展:グリーン・バリューチェーンプラットフォームより

これにより、企業のCO2排出量を事業活動全体で捉え減らす動きが大企業を中心に広まり 、前述のような外部要請の流れは強まっていくと予想されます。

まとめ

カーボンニュートラルとは何か、世界の脱炭素に向けた潮流もあわせて解説いたしました。日本政府は2050年までのカーボンニュートラルを宣言していますので、今後さらなる脱炭素への参入・取り組みは加速していくと予想されています。

我々は脱炭素に関する課題において疑問や不安を解決するべく、専門のチームが積極的にご支援いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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