ネットワーク費用のコスト削減
社内DXの推進やクラウドサービス活用の拡大に伴い、ネットワーク(WAN・LAN・インターネット回線)への需要は増え続けており、企業のIT予算に占めるネットワーク費用も増加傾向にあります。プロレド・パートナーズは、ネットワーク費用のコスト構造と最新トレンドを踏まえ、ネットワーク品質を維持しつつ、コストを最適化するコンサルティングサービスを提供しています。
業界・コスト構造
(1)業界を取り巻く環境変化
総じて、DXやクラウド・ゼロトラストの流れによりネットワークはよりソフトウェア定義型・クラウド連携型に変わりつつあります。ネットワーク費用もハードウェア購入や専用回線といった固定費中心から、クラウドサービス利用料やインターネット帯域費用といった変動費的要素が増えています。
(2)ネットワーク費用のコスト構造(カテゴリ別)
企業内で発生するネットワーク関連コストは、大きく以下の3カテゴリに分けられます。LAN・WAN・インターネットそれぞれで費用構造が異なります。
A)LAN(Local Area Network)
オフィスや工場など拠点内のネットワークで、クライアントPCやサーバーなどのコンピュータ、無線LANアクセスポイントや有線ケーブルといった伝送媒体、そしてルーターやスイッチ等のネットワーク機器が該当します。これら機器類は自社所有のほか通信事業者やSIerからレンタル・保守提供を受けるケースも多く、利用の有無に関わらず一定の費用が発生します。
B)WAN(Wide Area Network)
拠点間を繋ぐ広域ネットワークで、異なる拠点のLAN同士を接続するために、IP-VPNや広域イーサネット、インターネットVPN(IPsecトンネル)などのサービスを契約します。従来は高品質なMPLS回線など専用網を使う企業が多く、帯域保証やセキュリティと引き換えにコストが高い傾向にありました。
一方、近年はブロードバンド回線など安価なインターネット回線を組み合わせるハイブリッドWANが普及し、サービス選定においてコストと品質のバランスがより重要になっています。
C)インターネット回線
社外(インターネット)への接続回線で、各拠点やデータセンターから外部クラウドやウェブにアクセスするための回線です。一般にISP(プロバイダ)料金+回線利用料金で構成されます。専用線のようなギャランティ型かベストエフォート型か、契約帯域幅がどれくらいかによって月額費用が大きく異なります。
<ネットワーク費用のコスト構造>
概要 | コスト内訳 | コストの決定要素 | |
LAN | 拠点内のネットワーク | ・クライアントPC ・サーバー ・無線LANアクセスポイント ・有線ケーブル | 機材のレンタル・保守提供を受ける場合は、利用の有無に関わらず一定の費用が発生 |
WAN | 拠点間を繋ぐ広域ネットワーク | ・IP-VPN ・広域イーサネット ・インターネットVPN | 近年は安価なインターネット回線を組み合わせるハイブリッドWANが普及 |
インターネット 回線 | 各拠点やデータセンターから外部にアクセスするための回線 | ・ISP(プロバイダ)料金 ・回線利用料金 | 専用線のようなギャランティ型かベストエフォート型か、契約帯域幅がどれくらいかによって月額費用が大きく異なる |
(3)効果的なコスト削減策
ネットワーク費用を削減するための施策として、従来から行われている「契約見直し」に加え、近年はSD-WANやSASE、クラウド直結といった新しい技術・サービスを活用した方法が登場しています。ここでは、主なコスト削減手法をご紹介します。
A)SD-WANの導入・WANのインターネット化
SD-WAN(Software-Defined WAN)は、ソフトウェア制御により複数の回線を自動的に最適利用する技術です。これを導入することで、高価なMPLS回線から安価なブロードバンド回線へとトラフィックをオフロードしやすくなり、WAN通信コストの大幅削減が期待できます。
実際、SD-WAN経由でMPLSからインターネット回線に置き換えた企業では「高額なMPLSを手頃なブロードバンドに代替して大きなコスト削減を達成した」という事例があります。SD-WANにより複数回線を束ねれば同等コストで従来の倍以上の帯域を確保できるとの報告もあり、帯域単価の劇的な低減につながります。
またLTE/5G回線など無線も含めて複数回線を組み合わせることで、高可用性を保ちつつ低コスト化が図れる点もメリットです。ある卸売業ではキャリア回線の見直しとSD-WAN導入により約35%のネットワーク費用削減を実現しています。
B)SASEの活用によるネットワークとセキュリティの統合
SASE(Secure Access Service Edge)はネットワーク(例えばSD-WAN)とセキュリティ機能(ファイアウォール、ゲートウェイ等)をクラウドサービスとして統合提供するモデルです。SASEを導入すると、各拠点に設置していた専用機器を削減しクラウド経由でセキュリティを適用できるため、機器購入・保守費や拠点間通信のコスト削減につながります。
ある企業の例では、SASEの導入によって通信とセキュリティに関するコストを年間で30%以上削減できました。またネットワークとセキュリティが一体化することで運用管理も簡素化され、結果的に人的コストの圧縮や拠点追加時のコスト低減(スケーラビリティ向上)にも寄与します。
C)クラウドダイレクトアクセス(ローカルブレイクアウト)の推進
従来は全拠点のインターネット通信を本社データセンター経由で行う「集中型ネットワーク」が一般的でしたが、クラウド/SaaS利用拡大に伴い、各拠点から直接インターネットに出るローカルブレイクアウトが有効となっています。各拠点で直接クラウドにアクセスすれば、本社経由のバックホール通信が減りトラフィック効率が向上するため、不要な回線負荷を減らしネットワークコスト削減につながります。
実際、ゼロトラスト型のアーキテクチャを採用しインターネット通信を各拠点にオフロードした企業では「トラフィックのインターネットオフロード」によりネットワークコストが削減されました。ローカルブレイクアウトの実現にはSD-WANやSASEの活用が効果的で、各拠点に適切なセキュリティを適用しつつ、直接インターネット接続することで、ユーザーの体感品質向上(遅延削減)とコスト最適化を両立できます。
D)ゼロトラストネットワークの導入
ゼロトラストは「社内外すべてのネットワークを信頼しない」前提で、ユーザーや端末を都度認証・認可してリソースにアクセスさせるセキュリティモデルです。ネットワークコスト削減との関係では、ゼロトラストを導入すると従来必要だった大規模VPN装置や拠点間の堅牢な内向けネットワークに依存しない設計へ移行できる点が挙げられます。
例えば、クラウド型のゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)を採用すれば、拠点から直接クラウドのZTNAゲートウェイに接続して社内システムに入れるため、本社集中型のVPN回線や専用ハードウェアを減らせます。その結果、オンプレミス機器の設置・維持にかかるコストが削減され、ネットワーク構成の簡素化と運用負荷軽減にもつながります。ゼロトラスト化はセキュリティ強化が主目的ではありますが、副次的にネットワークの構成転換を促しコスト構造をスリム化する効果も期待できます。
E)契約見直しと適切なリソース管理
技術施策だけでなく、「現行契約の見直しや不要リソースの削減」も基本かつ重要なコスト削減策です。各拠点の回線利用状況を精査し、使われていない予備回線の解約や帯域過剰な契約のダウンサイジングを行うことで無駄なコストを排除できます。
実際、ある企業ではBCP目的で敷設された未使用回線を洗い出し解約するなどの適正化を行い、ネットワーク費用の17%削減を達成しています。また複数の通信キャリアと交渉してより競争力ある料金を引き出すことも有効です。既存の回線構成を変えずに価格交渉だけでも5~10%程度の単価引き下げに成功した例もあります。さらに大幅な削減を狙う場合、思い切って他社回線への切替を含めた入札を実施する方法もあります。プロレド・パートナーズの支援事例でも、キャリア乗り換えにより10%以上のコスト低減を実現したケースがあります。契約更改のタイミングでは、最新の市場価格や他社事例を踏まえて適正価格を追求することが重要です。
以上の施策を組み合わせることで、ネットワークコストは大きな削減余地がありますが、通信品質やセキュリティレベルを犠牲にしないことが大前提となります。
プロジェクトアプローチ
プロレド・パートナーズはコスト削減に強みを持つコンサルティングファームです。現状のネットワーク環境と利用実態を精緻に把握し、回線単価の削減に留まらず、トラフィックや働き方、利用環境の変化を踏まえたネットワーク構成の見直しまで支援します。下記4つのステップでプロジェクトを進行します。
アプローチは、①「バックコンサル手法」と、②プロレドが前面に立って協議行う手法の2パターンがございます。②の手法では、1番目と4番目のステップにてご協力いただくのみで、クライアントの負担が最小限となるよう進めていきます。現状把握から契約締結まで、プロレドの専門コンサルタントが一貫してコスト削減に関わる業務を遂行します。

(1)現状把握・データ分析
各拠点に設置した専用機器によるトラフィックモニタリングや、アプリケーション単位での通信状況・時間帯別帯域使用量などの定量データと、契約スペックや利用方針に関するヒアリング情報を組み合わせて、ネットワーク構成および利用実態を多角的に可視化します。特に、実通信量と契約帯域の乖離や、アプリケーションごとの帯域圧迫傾向などを明らかにすることで、過剰な契約や非効率なネットワーク構成の有無を浮き彫りにし、最適化の余地を明確化します。
(2)削減アプローチの策定
分析結果に基づき、SD-WANの導入、クラウドシフトを見据えた分散構成、あるいはトラフィック特性に応じた帯域再設計など、コストと柔軟性を両立する構成案を複数ご提示します。たとえば、リモートアクセス急増に伴うインターネットゲートウェイのボトルネック対策や、ピーク帯域に基づく契約見直しなど、現代の利用実態に即した提案を行い、定量根拠に基づく比較検討を通じて、クライアントと合意形成を図ります。
(3)価格適正化協議
利用状況・将来構想・稼働実態を踏まえ、契約帯域・構成・料金の整合性を可視化し、焦点を「単価の引き下げ」ではなく「契約内容全体の最適化」に置いた提案を行います。既存回線キャリアや新規ベンダーとの交渉支援も中立的な立場で実施し、ネットワーク構成全体の再設計と合意形成を促進します。
(4)新体制策定
合意された内容をもとに、新たなネットワーク構成案・回線契約・運用フローを明文化し、契約書・仕様書・見積書への反映までを一貫して支援します。さらに、導入スケジュールの策定、ベンダー調整、稼働後のフォローアップまで伴走し、プロジェクト全体の円滑な推進をサポートいたします。
コスト削減事例

(1)SD-WAN導入による大幅削減の事例
概要 | 卸売業の企業でキャリア回線の切替とSD-WAN化により約35%のコスト削減を実現しました。また海外の小売業では、SD-WAN+SASEを導入して高価なMPLS網をブロードバンドに置き換え、大幅な通信費削減と運用簡素化を可能にしています。SD-WANは初期導入費用こそかかるものの、中長期で見ると回線コスト圧縮効果が大きく、ROIが高い施策と言えます。 |
(2)契約見直し・最適化による事例
概要 | ある飲食業企業では、拠点間ネットワークの現状を精査し、使われていない冗長回線を解約するとともに、残る回線の料金を再交渉しました。その結果、ネットワーク費用の17%削減を実現しています。また別の事例では、回線や機器構成はそのままに、ベンダーとの交渉だけで10%前後の単価引き下げに成功しています。このように現状の無駄を排除し、市場相場に合わせて料金を適正化するだけでも確実なコスト削減効果があります。 |
(3)SASE/ゼロトラスト導入効果による事例
概要 | セキュアWebゲートウェイ大手の調査によれば、SASEをフル活用することでネットワークとセキュリティの統合運用による30%超のコスト削減が可能とされています。またゼロトラスト化によって「インターネットにオフロードできるトラフィックが増え、ネットワークコストが削減された」というケースも報告されています。もっともSASEやゼロトラストは比較的新しいコンセプトであり、自社環境ですぐ同様の効果を得られるかは事前検証が重要です。段階的な導入で効果とコストを測定しつつ進めることが推奨されます。 |
コストマネジメントのお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。