原状回復工事費のコスト削減術

原状回復工事って何?

原状回復工事とは、「現在の状態」から「入居前の状態」へ戻すための工事を指します。

一般的には賃貸契約書の中で、借主であるテナントは、テナント側の都合により設置した間仕切りや諸設備を取り除き、オーナーである貸主に返還するように定められています。よって、テナント側が入居時に手を加えるほど、それに比例して原状回復工事の費用も大きくなる傾向にあります。退去前に賃貸借契約を確認し、貸主側と原状回復工事の工事範囲を正確に確認することが重要です。

原状回復工事のタイミング

オフィスや商業店舗と、住居用のマンションでは原状回復工事のタイミングが異なります。住居用のマンションの場合は契約期間終了後に工事を実施しますが、オフィスや商業店舗の場合は契約期間満了までに原状回復工事を完了する必要があります。万が一、契約期間内に原状回復工事が終わっていない場合、延長となる期間の賃料をテナント側が追加で支払わないといけない場合もあります。余分な費用が発生するのを避けるためにもスケジュール管理には注意が必要です。

原状回復工事の期間

工事の規模や、賃貸借契約書の内容によって差が大きく、下記の場合は1ヶ月以上の工期となる場合もあります。

  • 大規模なオフィス/店舗を借りている場合
  • 小規模でも個室や間仕切りが多数設置されている場合
  • 空調や照明、天井や床などの設備自体を変更している場合

逆に、それほど規模も大きくなく、ビニルクロスやタイルカーペットの工事だけであれば、1週間以内に完了する工事もあります。

また、オフィスの原状回復工事の場合、他のテナントへの迷惑を避けるため、休日や夜間に施工しなければならない場合が多く、繁忙期となる3月や連休シーズン(5月のゴールデンウィークや9月のシルバーウィーク等)は施工会社の確保も難しくなります。貸主側との打合せの時間も必要なため、3ヶ月以上前にはご相談いただくことをお勧めします。

原状回復工事の費用

大手ゼネコンやビル管理会社に原状回復工事を委託すると1坪あたり「10~25万円」程度の費用が提示されます。ただし、こちらの相場はあくまで大手企業の言い値であり、もし最適な工事内容、工事単価で発注できるのであれば、1坪あたり「5~15万円」での工事発注をすることが可能です。

賃貸借契約内容やオフィスの状態、入居時に増設した設備や工事度合いなどの条件が異なりますので、一度ご相談下さい。

退去・移転時に発生する主要コストについて

オフィスや店舗等の移転、または退去時に発生する主なコスト項目は下記が考えられます。

 ○建物系
 ・原状回復工事、または移転先の内装工事、各種設備工事、など
 ・賃料関連(賃料や中途解約違約金、または移転先の賃料、敷金、礼金)

 ○物品系
 ・什器・備品・OA機器等(廃棄・一時保管・売却、または新規購入)
 ・引っ越し・運搬時用

 ○その他
 ・印刷・郵送・HP更新・警備・セキュリティ対策・システム改修・清掃

退去予定の建物がビルの場合と店舗(フリースタンディング)の場合では発生するコスト項目に違いが出てきますが、ここではすべての借主に対して法律で義務付けられている「原状回復工事」の費用に対するプロレドの適正化コンサルティングをご紹介します。

原状回復工事のコストマネジメント対象範囲

原状回復工事は費用負担や工事会社等によってA工事/B工事/C工事/解体工事の4つに分かれます。プロレドのコストマネジメントでは、B工事/C工事/解体工事のコスト削減を対象としております。

<工事区分とその特性>

A工事
 主にオフィスビルの躯体工事や共用部の施設・通路工事、ガスメーターの設備工事等、ビル本体の工事を指します。
 費用負担 : ビルオーナー側 
 工事会社 : ビルオーナーの指定会社

B工事
 オーナーが工事会社を選定し、費用はテナントが負担する工事を指します。主にオフィスや事務所、店舗として使用するにあたって増設・移設した空調設備や照明設備等が対象です。
 費用負担 : テナント側
 工事会社 : ビルオーナーの指定会社

C工事
 工事会社の選定と費用負担どちらもテナントにある工事を指します。主に専有部分の内装工事や配線工事等が対象です。
 費用負担 : テナント側
 工事会社 : テナント側の指定会社

解体工事
 主にフリースタンディングの場合、更地に戻すための解体工事を指します。
 費用負担 : 店舗オーナー側
 工事会社 : 店舗オーナー側の指定会社

B工事の主な課題及び削減アプローチ

プロレドではC工事だけでなく、一般的に相見積りが取得できず競争原理が働かないB工事に対しても「適正単価」「工事範囲」「工事細目」を検証することでコスト削減を実現しています。

○B工事の“価格面”の特徴
・オーナー指定会社が工事を実施するため、相見積りが取得できず、競争原理が働かない
・オーナー指定会社の下請け工事会社によって、見積の基準が変わる

<顕在化している課題>
価格の妥当性が分からない

<削減アプローチ:①適正単価の検証> 
・工数(人数)、人工単価は適正か
・業務管理費、一般管理費は適正か
・標準的な単価となっているか
・高い見積りを出す工事会社に頼んでいないか

○B工事の“仕様”の特徴
・オーナー指定会社は現地の詳細確認を行わずに見積りをすることがある
・テナントが負担する必要のない範囲まで工事範囲に含めることがあるもしくは工事しない部分も工事対象にしている場合がある
・仕様と実際の工事が合ってないことがある

<顕在化している課題>
・移転は頻繁に発生する業務ではないため、担当者が設計や工事等の専門知識を持ち合わせていない
・相見積りし、他社との比較ができないため、現地実査したとしても余裕のある仕様を選択される
・工事範囲/細目が適切かどうか判断がつかない

<削減アプローチ:②工事範囲の検証 > 
・適切な仕様・工事区分になっているか
・部分修繕で足りるものが全面修繕になっていないか
・適切に諸経費が計上されているか

<削減アプローチ:③工事細目の検証> 
・材料の単価/数量は適正か
・内訳は明記されているか(その他工事、雑費、一式という表記が多用されていないか)
・工事見積りと現場の工事に整合性はあるか

事例のご紹介

【事例Ⅰ】 当社保有データベースの活用等により単価を適正化

受領した初期見積の各項目の単価について当社保有のデータベース、積算書籍・業界団体へのヒアリング内容、他社ベンチマーク等と比較。さらには項目ひとつひとつの精査により効果的な協議を実施、全体価格の適正化を実現いたしました。

単価の適正度合い評価のためのベンチマーク/ノウハウ

○当社保有の実績データベース
当社支援実績に基づくデータベースとの照合
施主側の発注単価データのみでなく、施工会社側の過去取り組み時のデータも保有
上記データベースにて、類似用途・規模・工事内容の単価と比較

○積算実績データ/書籍、専門家へのヒアリング
積算の各種実績データや書籍より公示単価情報との比較
個別業種ごとの専門家や業界団体へのヒアリングにより単価動向を把握

○他社比較ベンチマーク
該当工事が施工可能な企業を徹底的にリサーチした上で、相場価格を確認
複数社への相見積りにより施工エリアでの実勢価格を把握

【事例Ⅱ】 図面と見積書・仕様書のギャップを分析し仕様を最適化

・図面の精査、場合によっては現地視察を行い、見積書・仕様書と照らし合わせてギャップを分析
・図面との不一致を是正、及び過剰となっている仕様について最適化

改善ポイントを見つけるためのチェックポイント

1.『見積書の項目・数量が図面工事内容と一致しているか』
・図面上に記載のない、不要な項目が見積書に計上されていないか
・建築工事/設備工事などで二重計上されている項目はないか
・見積書では分からない内容について、図面上で確認し妥当かどうか
・図面以上の仮設計画がされている場合、施工計画上妥当な仮設計画か

<想定効果>
項目・数量の適正化により工事価格を適正化

2.『見積書の仕様が図面/仕様書、工事内容と比べて適正か』
・図面記載仕様よりハイスペックな品番で見積書計上されているものはないか
・見積書に品番記載が無い項目はどういったスペックを想定しているか
・同等品で安価なもの(純正品→汎用品等)への変更はできないか

<想定効果>
仕様の見直しにより工事価格を適正化

【事例Ⅲ】工事内容の費目分解により発注単価の妥当性を判断する

一式にて価格取決めを行っていたため価格の妥当性が判断できなかった項目について費目分解を行い、過度なグレードの有無の判断や単価の妥当性を確認したうえで協議を実施。相見積を取得する場合も、費目分解した同内容での見積を受領するように徹底することで、施工者候補同士の工事範囲認識違いを防ぎ適切な金額比較と発注単価の見直しに成功いたしました。

発注単価の妥当性を判断するためのアプローチ

○費用項目分解
・項目分解により、端数価格部分を切上げられていた事が判明
・内容が分かりやすくなり項目ごとの検討が可能に

○項目ごとに単価や仕様を精査
・項目が明確になることで、データベースや他社との単価比較を実現
・高値部分について単価協議を実施
・工事品質へ影響のない、足場及び足場付随項目について、仕様の見直しを実施

まとめ

以上、原状回復工事費用の適正化のポイント・施策をご紹介しました。現状の価格が適正なのか疑問を持っている、価格協議をしたいがノウハウがないとお悩みのご担当者様は是非、プロレド・パートナーズにご相談ください。テナント・オーナー(管理会社)・施工会社の三者が納得のいく形を作り上げることが、プロレドのコンサルタントの協議スタンスですので、オーナー様との関係を維持しつつ、完全成果報酬にてコスト削減を実現します。

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