レンタルマット費のコスト削減
企業で契約するレンタルマットは、単なる貸し出しサービスではなく、施設の清潔性維持、安全性確保、企業イメージ向上など多面的な価値を提供する総合的なサービスです。飲食店、医療機関、介護施設、工場など、業種や用途に応じて最適なマットの選定から、定期的な交換・洗浄まで一括して管理されており、そのコスト構造は複雑化しています。プロレド・パートナーズは業界構造や複雑なコスト構造に精通しており、単なる価格交渉にとどまらず施設の美観や衛生に配慮したレンタルマットの最適化を実現します。
1.業界・コスト構造
コスト削減を実現するためには、業界構造やコストの内訳を把握することが大切です。以下では、レンタルマットの業界構造とコスト構造について解説していきます。
①レンタルマット業界の市場動向
レンタルマットはダストコントロール業界の中核を占める商品で、日本国内では複数の大手企業が全国展開しています。ダストコントロール(以下ダスコン)市場全体の売上高は2,642億円(2024年)に達し、そのうち業務市場向けが1,370億円(51.9%)、家庭市場向けが667億円(25.2%)を占めています。
業界最大手のダスキンが市場シェアNo.1を維持しており、家庭市場でダスキン約90%、業務市場でダスキン約55%という圧倒的なシェアを持っています。その他、サニクリーン、ダイオーズ、ユニマットなどが主要プレーヤーとして競争環境を形成しています。
業務市場向けは2015年の1,427億円から2024年の1,370億円へと緩やかな縮小傾向にありますが、依然として大きな市場規模を維持しています。このような市場環境の中、各社は高付加価値商品の開発や新たな市場開拓により、収益性の向上を図っています。レンタルマットは、水を使わずにホコリを吸着保持する機能を持った清掃用具として、エントランス、通路、オフィス内など様々な場所で活用されています。
近年では、新型コロナウイルスの影響により衛生意識が高まり、抗菌・抗ウイルス機能を持つ高機能マットへの需要が急速に拡大しています。また、2025年問題を背景に、介護・福祉分野でのベッド用マットなど、新たな市場セグメントも成長しています。
※2025年問題:団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護需要が急増すると予想される問題。これに伴い、介護施設向けの衛生用品需要の拡大が見込まれています。

出典:ダストコントロール協会
②レンタルマットの種別と特徴
レンタルマットは、用途や機能によって多様な種類があり、それぞれ価格帯や交換頻度が異なります。
■主なレンタルマットの種類
マット種別 | 主な用途 | 特徴 |
吸水・吸塵マット | エントランス 通路 | 土砂や水分を除去し、施設内への汚れの持ち込みを防ぐ基本的なマット |
抗菌・抗ウイルスマット | 医療機関 介護施設 飲食店 | 特殊加工により細菌やウイルスの繁殖を抑制。衛生管理が重要な施設で採用 |
疲労軽減マット | 工場 厨房 レジカウンター | クッション性により長時間の立ち作業による疲労を軽減。生産性向上にも寄与 |
静電気防止マット | 精密機器工場 データセンター | 静電気の発生を抑制し、電子機器への影響を防ぐ特殊機能マット |
③レンタルマット料金のコスト構造
レンタルマットの料金は、複数の要素が複雑に絡み合って形成されています。以下、主要なコスト構成要素とその占有率を示します。
コスト項目 | 内容詳細 | 占有率 |
マット本体償却・調達費 | マット仕入れ費、新品マットの償却、補充分。特注品や高機能品ほど高コスト | 10~20% |
洗浄・クリーニング費 | 洗濯・乾燥工程の人件費、設備償却、水道・電気・洗剤費、排水処理対応など | 20~35% |
物流・回収配送費 | 回収・配達の車両費、燃料、人件費、ルート管理費。郊外や拠点が少ない地域は比率が高い | 25~35% |
保守・品質管理費 | 定期点検、破損交換、抗菌処理などのメンテナンス費用 | 5~10% |
販売・営業管理費 | 営業スタッフ人件費、販売管理システム、CRMツールなど | 5~10% |
管理・本社費用 | 管理部門、間接部門、ITインフラ、人事総務などの共通経費 | 5~10% |
上位3項目(マット本体償却・調達費、洗浄・クリーニング費、物流・回収配送費)で全体の55~90%を占めており、これらがコスト最適化の重要ターゲットとなります。特に過剰スペック商品の見直しは、マット本体の調達コストだけでなく、高機能品ほど洗浄に手間がかかることから洗浄費にも影響し、重量増による物流費の増加にもつながるため、複合的なコスト削減効果が期待できます。
2.プロジェクトアプローチ
プロレド・パートナーズはコスト削減に強みを持つコンサルティングファームです。ここでは、プロレドが手掛けるレンタルマットコスト適正化の特徴をご紹介します。

1.現状把握・データ分析
契約書、請求明細、配置図面、交換履歴などの関連資料を精査し、現地調査を通じて実際の使用状況を確認します。マットの種類・枚数・交換頻度・汚損状況を詳細に分析し、契約内容と実態の乖離を明らかにします。また、複数拠点を持つ企業では、拠点間の契約条件のばらつきや、同一サプライヤー内での価格差なども可視化します。必要に応じてサプライヤーへのヒアリングも実施し、仕様/設置ルール/個数/サイズ/単価等の現状を正確に把握します。
2.削減アプローチ策定
分析結果を基に、以下のような多角的なアプローチで削減策を立案します
- 仕様の最適化:過剰スペックの見直し、用途に応じた適正なマット種別への変更
- 交換頻度の適正化:汚損度に応じた交換サイクルの見直し、エリア別頻度設定
- 配置の効率化:重複配置の解消、必要最小限の枚数への調整
- 契約の集約:複数サプライヤーの集約によるボリュームディスカウントの獲得
- 付帯サービスの集約:サービス統一及び過剰スペック、不要なサービスの廃止
■仕様変更によるコスト削減アプローチ:店舗毎の仕様差の考えられ得る要因と施策例
要因具体例施策例 | 要因具体例施策例 | 要因具体例施策例 |
店舗毎に設置枚数が違う | ・店内通路毎にマットを設置している店舗と店内エリア毎にマットを設置している店舗がある | 面積当たりの設置枚数の統一 |
店舗毎に設置枚数における交換枚数の割合に乖離がある | ・出入口のマットのみ交換している店舗と店内設置マット全てを交換している店舗がある ・汚れが多くなる時期(梅雨時等)の交換頻度や枚数に合わせて契約している | 設置個所毎、季節毎の交換頻度のルール決め |
オーバースペック商品の使用 | ・あまり濡れない場所にも吸水性の高いマットを敷いている | 店舗内の設置個所別のスペックの統一 |
3.価格適正化
プロレドが保有する豊富なベンチマークデータを活用し、業界・地域・規模別の適正価格を診断します。同業他社の契約条件や市場価格との比較分析により、具体的な削減見込み額を算出します。既存/新規サプライヤーに対する見積依頼書の作成、サプライヤーへの見積依頼時の説明資料やトークスクリプトの作成を支援し、根拠に基づいた価格交渉を実施します。サプライヤーと複数回の協議を重ね、双方が納得できる持続的な契約条件へ再設計します。
4.新体制策定
最適化された内容を契約書・仕様書に反映し、持続可能な運用体制を構築します。新体制への移行にあたっては、現場への説明会実施、運用マニュアルの整備、定期的なモニタリング体制の構築など、スムーズな導入と定着を支援します。必要に応じて製品の切替支援、スケジュール調整を行い、実行される仕様最適化に対応する契約の締結に向けたフォローを実施。サプライヤーとの関係性を維持しながら、双方にメリットのある契約条件を実現し、削減結果についてご報告します。
3.コスト削減事例
■削減事例

■削減事例詳細:アパレル小売
【業界】アパレル小売業
【企業規模】約1,000店舗を展開
【課題】レンタルマット・モップ・ハンディモップレンタルの運用を各店舗が独自に設定していることにより、企業として統一出来ていなかった
【アプローチ概要】 現地調査/分析結果から、店舗毎にバラバラの設置状況に対し統一ルール/運用ルールを設定。サイズ/単価/種類が店舗毎の実態を可視化し統一ルール/運用ルールを設定。
【実施内容】
- 店舗調査による設置状況の把握(店舗毎の個数、設置箇所)
- 自社サンプル店舗・競合調査を実施
- 店舗統一のルール/運用ルールを策定
- サプライヤー統一による管理体制の強化
【成果】約1,000店舗のマット・モップ・ハンディモップについての最適な店舗清掃用品設置ルールを策定し、年間9.8百万円のコスト削減を実現
4.参考
レンタルマット業界は、環境意識の高まりとDX推進により、大きな転換期を迎えています。
サステナビリティの観点では、自社洗浄工場での廃水処理・排熱活用によるCO₂削減や、マットの長寿命化による資源循環モデルの構築が進んでいます。これらの取り組みは、環境負荷低減だけでなく、中長期的なコスト削減にも寄与します。
また、原材料価格の高騰がレンタルマット業界にも影響を与えています。原油価格は直近高騰傾向にあり、物流費や原油を元にした素材等への影響が想定されます。
こうした市況悪化に伴い、大手サプライヤーでは価格改定が実施されています。ダスキンは2022年7月1日より、レンタル商品(マット・モップ等)で約3~6%、定期補充商品(レンジフードフィルター等)で約9~11%、販売商品で約11~12%の価格改定を実施しました。サニクリーンも同タイミングで価格改定を実施しており、今後もコスト増により適宜価格改定でレンタル料が上がる傾向にあると考えられます。
一方で、IoT技術を活用した配送ルートの最適化や、AIによる需要予測システムの導入など、デジタル技術の活用により、物流・洗浄コストの大幅な削減が可能になってきています。
今後は、価格競争から価値提供競争への転換が加速し、高付加価値サービス(抗菌・抗ウイルス機能、疲労軽減効果、デザイン性など)と効率的なオペレーションを両立できる企業が市場をリードしていくと予想されます。
プロレド・パートナーズでは、こうした業界動向を踏まえ、単なる価格交渉にとどまらない、持続可能なコスト構造の構築を支援しています。レンタルマットの最適化は、施設の美観・衛生・安全性を維持しながら、確実なコスト削減を実現できる有効な施策です。
コストマネジメントのお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。