原状回復工事費のコスト削減
原状回復工事とは、入居先のオフィスビルや商業施設で「現在の状態」から「入居前の状態」へ戻すための工事を指します。施工会社がオーナー指定のため、相見積を取得することができず、工事費が割高になる傾向があります。プロレド・パートナーズでは、独自のデータベースや公共指標を活用し工事費削減の支援をしています。ここでは原状回復工事の特徴やプロレド独自の削減手法の一部を紹介します。
業界・コスト構造
コスト削減を実現するためには、工事の特徴を把握することが重要です。以下では、原状回復工事のタイミング、工事期間や費用の相場、コスト内訳について解説していきます。
(1)原状回復工事のタイミング
オフィスや商業店舗と、住居用のマンションでは原状回復工事のタイミングが異なります。住居用のマンションの場合は契約期間終了後に工事を実施しますが、オフィスや商業店舗の場合は契約期間満了までに原状回復工事を完了する必要があります。万が一、契約期間内に原状回復工事が完了しない場合、延長となった期間に対して賃料が発生し、その費用を入居者(テナント)が追加で負担するケースもあります。こうした予期せぬコストを防ぐためにも、工事のスケジュール管理は非常に重要です。
(2)工事期間
工事の規模や、賃貸借契約書の内容によって差が大きく、下記の場合には、工期が1ヶ月以上となることもあります。
・大規模なオフィス/店舗を借りている場合
・小規模でも個室や間仕切りが多数設置されている場合
・空調や照明、天井や床などの設備自体を変更している場合
逆に、それほど規模も大きくなく、ビニールクロスやタイルカーペットの工事だけであれば、1週間以内に完了する工事もあります。また、オフィスの原状回復工事の場合、他のテナントへの騒音被害を避けるため、休日や夜間に施工しなければならない場合が多く、繁忙期となる3月や連休シーズン(5月のゴールデンウィークや9月のシルバーウィーク等)は施工会社の確保も難しくなります。
(3)費用の相場
大手ゼネコンやビル管理会社に原状回復工事を委託すると「1坪あたり10~25万円」程度の費用が提示されます。ただし、こちらの相場はあくまで大手企業の言い値であり、適切な工事内容や単価で発注できる場合、「1坪あたり5~15万円」で工事発注をすることが可能です。賃貸借契約内容やオフィスの状態、入居時に増設した設備や工事度合いなどで条件が異なります。
(4)コストの内訳
オフィスや店舗等の移転、または退去時に発生する主なコスト項目は下記が挙げられます。
<退去・移転時に発生する主要コスト>
各種費用 | 詳細 |
建物系費用 | ・原状回復工事、または移転先の内装工事、各種設備工事、など ・賃料関連(賃料や中途解約違約金、または移転先の賃料、敷金、礼金) |
物品系費用 | ・什器、備品、OA機器等(廃棄・一時保管・売却、または新規購入) ・引っ越し、運搬費用 |
その他費用 | ・印刷機器関連、Webサイト更新、警備・セキュリティ対策、システム改修等 |
プロジェクトアプローチ
退去予定の建物がビルの場合と店舗(フリースタンディング)の場合では発生するコスト項目に違いが出てきますが、ここでは共通して発生する「原状回復工事」の費用に対する工事費適正化の特徴をご紹介します。
アプローチは、①バックコンサル手法と、②プロレドが前面に立って協議を行う手法の2パターンがございます。②の手法では、1番目と4番目のステップにてご協力いただくのみで、クライアントの負担が最小限となるよう進めていきます。現状把握から契約締結まで、プロレドの専門コンサルタントが一貫してコスト削減に関わる業務を遂行します。
下記4つのステップでプロジェクトを進行します。

(1)現状把握&条件整理
原状回復工事においては、見積書、図面、賃貸借契約書等の資料を提供いただき、工事範囲を確認するために賃貸借契約書に付随している原状回復規定等を確認します。また、資料から確認が難しい箇所がある場合、関係者へのヒアリングを行い、必要に応じて現地調査を実施します。
(2)分析&査定
提供資料と取得情報を元に、実務経験を有したプロレドの工事専門コンサルタントにて、分析及び査定を行います。査定に活用する指標では、刊行物等の市況相場だけでなく、数多くのプロジェクト経験から蓄積した当社のデータベースを活用し、市況も踏まえた実現性の高い単価情報を元に試算します。
(3)価格協議
施工会社の規模感や管理会社の関与の有無等のあらゆる情報を加味し、適切な協議シナリオを策定し、査定結果をまとめた「査定書」を活用しながら、工事費の適正化を促します。施工会社からの査定回答結果から、工事費の適正化が十分に図られていない場合は、再査定書を作成し、発注期限の到来いっぱいまで追加協議を支援します。
(4)工事見積の承認&工事発注
価格協議を経て、最終的に施工会社から提出された見積書について、当社にて価格協議の内容と相違がないかを確認します。相違がないことが確認できましたら、クライアント側でも再確認の上、工事発注へと進みます。
プロレド・パートナーズでは、原状回復工事における工事範囲の明確化から費用の適正化、最終的な発注までを一貫して支援します。豊富な実績と独自のデータベースを活用し、クライアントにとって最適なコストと工事内容を実現するためのコンサルティングを提供しております。専門性の高い工事領域においても、第三者としての中立的な立場から透明性のある価格交渉を行い、安心して発注いただける体制を整えております。
コスト削減事例

(1)オフィスのコスト削減事例
【業界】サービス業
【企業規模】120億円以上
【課題感】想定以上の退去費用
参考
近年、働き方改革の進展やオフィス戦略の見直しを背景に、オフィスの移転やフロア縮小、さらにはリモートワークを前提とした空間再設計を行う企業が増加しています。これに伴い、退去やレイアウト変更に起因する原状回復工事の発生頻度も高まっています。原状回復工事自体は事業活動の本質的な価値を生まない費用である一方で、企業の移転やフロア縮小といった環境変化に伴い、発生頻度が高まっていることから不可避なコスト要素となっています。
一方で、原状回復工事が必要となる状況が増える中、工事費全般は継続的に高騰しています。背景には、建設資材価格の上昇、職人不足に伴う人件費の高騰、さらには2024年に施行された時間外労働時間の上限規制(いわゆる「2024年問題」)など、建設業界全体の構造的課題が存在します。その結果、従来と同じ仕様・条件で工事を発注しても、費用が大きく膨らむケースが増えています。
このような状況下で、「契約で決まっているから」と形式的に受け入れるのではなく、契約条項や現地状況を踏まえて、工事範囲や見積単価の妥当性を適切に見極めることが重要です。また、根拠のない交渉や値引き要求は、建設業法等の法令に抵触するリスクもあるため、慎重かつ適切に対応する必要があります。
<建設資材価格の物価指数>

出典:⼀般財団法⼈ 建設物価調査会
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プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。