損益計算書(P/L)とは、企業の一定期間における収益と費用を示し、企業がどれだけの利益を出したのか、あるいは損失が発生したのかという経営成績を明らかにする財務諸表です。企業の経営成績を把握するうえでは欠かせない書類といえます。損益計算書を正しく理解・活用することで、戦略的な企業経営が可能になります。また、経営者や経理財務担当者だけでなく、損益計算書(P/L)を正しく読む知識がビジネスパーソンの基本的な知識としても重要です。
この記事では、損益計算書(P/L)とは何か、貸借対照表(B/S)との違い、損益計算書から読み解く5つの利益と項目・勘定科目一覧、損益計算書を分析するポイントについて解説します。
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損益計算書(P/L)とは

損益計算書(Profit and Loss Statement、略してP/L)とは、企業の一定期間における収益と費用を示し、企業がどれだけの利益を出したのか、あるいは損失が発生したのかという経営成績を明らかにする財務諸表です。
具体的に損益計算書には、「売上高」「売上原価」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」などの項目が記載されます。
通常、損益計算書は、年間(通期)や四半期などの一定期間ごとに作成されます。損益計算書は、企業の収益力や費用構造を把握するための重要な書類になります。
企業の経営者はもちろん、投資家や金融機関などの外部の関係者も損益計算書を参考にします。
貸借対照表(B/S)との違い

損益計算書と並ぶ重要な財務諸表に、「貸借対照表(B/S)」があります。
貸借対照表(Balance Sheet、略してB/S)とは、企業の一定時点における財政状態を示す重要な書類です。貸借対照表上には、特定の時点(例えば決算日時点)の、企業の「資産」「負債」「純資産」が一覧で示されるため、それぞれの構成を確認できるほか、企業がどのような資産をどういった方法で得て、それらをどう運用しているかが明らかになります。
貸借対照表は、左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債と純資産が記載される様式になっており、両者の合計は常に一致します。これを「貸借が一致する」といいます。
常に貸借が一致する性質から、「貸借対照表」「Balance Sheet(バランスシート)」という名称がつけられています。貸借対照表は損益計算書と同様、企業が作成し自社の状況を把握するほか、投資家や金融機関など外部に企業状況を示す手段になっています。
貸借対照表について、詳しくは次の記事も参考にしてください。
「貸借対照表(B/S)とは?見方や分析方法について詳しく解説」
損益計算書と貸借対照表は、重要な財務諸表であり、企業内外で必要とされる書類である点では共通していますが、異なる目的を持つものです。簡単にまとめるとそれぞれ以下のようになります。
- 損益計算書:一定期間の収益と費用を記載し、企業がどれだけの利益を上げたかを示します。期間を通じた経営成績を評価するために使用されます。
- 貸借対照表:特定の時点における企業の資産、負債、純資産を示します。企業の財政状態を把握するために利用され、資産と負債のバランスを確認することができます
損益計算書から読み解く5つの利益

損益計算書には、企業の経営成績を評価するための、次の5つの利益が示されています。
- 売上総利益(粗利)
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益(純利益)
それぞれ詳しく解説します。
売上総利益(粗利)
売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いて算出される利益のことです。粗利とも呼ばれます。
これは、企業が商品やサービスを販売することによって得た利益から、商品の製造などにかかる費用を引いた初歩的な利益指標であり、企業の基本的な収益力を示すものです。
計算式は以下のとおりです。
売上総利益=売上高−売上原価
営業利益
営業利益とは、売上総利益から販売費および一般管理費(販管費)を差し引いた利益のことです。
販管費とは、販売業務や管理業務など企業が事業を行ううえで発生する売上原価以外の費用のことです。
売上総利益からこれらを差し引くことで、企業が本業でどの程度の利益を出せるかという収益力を測ることができます。
計算式は以下のとおりです。
営業利益=売上総利益−販管費
経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益のことです。企業の活動に含まれるのは必ずしも本業の事業だけではなく、投資活動や金融活動など、そのほかの活動から利益や損失が発生することがあります。
例えば、利息収入や為替差益といった本業以外の活動から損益が出る場合があるため、経常利益でこれらを反映した数字を導きます。
計算式は以下のとおりです。
経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
税引前当期純利益
税引前当期純利益は、経常利益に特別利益や特別損失を加味した後の利益であり、法人税等を支払う前の利益のことです。
税引前当期純利益は、ここまでに解説したすべての損益要因に加え、突発的な利益や損失も含めた数値といえます。
計算式は以下のとおりです。
税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
当期純利益(純利益)
当期純利益は、税引前当期純利益から法人税等を差し引いた利益のことです。
これは、企業が最終的に得る利益であり、株主への配当や内部留保に充てられる重要な利益指標です。
計算式は以下のとおりです。
当期純利益=税引前当期純利益−法人税等
損益計算書の項目・勘定科目一覧
損益計算書には、企業の収益構造や費用構造を明確にするための複数の勘定科目が記載されています。
以下が主な項目とその概要です。
- 売上高
商品やサービスの販売など、主たる営業活動で得た収益 - 売上原価
商品の仕入れや製造にかかるコストなど、売上を得るためにかかった直接的な費用 - 販売費及び一般管理費
人件費、広告費、事務所の賃料など、営業活動に必要な売上原価以外のさまざまな費用 - 営業外収益
利息収入など、本業以外から得られる収益 - 営業外費用
借入金の利息や為替差損など、本業以外で発生する費用 - 特別利益
固定資産の売却益など、一時的もしくは突発的に発生する利益 - 特別損失
固定資産の除却損、災害による損失など、一時的もしくは突発的に発生する損失
これらの項目がどのようになっているか把握することが、企業の利益構造の分析に不可欠です。
次で、損益計算書を分析する具体的なポイントを解説します。
損益計算書の分析方法

損益計算書を活用して損益管理を行うためには、利益率や比率を使って相対的に分析することが重要です。
ここでは、次の代表的な3つの指標を紹介します。
- 売上高総利益率(粗利率)
- 売上高営業利益比率
- 売上高経常利益率
売上高総利益率(粗利率)
売上高総利益率は、売上総利益を売上高で割った比率のことで、企業の収益性を示す指標です。粗利率とも呼ばれます。一般的に、この指標が高いほど企業は効率的に利益を上げていること判断されます。
計算式は以下のとおりです。
売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
売上高総利益率から、自社の本業における収益性を判断することで、商品の価格設定や原価の見直しにつなげることもできます。
売上高営業利益比率
売上高営業利益比率は、営業利益を売上高で割った比率のことで、企業の本業の収益性を示す指標です。一般的に、この指標が高いほど企業は本業での利益を効率的に上げていると判断されます。
計算式は以下のとおりです。
売上高営業利益比率=営業利益÷売上高×100
売上高営業利益比率には、売上原価以外に販管費が反映されているため、売上高営業利益比率が低い場合は販管費に無駄がないか見直すことも有効です。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、経常利益を売上高で割った比率のことで、企業全体の収益性を示す指標です。一般的に、この指標が高いほど、企業は本業・本業以外の活動全体から効率的に利益を上げていることを示します。
計算式は以下のとおりです。
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
売上高経常利益率が低い場合、先に解説した売上高総利益率や売上高営業利益比率を活用し、何が収益低下の要因となっているか確認しましょう。
自社の利益構造のおおまかな課題が見えたら、損益計算書などでより詳細な情報を確認するとよいでしょう。
まとめ
収益、費用、利益の関係を示す損益計算書は、企業の経営成績を把握するための重要な財務諸表です。企業が経営の健全性を確認し事業を継続するために不可欠であるほか、資家や金融機関など、外部のステークホルダーも重視するものです。各利益の理解や損益計算書の項目、それらをもとにした分析手法を知ることで、企業の経営状態をより深く理解することが可能になります。
損益計算書をはじめとした財務諸表の見方・活用法は、ビジネスの広い場で活かされるため、これを習得することはビジネスパーソンにとって大きな武器にもなるでしょう。
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