環境

カーボンニュートラルのために企業は何ができるの?取り組みの事例6選

カーボンニュートラルのために企業ができる取り組みは数多くあります。以前の記事で「カーボンニュートラルとは」について解説しましたが、具体的にどのような行動をしたらいいのか、分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、企業が実施しているカーボンニュートラルの具体的な事例を解説します。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは何か改めて説明します。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることです。

カーボンニュートラルが推進される理由の一つに「パリ協定」があります。2015年に合意されたパリ協定の長期目標は、以下のように取り決められました。

  • 産業革命前からの平均気温の上昇を2℃より十分下方に保持。1.5℃に抑える努力を追求。
  • 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成する。

出典:環境省「パリ協定の概要より

このように、パリ協定では温室効果ガスの排出と吸収のバランスを達成すると合意されました。パリ協定は、150か国以上が批准している世界規模の取り組みです。

さらに、日本では2020年10月に菅元首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」をしています。2050年までと期限を区切り、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするとした宣言は、国際的に高い評価を得ました。

これらの理由により、日本では地方自治体や企業を巻き込み、カーボンニュートラルが推し進められています。

カーボンニュートラルについて更に詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

カーボンニュートラルへのメリット

カーボンニュートラルを目指すには、設備投資や研究費用など莫大な費用が発生します。しかし、カーボンニュートラルには発生する費用以上のメリットがあります。

持続可能な社会を実現できる(環境面でのメリット)

温室効果ガスの排出は、地球温暖化の原因となっており、以下のような影響が発生しています。

  • 海面上昇による沿岸地域の水没
  • 水資源不足と農業生産の減少
  • 熱中症や感染症による死亡率の増加
  • 洪水、氾濫による水害
  • 生態系、生物多様性への影響

このように、温室効果ガスによる環境破壊が続くと、通常の経済活動を維持するのが難しくなり莫大な損失が発生します。また、経済活動だけでなく、私たちの日常の生活が脅かされる事態にもなるでしょう。

カーボンニュートラルを達成して温暖化を止めることで、地球環境を守り持続可能な社会を作れるというメリットがあります。

投融資が集まりやすくなる(経済面でのメリット)

カーボンニュートラルを始めとしてSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいる企業には、投融資が集まりやすくなっています。投融資が集まりやすい理由は、金融業界では「ESG投資」の概念が常識となっているからです。

これまでは、投資家が企業を評価する際は、財務状況や将来性などで投資の可否を判断してきました。ESG投資は財務面に加えて、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)も考慮して投資をすることです。

2006年に当時のアナン国連事務総長により、投資家にESGを考慮した投資行動を求めるPRI(投資責任原則)が提唱されました。PRIには世界各国の機関投資家が署名しています。

日本でも2015年に世界最大級の資産規模を誇る「年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)」が署名したことを受け、企業のESG投資への対応が急速に進んでいます。

カーボンニュートラルに対する企業の取り組み事例

続いては、カーボンニュートラルがどのようなものなのかイメージしやすいように、具体的な取り組み事例を紹介します。

鉄鋼業でのカーボンニュートラルへの取り組み事例

鉄鋼業は産業分野の中でも、温室効果ガス排出量が多い業界です。そのため業界全体でカーボンニュートラルへの取り組みを強化しています。具体的には、以下の3つの取り組みを推進します。

①    エコプロセス
鉄鋼業では、1970年代のオイルショックにおける原油価格の高騰に対応するために、製造工程の効率化に取り組み、約20%の省エネを達成しました。製造工程を効率化する流れは現在でも続いています。具体的には、省エネ設備の導入や廃プラスチックのリサイクル、二酸化炭素の排出量を大幅に削減するフェロコークスの導入などが挙げられます。

②    エコソリューション
これまでに蓄積した鉄鋼業のソリューションは、海外からも大きな評価を得ています。その結果、日本の鉄鋼業はノウハウなどを中国・インド・ASEANなどに移転することで、地球規模でのCO2削減に協力しています。

③    エコプロダクト
鉄鋼業界が作り出す製品は、自動車・建設・造船など多くの業界で使用されています。各業界と連携して優れた製品を生み出せれば、使用する鉄鋼の量を削減可能です。

これまでにも、電気自動車のモーター用に高効率な鉄板を開発し、燃費向上・高出力・小型軽量化に成功しています。また、特殊なボイラー用として、水蒸気酸化や高湿腐食に強い鋼管を開発し、発電効率を向上させてきました。

鉄鋼業ではカーボンニュートラルの考えが普及する以前から、環境対策に取り組み成果を上げてきました。温室効果ガスの排出量が多い業界なので、今後も大幅な削減が期待されています。

アパレル業でのカーボンニュートラルの取り組み事例

アパレル業はカーボンニュートラルと関係が薄いと思われるかもしれません。しかし、アパレル業の独自の商習慣は、環境に大きな負荷を与えています。

例えば、売れ残った服の廃棄問題です。日本では年間で29億着が生産され、そのうちの半分以上である15億着が焼却または埋め立て処分されています。

これほど大量に廃棄が起こる原因は、シーズンを過ぎた服は極端に売れなくなるためです。売れ残った服を倉庫に保管していると管理費がかかるため、早々に廃棄してしまいます。また、格安で販売すると「あのショップはいつもセールをしている。」と認識され、ブランドが傷ついてしまうという理由もあります。

この現状を変えるためにアパレル業では、いくつかの取り組みを行っています。例えば、二次業者による再販もその一つです。

ブランドは売れ残った服を二次業者へ格安で販売します。二次業者はブランド名が書かれたタグを取り換えて、ブランド価値が傷つかないように再販します。これにより、ブランド側はブランド名を傷つけずに服を処分でき、二次業者は高品質な服を安価に仕入れられるメリットがあります。

また、着用しなくなった服を回収して、発展途上国で再利用や、リサイクルなどの活動も盛んです。

食品業でのカーボンニュートラルの取り組み事例

食品関連業界では、食べられなかった食品を廃棄する「食品ロス」が問題になっています。国連食糧機関(FAO)の調査によると、食品ロスにより年間約4.4ギガトンの温室効果ガスが排出されています。4.4ギガトンは国に見立てると、中国・アメリカに次いで第3位に入る量です。

出典:FAO「Food wastage footprint& Climate Change

SDGsでは、2030年までに世界全体の一人当たりの食料廃棄を半減させる、という目標が設定されています。

この目標を達成するために食品メーカーでは、食品の梱包を工夫して消費期限を延ばす・小分け商品の充実・AIによる販売量の予測など、多くの施策を実行しています。

食品ロス削減には、賞味期限の早い食品から購入する「てまえどり運動」など、身近に実行できることもあるので、一般家庭でも意識して食品ロスに取り組むといいでしょう。

運送業でのカーボンニュートラルの取り組み事例

運送業では、車両製造時や荷物を運ぶとき、廃車をするときなど、それぞれの段階でCO2が発生しています。しかし、運送業は荷物を運ぶことで収入を得ているので、車を止めることはできません。そこで、以下の3つの取り組みを積極的に実践することで、環境対策を行っています。

①    「はこぶ」でCO2削減
環境性能に優れたトラックの導入や無駄に燃料を消費しないエコドライブの実践、輸送効率化の推進など

②    「事務所」でCO2削減
事務所や倉庫での節電やWeb会議を活用しての出張回数の低減、植林事業など

③    「みんな」で環境対策
ごみの削減・資源リサイクルの推進・騒音対策など

これらの3つの対策で最重要なのは、「はこぶ」でCO2削減です。トラックなどの車両を常に走行させている運送業は、車両から排出される温室効果ガスの量は日本全体の2割になります。この大きな排出量を削減しないことには、運送業のカーボンニュートラルは効果が上がりません。

そこで、運送業全体として、環境性能に優れた次世代トラックの開発や導入支援をしています。

金融業でのカーボンニュートラルの取り組み事例

一般社団法人全国銀行協会は、2021年12月に「カーボンニュートラルの実現に向けた全銀協イニシアティブ」を発表しました。この発表の中で、全銀協は以下のような取り組みをすると宣言しています。

①    産業界との提携
産業界と一体になってカーボンニュートラルを実現するために、対話を重ねてお互いの意思を統一する。

②    政府・関係省庁への提言
金融の立場からカーボンニュートラル実現に向けて、政府や関係省庁へ提言を行う。

③    国際的な議論への参画
カーボンニュートラルの国際ルール形成へ積極的な参画をして、スムーズな移行ができるように貢献する。

この発表をもとに、各銀行はカーボンニュートラルに向けて独自の活動を行っています。例えば、SDGsを考慮している企業向けに利率が低い融資を提供する・取引先企業へカーボンニュートラルに関する情報提供をする、などがあります。

銀行業自体は、それほど温室効果ガスを排出していないため、縁の下の力持ちとなり各産業のカーボンニュートラルを支援しています。

電力業でのカーボンニュートラルの取り組み事例

日本は電力の大半を「火力」と「原子力」に頼ってきました。しかし、東日本大震災により福島第一原発が事故を起こしたことから、原子力発電所の多くが運転を停止しています。そのため、燃料を燃やして温室効果ガスを大量に排出する火力発電に依存しているのが現状です。

電力業では2050年にカーボンニュートラルを実現するために、再生可能エネルギー(再エネ)による発電を増やしています。再エネとは、太陽光・風力・地熱・バイオマスなど、温室効果ガスを排出しないで、永続的に使用できるエネルギーのことです。

また、火力発電は安定した電力を供給するためには欠かせないので、温室効果ガスの排出量を抑えるために、排出されたCO2を回収・貯蓄するための技術(CCS)を研究開発しています。

出典:資源エネルギー庁「知っておきたいエネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てるCCUS

まとめ

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出と吸収を均衡させて、実質的な排出量をゼロにする取り組みです。カーボンニュートラルには研究開発や設備投資など多額の費用が発生しますが、企業の社会的責任や資金調達のためなどにより、取り組むべき課題となっています。

また、カーボンニュートラルへの取り組みは大企業だけに課せられたものではありません。金融業がカーボンニュートラルを強く推進していることから、中小企業であっても環境を無視する経営者は、資金調達が厳しくなるでしょう。

今回紹介したようにカーボンニュートラルの取り組みは数多くあります。自社ではどのようなことができるか検討してみてください。

プロレド・パートナーズでは、各企業に合わせた最適な対策をご提案できます。何から始めていいのか分からないなど困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。

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