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デマンドレスポンスとは?種類や仕組み、メリットを簡単に解説

デマンドレスポンス(Demand Response)とは、電力の需給バランスをとるために、供給側でなく需要側が調整を行うことです。日本語訳では「需要応答」と呼ばれ、「DR」と略されることもあります。デマンドレスポンスは、環境対応としても、昨今の電気代高騰への対策としても重要なテーマです。

今回は、デマンドレスポンスの種類や仕組み、メリットをわかりやすく解説していきます。

デマンドレスポンスとは

デマンドレスポンスとは、電力の需要側が供給状況に合わせて消費パターンを変え、効率的に電力を利用する仕組みです。

前提として、電力の安定供給には、発電量と消費量が常に一致している必要があります。電力会社は電力需給の変動に合わせて発電量を変え、需給バランスを一定にしています。

しかし、近年、夏期や厳冬期の需要増加や発送電の突発的なトラブルなどにより、供給側の調整力を超えて、需給バランスをとることが難しい局面も出てきました。

例えば、猛暑が続いた2022年6月27日~30日には、東京エリアで「需給ひっ迫注意報」が発令されました。同12月には、冬としては7年ぶりに政府による節電要請が実施されたことも、記憶に新しいところです。

また、カーボンニュートラルの実現に向けて導入が加速している再生可能エネルギーは、外部環境による発電量の変動が大きく、需給コントロールの調整が難しいです。そのため、需要側の対策であるデマンドレスポンスの重要性が高まっています。

なお、デマンドレスポンスは、需要を減らす「下げDR」と需要を増やす「上げDR」がありますが、今回は「下げDR」に重点を置いて説明をしていきます。

デマンドレスポンスの種類

デマンドレスポンスは、需要のコントロールの方法によって「電気料金型デマンドレスポンス」と「インセンティブ型デマンドレスポンス」の2つに区分されます。

日本では、電気料金型よりも、インセンティブ型の取り組みが主流となっています。

以下、それぞれを詳細に見ていきましょう。

電気料金型デマンドレスポンス

需要ピーク時の電気料金を値上げすることで、電気需要の抑制を促す仕組みです。

実施が比較的簡便であり、企業などの大口需要家だけでなく、各家庭を含む大多数に適用が可能です。一方で、効果が需要家の反応に左右されるというデメリットがあります。

インセンティブ型デマンドレスポンス

電力会社との間であらかじめピーク時などの節電する契約を結んだ上で、電力会社の依頼に応じて節電した場合に対価を得る仕組みです。特にインセンティブ型の下げDRを「ネガワット取引」と呼びます。

契約により確実な効果が得られる一方で、大多数に適用するのは難しいという課題があります。

デマンドレスポンスの仕組みとは

インセンティブ型デマンドレスポンスは、電力会社と需要家を、アグリゲーター等の事業者が仲立ちする仕組みです。(電力会社がアグリゲーター等を兼務する場合もあります)

アグリゲーター等は、取引の流れをコントロールする司令塔の役割を果たしています。

アグリゲーター等は、電力会社から要請を受け、需要家ごとの状況に合わせて節電を依頼します。また、その結果として様々な需要家から得られた抑制量を束ね、電力会社へ提供します。

アグリゲーター等との契約により、事業者だけでなく一般家庭の需要家もデマンドレスポンスに参加することができ、報酬を得ることも可能です。

出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「VPP・DRの活用」よりネガワット取引のイメージ図

デマンドレスポンスを行うメリット

需要家、特に企業において、デマンドレスポンスに参加するメリットは主に次の通りです。

  • 報酬を得られる
  • 非常用の電源設備を有効活用できる
  • 電気使用の見直しができる
  • 社会貢献ができる
  • 改正省エネ法への対応

こちらも、各メリットを詳細に見ていきましょう。

①報酬を得られる

アグリゲーター等からの依頼に応じて需要を抑制することで、電気料金の低減はもちろん、節電分の報酬を得ることができます。

報酬には、DRの発動有無に関わらず、需要抑制可能な容量に従って支払われるkW報酬と、DR発動によって実際に削減された電力量に従って支払われるkWh報酬があります。

②非常用の電源設備を有効活用できる

非常用電源として導入したものの、普段はあまり稼働していない自家発電装置やコージェネレーションシステム、蓄電池などの設備がある場合、DR発動時の対応に活用できます。

③電気使用の見直しができる

アグリゲーター等との契約の事前に行う協議では、契約電力、電気使用状況、所有設備から、抑制可能なkW、抑制方法、DRの要請がない場合に想定される需要量であるベースライン等を決めます。

このステップでの電気使用の見直しを通じて、使用時間帯の最適化や、省エネなどによる電力使用量の削減の検討などが可能です。

④社会貢献ができる

今、日本の電力ネットワークは、従来の大規模電源を中心とする供給側主導から、小規模発電や需要側設備も大規模電源と共存する分散型へ大きく変化していて、需要家側での需給バランスへの積極的な関与も重要性が増しています。

こうした状況化において、デマンドレスポンスに参加することで、エネルギーの安定供給や、CO2削減などに積極的にかかわることが出来るため、社会的な意義があると言えるでしょう。

⑤改正省エネ法への対応

2023年4月1日施行の改正省エネ法では、主な改正事項の一つとして、デマンドレスポンス活用による電気の需要の最適化に関して取り組むべき事項が盛り込まれます。大規模需要家は、定期報告において新たにデマンドレスポンスを実施した回数の記載を求められています。

参考:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律の施行のための省令・告示が本日公布されました(経済産業省 2023/3/31ニュースリリース)

まとめ

デマンドレスポンスは、電力需給に需要側が積極的に関与し、最適な電力利用を実現する取り組みです。カーボンニュートラル実現のキーファクターであり、改正省エネ法においても重視されています。

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