SCM/物流

物流費のコスト削減 “共同配送(輸送)について”

”共同配送”という単語について、物流問題に悩まされる企業様は一度は聞いたことがあると思います。しかし、実際にどのように行われているのか、そもそも本当に活用されているのかがわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では共同配送とはそもそも何か、また業界毎の共同配送の事例を説明します。

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配送費の割安さを追求するなら、ぜひ“共同配送”の検討を

共同配送とは、その名の通り、複数企業の荷物をまとめて、共通の納品先へ配送することで輸送コストを削減しようという考え方です。物流効率化の観点から、20年以上前から使われています。共同配送にもいくつかのパターンがあります。以下が一般的なパターンです。

共同配送の4つのパターン

  • 荷主主導で他企業(異業種含む)の荷物を共同で配送
  • 物流企業主導で他企業(異業種含む)の荷物を共同で配送
  • 荷主主導で同一業界内の企業の荷物を共同で配送
  • 物流企業主導で同一業界内企業の荷物を共同で配送

複数荷主の荷物をまとめて輸送するという意味では、宅配便や路線便と同じではないかという指摘もありそうですが、ここでは切り分けて話を進めていきたいと思います。

実際に共同配送は路線便とチャーター便の間ぐらいの物量を輸送することができますが、エリアは全国対応というよりはエリアを限定し、特定の納品先に限るケースが多くなります。また、貨物追跡も宅配便や路線便ほど、きめ細やかには行われていません。一方で最大のメリットは路線便や宅配便よりは割安に輸送できるという部分です。荷姿も初めから明らかですし、配送業者も専門業者や固定化されることが多いため、品質も安定する傾向が強くなります。

共同配送は以前、物流の合理化案として注目をされたのですが、宅配便や路線便を初め、物流費全体が割安になったため、積極的に実施する荷主はあまりいませんでした。一方で物流会社は、複数荷主の中で同一納品先がある場合、それをまとめて配送をすること自体は当たり前の様に実施していました。荷主との契約は宅配便や路線便単価で契約を結んでいますが、自社内で荷物をまとめ、より安価な輸送方法を使用することで経費を抑制し、利益を増やすという手法です。多くの物流会社は自助努力としてこの利益増を享受しますが、中にはその一部を荷主に還元する企業もいます。

しかしながら、ここ数年は宅配便や路線便が大幅な値上げを行っており、その対策として共同配送は改めて注目されています。更には昨今の急激な環境問題意識への高まりです。CO2削減をメインとした温暖化対策が各企業の経営課題となっており、その対策の一つとしても、共同配送に脚光があたっています。国土交通省を始めとする政府機関が後押しをしていることもあり、一層の注目を集めそうです。

 

3PLやメーカー系物流子会社が中心の“家電共同配送”

<家電 共同配送事例>

三井倉庫ロジスティクスが、荷主であるシャープと富士通パーソナルズなどの荷物を*¹XD(TC)でまとめ、共同で各家電量販店のセンターへ納品するという試みを熊本エリアで実施していました。

この様に3PLなどの物流企業が複数のメーカーの荷物を同一納品先へ納品するという共同配送は、家電業界では一般的に行われています。元々、家電メーカーの物流子会社であった日立物流、SBS東芝ロジスティクス、日通NPロジスティクスなどは現在も家電共同配送サービスを展開しています。

また、日立物流や日通NPロジスティクスについては、量販店センターへの納品だけではなく、成り立ち上、いわゆる「まちの電気屋さん」にも配送を実施している点も特徴的です。こちらは、個口配送に近いため、家電に限らず、他業界の荷物を混載しているケースもあります。

一方で、家電業界の場合、メーカー同士が量販店センターへの納品を共同で行ったり、在庫を同床化するといった試みは大規模では行われていません。これは、そもそも家電メーカーの工場や物流センター同士が近隣になく、また、お互いの企業情報をあまり知られたくないといった意識もあると思われます。

図1:3PL主導の共同配送モデル

3PL主導の共同配送モデル

 

キリン&アサヒが積極的に共同配送に取り組むビール/清涼飲料業界

飲料

 

<飲料業界 共同配送事例>

熾烈なシェア争いが行われているビール業界については、北海道での鉄道コンテナを使用した共同配送(輸送)や関西及び中国エリアから九州エリアへ鉄道コンテナを使用した共同配送(輸送)が大手4社間で行われています。

キリンビールとアサヒビールについては、日本通運とJR貨物との共同で北陸向けの共同配送(輸送)を行っています。清涼飲料水でもキリンビバレッジとアサヒ飲料が、東北エリア及び北海道エリア向けで船舶を使用した共同輸送を実施しています。ビールと清涼飲料水業界の物流における特徴は季節波動が大きいことです。各社とも繁忙期の車両不足には頭を悩ましています。

一方で閑散期は特に地方で荷物がまとまらず、中途半端な物量になってしまうという別の悩みも抱えています。これらの共通の課題を共同で輸送することで、補完しようという狙いが見えます。また、商品の形状も各社同様のため、物流会社側から見てもトラックだけではなく、鉄道コンテナや船舶などでも輸送しやすい荷物です。ビールや飲料業界では物流業者だけではなく、メーカー自体が積極的に共同配送に取り組んでいることが特徴的です。

 

最も共同配送のプレイヤーが乱立する食品業界

 

<食品業界 共同配送事例>

食品の世界は古くから卸や物流会社を中心に共同配送が行われてきた業界です。温度帯やカテゴリによって活躍している物流業者が異なります。また、全国をカバーするような大手企業からエリアを限定して配送を行う地場企業までプレイヤーも実に様々です。

ここ最近で話題になったのが、味の素、ハウス食品グループ、カゴメ、日清フーズ、日清オイリオグループの5社の出資により設立された物流会社であるF-LINEです。それぞれ個別で行っていた物流を統合し、配送のみではなく、在庫も含めて物流全体を共同化した例です。温度帯も*²3温度帯に対応しており、拠点数も個別で運営していた時よりも多くなり、きめ細やかになっています。

実際、5社の納品先である卸のセンターや量販店のセンターはほぼ同一ですので、配送上の効率はかなり向上したはずです。また、この5社の場合、それぞれの会社が単独で大量の商品を納品するというよりは一定数のアイテムを少量ずつ納品するという形ですので、共同で配送することで荷物が纏まり、結果として1社あたりの配送コストは低減されていると思われます。

菓子業界については地場の物流会社を中心とした共同配送網が整備されています。菓子は商品特性上、軽くてかさばるものが多く、商品価格に対して物流費の比率が高くなるという傾向があります。従ってできるだけ1個口あたりの配送コストを下げたいというニーズが生まれます。幸い容積が大きくても軽量ですので、トラックの中に積めるだけ積んで1個口あたりの単価を下げるという考え方が基本となります。大手では丸紅ロジスティクスなどが菓子の共同配送サービスを行っており、中堅ではライフサポート・エガワやダイセーロジスティクスなどが有名です。


<菓子の配送単価低減の基本的な考え方>
例:30,000円/台のトラックを使用する場合(ケースのサイズはほぼ同一という前提)
○菓子ではない荷物を配送する場合(250ケースまで積載可能)
 30,000円÷250ケース=120円/ケース
○菓子を配送する場合(300ケースまで積載可能)
30,000円÷300ケース=100円/ケース
菓子の方が軽いため、積載可能数が多くなり、ケースあたりの単価が割安になる


チルド・冷凍業界もその特殊性から活躍している企業はある程度特定されます。チルド・冷凍については温度帯を保つためのインフラが必要となるため、メーカー系の物流企業(もしくはメーカー自体)が大手企業として名を連ねます。ニチレイロジグループ(ロジスティクス・ネットワーク、NKトランス)、紀分フレッシュ、キユーソー流通システム、マルハニチロ物流、東洋水産などが該当します。3PL系では名糖運輸(元々は名古屋精糖と共同乳業の物流子会社)、ヒューテックノオリン、SBSフレック(旧雪印物流)、商社系では伊藤忠ロジスティクスなどです。

我が国の場合、鮮魚を中心としたコールドチェーンが発達しているため、港を中心としたチルド・冷凍業者も多く存在し、地域毎に有力な物流業者が存在します。

食品業界全体に言えることですが、纏った量についてはチャーターを使用し、少量の場合は共同配送を使用するという形が一般的です。少量の個口配送については宅配便を下回る金額設定が基本となっています。共同配送については全国規模の業者が少ないことから、他社との協力体制を構築している共同配送業者を使用するか、各配送エリアに拠点(デポ)を設け、それぞれ地場の共同配送業者を使用するなどの方法がとられています。

商品単価がとりわけ安い食品業界については、物流費の削減額がそのまま自社の利益に直結するため、各社が熱心に配送コストの削減に取り組んでいます。一方で、配送コストは安価ながらも、安定した物量があることもあり、食品業界は共同配送業者が最も多い業界となっています。

 

メーカー主導で共同配送が進んでいる自動車部品業界

<自動車部品業界 共同配送事例>

日本の基幹産業の一つである自動車産業ですが、自動車部品の業界でも共同配送が行われています。まず、メーカー主導で行われている例としてはトヨタ、スバル、ダイハツで行われている事例です。

トヨタグループのトヨタモビリティパーツが整備部品を全国の各拠点で保管を行い、配送車両を共同化しようというものです。この取組みは上記のトヨタ連合3社以外に他社の参加も呼びかけています。また、いすゞとUDトラックスも補修部品の共同化を行っており、日産と三菱も同様に行っています。この様に現時点では同一グループ内での共同化が主体ですので、トヨタが提案している他社との連携が今後進むかどうかは注目すべき点かと思います。

メーカー主導の共同配送とは別に物流業者による共同配送も他の業界と同様に存在しています。自動車メーカー由来の物流会社である日本梱包運輸倉庫やホンダロジスティクス(ホンダ系)、バンテック(旧日産系、現日立物流グループ)は勿論ですが、地方の共同配送業者も多数活躍しています。

地方の共同配送業者は、メーカーの工場近隣に本拠地を構え、従来から工場内に出入りし、納品方法等も熟知した業者です。トヨタの本拠地である、愛知県のカリツーや愛知陸運などはその一例です。自動車部品の共同配送も宅配便や路線便より安価であり、工場独特の納品ルールに対応していることから、利用しているメーカーが多くなっています。むしろ直接納品するのが色々と面倒なので、積極的に共同配送業者へ依頼をするメーカーがいるぐらいです。

今まで日本経済を支えてきた自動車産業ですが、若年層の自動車離れや販売価格の高額化により、このままでは国内販売量と生産量は減少していくと考えられます。また、EV化が進んでいくと部品も減少すると言われており、自動車部品業界の国内物量は縮小の一途です。従ってメーカー系ディーラー間の部品輸送などは共同化が進んでいくと思われます。

 

医薬品専業の共同配送業者が幅をきかせる医薬品業界

 

<医薬品業界 共同配送事例>

コロナショックの影響でワクチンを中心とした医薬品の輸送には大きな注目が集まりました。当初はバイクで輸送する案もありましたが、衝撃を嫌い、厳格な温度管理を求められるワクチンの輸送には適合しませんでした。

正直、適正な梱包をされた状態であれば、トラックや軽自動車での輸送とバイクでの輸送に品質の差がどれくらいあるのかは微妙だと思いますが、この様に医薬品の輸送には科学的なエビデンスとは別に「安全」「高品質」という条件が常につきまといます。医薬品の輸送で特徴的なのは「温度管理」と「破損の程度」です。「温度管理」は皆さんもすぐにイメージできると思いますが、「破損の程度」とは何か、少し説明をしていきます。

通常、医薬品以外の荷物では外装箱に若干の破損があっても、中身に異常がなければ全損扱いになることは一部の商品を除いてありません。そのままの場合もありますし、普通は外装箱のみを新品に交換して対応します。一方で医薬品は外装箱の破損はもっての他、ちょっとしたへこみや汚れでも荷受けを拒否されることがよくあります。これは「外装箱=商品」ということを意味しており、医薬品業界特有の慣習であると言えます。筆者も初めて医薬品を取り扱った際にアパレルや食品と同じ感覚で破損の対応をしていた所、荷主に大変怒られた経験があります。

また、医薬品は高額なものが多く、破損を起こすと多額の賠償が生じます。基本的には物流会社もしくは荷主で保険を付保していますが、中には中小の物流会社が負担できる範疇を遥かに超えるものもあります。更に、紛失や盗難が起きると一大事です。医薬品には毒薬や劇薬など人体に重大な影響を及ぼしたり、犯罪に利用される可能性もある為、セキュリティ面でも特段の注意が必要です。この様に医薬品の輸送には多くの制約条件があります。従ってプレイヤーも他の業界と比較すると限定的です。

医薬品の輸送において共同配送が多く行われているのは、主に二次配送の部分です。具体的にはメーカーの物流センターから卸のセンターまでとなります。卸のセンターへの配送ではチャーターや宅配便、路線便なども使用されていますが、先に述べた特徴から医薬専用便と言われる共同配送便がよく利用されています。こちらは他業界の共同配送便と異なり、コストよりも品質を重視したものです。実際に運賃も宅配便や路線便より割高です。

プレイヤーとしては、PJDネットワーク(中央運輸、旭運輸、博運社、四国運輸)があります。中央運輸は東日本エリアの医薬品配送業者としては元々最大手でしたが、医薬品卸のスズケンの100%子会社となりました。また、その他3社も医薬品輸送では各地域で圧倒的な強さを持っており、この各社に任せておけばひとまず大丈夫という信頼度はあります。また、対抗馬として、東京運搬社(関東)と、もりか運送(関西)がおり、2社は医薬品3PL最大手の三菱倉庫と共同出資し、DPネットワークを設立しています。

卸向けの医薬専用便は概ねこの2つのグループに集約されており、ある意味選択肢がなく、コスト競争力も限定的となっています。また、両グループとも医薬品卸の大手と3PL大手が関係しており、他の卸や3PLにとっても純粋な競争環境が担保されているとは言い難い状況かと思います。

医薬品卸の共同配送化については、最大手のメディパルHDが臨床検査受諾の最大手H.U.グループHDと地域限定で開始し、今後、段階的に全国展開をしていく予定です。また、同じく医薬品卸大手のアルフレッサもヤマトHDと業務提携を開始しました。医薬品卸も自社管理にて病院等の配送業務を実施してきましたが、将来を見据えた配送手段の確保に乗り出しています。今後、配送手段を所有している物流会社等との連携は増えていくものと予想されます。

また、病院への納品では、岡山の倉敷中央病院でエバルス、サンキ、セイエル、ティーエスアルフレッサの卸4社が共同配送を行う取組を行っています。以前は各卸のセンターからそれぞれ納品を行っていましたが、岡山通運の車両がそれぞれ集荷を行い、一括で納品を行う取組みです。納品車両の削減は勿論ですが、病院側の荷受けも負荷が大幅に削減されることになります。この様な取組みは以前から全国各地で議論されておりますが、なかなか実現、定着していないというのが実態です。病院納品は色々と制約条件が多く、非常に難易度が高い配送です。特定の業者やドライバーのみが出入りすることになれば、病院としてはセキュリティや防疫面でもメリットがあります。

大型病院では医薬品のみではなく、おむつなどの日用品や衣料品、雑貨、食品など様々なものが納品されます。病院の*³前センターを設置し、そこに全ての荷物を納品させ、各科毎に仕分けを行った後、集約して院内に納品するといった様な試みも今後は増えていく可能性はあると思います。これを複数の病院で共同化することも可能です。

図2 病院への共同配送イメージ

病院への共同配送イメージ

コロナショックにより医療業界に注目が集まり、参入を宣言する物流業者が急激に増加しました。医薬品にも様々なカテゴリが存在し、管理レベルも様々ですが、この新たな企業の参入が今後市場に対してどの様な影響を及ぼしていくのか、注目です。

 

まとめ

ここまで業界別に動向を見てきましたが、今後も共同配送の試みは拡大していくと思われます。以降予想される状況としては以下の2点です。

  • 宅配便・路線便の運賃は上昇傾向であり、当面、大幅な値下がりはない
  • 国内の消費は緩やかに減少することが予想され、それに比例し、1回あたりの配送平均物量は減少し、細分化していく

同時に共同配送の単価は宅配便や路線便の運賃動向に影響を受けながらも、それをわずかに下回る単価レベルで推移すると予想され、細分化した荷物をできるだけ低コストで運ぶというニーズは一層高まっていくことでしょう。また、Co2削減等の環境問題対応は各企業の経営課題となっているため、共同配送の取組みは体外的なアピールも含めて積極的に推進されていくと思われます。

一方で、ECなどの個人宅配は当面増加傾向にあることから、宅配便のキャパシティも厳しい状況が続くと思われ、路線便も各社の強みを活かし、選択と集中を進めています。この影響から荷物が更に共同配送にシフトをしていくことは十分考えられます。

バブル崩壊後は各荷主がしのぎを削って物流コストの削減を行ってきましたが、行き着く所まで行った結果、ほぼ各社の差はなくなり、逆に物流費の高騰と人材不足が急激に押し寄せてきました。今後、物流費はライバルを含めた他社との共同化を検討することで、できるだけ差をなくし、本業で正々堂々と勝負をするという時代がやってくるかもしれません。「差をつけるための共同配送」から「差をなくすための共同配送」ということです。今後も各業界の動きに注視をしていきたいと思います。

共同配送の利用を含めた配送コストの削減をプロレド・パートナーズでは支援しています。配送コストの上昇にお悩みの方は是非プロレド・パートナーズへご相談ください。

*本コラム内の用語
*¹XD(TC)=在庫を持たない通過型の物流センター、方面や納品先別の仕分けを行う
*²3温度帯=常温(ドライ)、チルド、冷凍(フローズン)
*³前センター=最終的な納品を行う前に検品や納品先別の仕分けなどを行うセンター

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