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A工事、B工事、C工事とは?工事区分や注意点を解説

原状回復工事は3つの工事区分があり、原状回復工事の査定を行う際にはまず始めに工事区分について理解する必要があります。この記事では3つの工事区分についてそれぞれ解説いたします。

目次[非表示]

  1. 1.原状回復工事の工事区分について
    1. 1.1.原状回復工事の工事区分とは
  2. 2.A工事について
    1. 2.1.A工事は貸主側の工事
    2. 2.2.A工事で押さえるべきポイント
  3. 3.B工事について
    1. 3.1.B工事は借主側の工事
    2. 3.2.B工事で押さえるべきポイント
  4. 4.C工事について
    1. 4.1.C工事は借主側の工事
    2. 4.2.C工事で押さえるべきポイント
  5. 5.まとめ

原状回復工事の工事区分について

原状回復工事の工事区分とは

原状回復工事における工事は、工事発注者が貸主か借主か、施工者の選定権を持つのが貸主か借主か、によりA工事、B工事、C工事と区分されます。この工事区分を確認するか否かが、借主が負担する原状回復工事費用に大きく影響します。

図1:A工事、B工事、C工事について


工事発注者

施工者の選定

A工事

貸主(オーナー)

貸主(オーナー)

B工事

借主(テナント)

貸主(オーナー)

C工事

借主(テナント)

借主(テナント)

A工事、B工事、C工事の分け方は対象箇所によって以下のように決定されます。

A工事:建物の躯体部分、共用部に関わる部分に対する工事
B工事:借主要望で建物の設備などに手を加える工事
C工事:借主要望で借りている内部室に手を加える工事

図2:工事対象と、費用負担者

工事区分

工事概要

費用負担

工事会社

A工事
主にオフィスビルの躯体工事や共用部の施設・通路工事、ガスメーターの設備工事等、ビル本体の工事を指します
ビルオーナー

オーナー

指定会社

B工事

オーナーが工事会社を選定し、費用はテナントが負担する工事を指します

主にオフィスや事務所、店舗として使用するにあたって増設・移設した空調設備や照明設備等が対象です

テナント

オーナー

指定会社

C工事

工事会社の選定と費用負担どちらもテナントにある工事を指します

主に専有部分の内装工事や配線工事等が対象です

テナント

テナント
指定会社

※オーナー指定会社の場合有り

解体工事
主にフリースタンディングの場合、更地に戻すための解体工事を指します
店舗オーナー

店舗オーナー

選定会社

A工事:建物の資産価値や、構造等建物の安全性に関わる部分は貸主が責任を負わないといけないため、貸主が施工者を選定する事になり費用負担も貸主になります。
B工事:空調換気、電気照明、防災関連の設備工事など資産価値に影響するため貸主が施工者を選定しますが、借主都合で変更する必要があったものが該当しますので費用負担は借主になります。
C工事:室内専有部の電話・LANなどの通信工事、レイアウト変更などの内装工事や什器の設置など借主権限で変更できるものが該当しますので、費用負担も施工者選定も借主になります。

B工事とC工事の範囲は賃貸借契約の締結により発生するものですので、賃貸借契約が切れるまでに借主が元に戻さないといけない(=原状回復を行う)と考えてください。

入居時に、賃料や敷金といった金額面だけでなく、このA~C工事の範囲を明確にしておく事が、退去時の原状回復工事費用に大きく影響しますので、覚えておいて損はありません。

賃貸借契約書(もしくは貸方基準書等に)仕上げ表などと合わせてA工事、B工事、C工事の工事区分について明確に記載がある場合もありますが、明確に記載されていない契約書が多くあります。

入居時に明確化が出来ていなかったとしても、退去時に貸主側と協議を行い、B工事からA工事になるものが生じれば、費用負担者が借主ではなく貸主になるため工事費用は削減できます。

また、仮に借主負担の工事でもB工事からC工事に変更できるものがあれば、C工事の施工者は借主権限で変更できますので、変更できた分を安価で施工可能な施工者に発注する事で工事費用を削減できる可能性があります。

続いてA工事、B工事、C工事についてさらに詳しく説明いたします。

A工事について

A工事は貸主側の工事

A工事は建物の躯体部分、共用部に関わる部分に対する工事で、施工者選定=貸主で、費用負担=貸主です。

A工事で押さえるべきポイント

外装(屋根or屋上、外壁など)や共用のトイレや階段、エレベーターが該当し、借主の過失で破損した場合などを除き、貸主が一切の責任を負う必要があります。しかし、本来A工事となるべきものが原状回復工事の見積書に記載され、借主に知見が無く特に指摘せずに支払いをしてしまう事例もありますので注意が必要です。逆に、一般的にA工事に含まれる設備も、借主の要望に応じてB工事になるものもあります。屋根、屋上、壁、他のテナントと共用しているトイレ、エレベーター、階段等が借主に請求されている場合は協議対象になります。

B工事について

B工事は借主側の工事

B工事は借主要望で建物の設備などに手を加える工事で、施工者選定=貸主で、費用負担=借主です。

B工事で押さえるべきポイント

B工事の費用負担は借主です。しかし借主が自由に工事を行ってしまうと資産価値が下がってしまう事もありますし、後々、施工上の問題が発覚した際、新築を担当した施工者に問題あったのか?後々の改修や原状回復工事を担当した施工者にあったのか?となる可能性がありますので施工者の決定権は貸主が持ちます。

たとえば借主要望で専有部にパーテーションを設けた場合、消防法の関係でスプリンクラーを移設しないといけなくなった場合や、照明設備を追加しないといけなくなった場合、これらはB工事に該当します。

このB工事、貸主としては施工者から高額な見積を提示されても費用負担を自身がするわけではないので、相見積を取得する必要もなければ金額交渉をする必要もありません。そのため価格競争原理が働きにくくなります。

また、施工者側においても、原状回復工事は工事期間に制限がある事や、費用負担をする借主が施工者選定の決定権を持っていない事を理解していますので、協議に応じる必要なしと考えられてしまう事があります。

施工管理者(施工者の工事担当者)としては、社内基準の利益率を稼ぐ必要があり、工期内に工事を終わらせる必要がありますので、工期が短くなり利益率が下がる協議に応じる事はデメリットですし、再見積作成に手間がかる事や、下請け業者との関係性悪化や下請け業者に手を抜かれて施工品質が落ちる可能性がある事も協議に応じない要因となります。

むしろ協議に応じて工事費の改定を行う事で、一度提示した工事内容の減額は「元々不当に高額な見積書を提示されていた」と借主に捉えられかねないので、施工者として協議に応じる事をためらうのは当然と言えます。

しかし、専門的な知識をもとに素早く正確な見積内容の精査を行った上で適正な協議を行い、施工者が工事費を見直さざるを得ない状況を作る事が出来れば、原状回復工事費用のB工事費用は削減する事が可能なのです。

C工事について

C工事は借主側の工事

C工事は借主要望で建物の設備などに手を加える工事で、施工者選定=借主で、費用負担=借主です。

C工事で押さえるべきポイント

室内の借主専有部の電話・LANなどの通信工事、レイアウト変更などの内装工事や什器の設置がC工事に該当します。入居時や入居中の工事だけでなく、退去時の工事も全てC工事です。

借主の専有部ですので、基本的に業者の指定も工事費用負担も借主になります。そのため、複数の施工会社へ相見積を取る事が可能です。相見積を取る事で相場より高額で発注する可能性が減りますので、C工事の発注先を自社で選定するメリットは大きいと言えます。

しかし、C工事もB工事と合わせてB工事指定業者から見積もりを提示されるケースがあります。なぜならば、施工者は借主の退去日までに原状回復工事を完工させる必要がありますが、借主がC工事を別の施工者に振り分ける事で、B工事指定業者はC工事の施工者と工事範囲や工事日程を調整する必要が生じて面倒だからです。

そのため、B工事とC工事を分ける場合は費用面だけではなく、退去日の工事工程と施工者間の工事範囲を調整する必要があります。

少量の産廃処分のために車両をB工事の施工者とC工事の施工者がそれぞれで手配するよりもC工事で発生する産廃をB工事の施工者にお願いしてしまう方が安くなる場合などがありますので工事範囲の調整は重要です。

コスト面だけではなくスケジュール面についても、一度撤去した養生や足場を再設置する必要が出る等で、B工事とC工事を同じ業者に依頼した方が良い場合もあります。

とは言え、基本的にはC工事は借主が相見積を取る事で工事費の削減が可能です。

まとめ

原状回復工事における工事区分の重要性を記載しましたが、協議により工事区分を変更する事でメリットが出せるか否かは、建物の周辺状況や建物の管理会社が設定する管理基準といった諸条件、そして建物毎に異なる工事内容によります。

原状回復工事費の削減効果に大きく影響しますので専門的な知見を有している方に相談される事をお勧めします。

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見積書の診断は無料で行っておりますので、是非お声がけいただければと思います。

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