有形商材を扱う企業で、一般的に販管費の大部分を占める物流費ですが、その詳しい内訳をご存じでしょうか。
この記事では、物流コストとは何かから始まり、さらにコスト削減の手助けになるアイデアをご紹介します。
SCM/3PL/物流のお悩みを解決したい方へ
プロレド・パートナーズでは、現状把握から施策の立案・実行まで一貫したサポートが可能となります。SCM改善について皆様からのご相談をお待ちしております。
物流コストとは
事業活動におけるモノの移動や保管、及び管理にかかる費用の総称を「物流コスト」と言います。物流コストは、サプライチェーンの領域から以下のように3種類に分類できます。
図1 メーカーから見た物流コストの種類
①調達物流コスト
生産・製造を行うメーカーが、原材料や部品をサプライヤーから調達する際に発生する物流コスト
②販売物流コスト
メーカーの製造した商品が、販売会社や卸売企業などの流通と、小売企業やEコマースなどの販売チャネルを経由して、消費者へ届けられるまでの物流コスト
③静脈物流コスト
消費された後の製品や容器などをリユース・リサイクルするための物流コスト
(①調達物流と➁販売物流を合わせた動脈物流に対して、静脈物流と呼ばれています)
物流コストと聞くと「②販売物流コスト」のみを想像される方もいるのではないでしょうか?実際に、「①調達物流コスト」や「③静脈物流コスト」は取引先が物流費を負担していて、自社の物流費として管理されていないことが多くあります。
物流コストの内訳
次に、物流コストを詳細に把握するための仕訳について説明します。物流の機能を意識して仕訳を行うことにより、物流コスト削減の具体的な検討に役立てることができます。その際のポイントは、上記①~③の領域別で仕訳を行うことです。主な仕訳方として、①~➂それぞれの領域にかかる費用を「A.輸配送費用」「B.保管費用」「C.作業費用」「D.流通加工・包装」「E.管理費用」の5つに分けることができます。
A.輸配送費用
5つの費用の中で最も大きな金額を占めるのが輸配送費用です。顧客への配送費用だけでなく、拠点間の輸送費用も含みます。
また、海外との取引で発生する国際輸送費用も輸配送に含みますが、金額規模が大きければ、国内輸送と国際輸送を分けて管理します。
B.保管費用
在庫を保管するための倉庫費用と倉庫内の設備(ラックなど保管効率を向上させるための設備)を合わせたものです。
C.作業費用
倉庫の入出庫作業や販売のための付帯作業などが作業費用に分類されます。作業の生産性改善を主な目的として導入したマテハン機器も作業費用とします。
D.流通加工・包装費用
流通加工は倉庫内で入出荷時に行う、ラベル貼付やセット組みなどの加工業務を指します。包装とは、物流の途上で品質を維持するために、段ボール等による保護を行うことで、梱包と表現されることもあります。
E.管理費用(情報)
物流管理に関する費用となり、システム費用や管理者の人件費などを指します。
設備やシステムなどの固定費については、保管費用や作業費用へ配分する場合や、管理費用として一元管理する場合など、企業ごとで費用の仕訳方が異なります。大切なのは、自社で仕訳のルールを決めて、同じ管理方法を継続していくことです。
物流コストの現状(上昇を続ける物流コスト)
ご存知の通り、昨今の人件費や燃料費の上昇が主な原因となり、物流コストの高騰が続いています。
今回は、人件費と物流需給の2つの要点について説明いたします。
物流従事希望者の減少による人件費の増加
日本では生産年齢人口が減少を続けており、その中でも特に物流に関する労働は過酷なイメージがあり新たに従事を希望する方が加速度的に減少しています。さらに、働き方改革による労働時間の制限で収入が頭打ちとなり、もともと物流業界で働いていた方の物流離れも話題となっています。このような状況の結果、物流業界が人手不足になり、人件費が高騰しています。
物流需要の増加に対する供給不足
2020年からは新型コロナの影響を受け、物流の需要が増加し供給不足となりました。そのため、物流コストの上昇が加速しています。コロナ禍における人流の減少は、物流に大きな影響を与えています。消費者の購買プロセスにおいて人の動きが減少しモノの動きが増加、つまり店舗へ買いに行く回数が減りEコマースを利用して購買し自宅で受け取る消費者が増加しています。この需給バランスの変化により物流単価が上昇しています。また、販売物流の範囲が、店舗までで終わらず消費者の自宅まで広がり、物流費全体としても増加傾向にあります。
また、輸出や輸入などの国際輸送も、海上コンテナの不足に端を発した海上輸送コストの高騰や、旅客が減少する中で飛行機の運行コストを補うための航空貨物輸送の単価上昇が発生しています。
物流コストの削減アイデア
物流会社にとってのコスト(人件費、燃料費、国際輸送の調達費等)が上昇していますので、物流単価を単純に削減していくことが難しい環境にあります。その状況下でコストを適正化していくポイントは3点あります。
物流単価の評価
他の物流会社との比較や競合企業の物流費との比較を行い、適正水準より高くなっている物流単価を見定めます。適正水準より高い単価が分かれば、市場環境と離れた協議が可能となります。
物流業務の効率化
倉庫内作業の効率化など、物流改善を行うことにより生産性を向上させ、上昇している人件費などの有効活用を目指します。
物流スキームの見直し
輸配送会社の利用方法や委託比率の変更といった実務に近い見直しから、拠点の立地や機能、在庫量の変更のようなサプライチェーンの見直しを実施します。サプライチェーン内の物量をコントロールすることにより、物流費を削減していきます。
これら3つのポイントを実行していくためには、物流コストを可視化して現状把握することが重要となります。しかしながら、自社の物流コスト全てを可視化・管理している企業は多くありません。例えば、「①調達物流コスト」は、サプライヤーの納品コストを含めて商品原価としているケースが多く、販売物流に次ぐ大きなコストでありながら、ブラックボックス化しています。「図2」のように調達コストを分解することで、調達原価に含まれている物流コストのバファーに気付くことができます。通常、サプライヤーは利益を確保するために原価設計時点で余裕のある物流コストを見込んでいます。このバファーが、調達物流のコスト削減対象の一つとなります。
図2 調達原価の内訳イメージ
また、サプライヤーにとっての最適な物流とメーカーにとっての最適な物流にはギャップがあります。サプライヤーから見ると、他の納品先も加味した*¹ルート配送が効率的となる可能性がありますが、一方のメーカー側としては、他のサプライヤーからの調達も同時に行う*²ミルクラン集荷が最適化の候補となります。
このように、自社のサプライチェーン領域にある物流コストを可視化することで、改善余地を見出すことができます。最後に、物流コストの可視化によって、「①調達物流」のコストについて、「3.物流スキームの見直し」のポイントから定性化を実施した事例をご紹介いたします。
物流コストの可視化によるコスト削減事例
具体的な事例として、A社の調達物流コストの削減事例についてご説明します。A社は店舗でのサービス提供を主な売上としておりましたが、サービスに付随した物販も行っていました。サプライヤーが各店舗に対して納品を行っており、取引条件も店舗納品までがサプライヤー負担となっていました。
A社内でサプライチェーン改善の要求が高まったことから、調達物流にメスが入りました。各サプライヤーから各店舗への物流コストを推計したところ、想定より大きな物流コストが確認できました。そこで、各サプライヤーからの調達物流を自社で管理する方針を打ち出しました。サプライヤーへの集荷、自社物流センターでの在庫保管、店舗への納品をA社自らが行うというものです。
図3 改善前後での物流変化
まず、サプライヤーの物流コストと自社で管理した場合の物流コストの比較を行いました。結果は、自社で物流を管理することにより、調達物流のコストが削減できると言う結論に至りました。そこで、A社では、調達物流の自社化プロジェクトを開始し、物流センターを立ち上げました。サプライヤーごとに調達価格の削減パーセンテージを設定し、サプライヤーと交渉を行いました。A社の事例では購買価格の8%程度かかっていた調達物流コストを、6%まで引き下げることができました。加えて、店舗への納品がサプライヤーごとの納品から、自社センター経由と変更され、店舗での荷受検収も大幅に軽減されました。
まとめ
今回、物流コストの削減アイデアとして、物流コストの管理範囲を広げ、可視化を推進するアプローチについて説明いたしました。単価削減だけでなく、物流の方法をサプライチェーンの観点から見直すことを検討してはいかがでしょうか?
弊社では、クライアント様と一緒に物流コストの可視化を推進しており、サプライチェーン全体の物流コスト削減を実現しています。物流コストの可視化には、業界事例や物流会社に関する情報が必要となりますので、弊社のデータベースと知見を活用することにより、成果創出までのリードタイムを短縮することができます。
「物流単価の評価」については無料診断サービスをご提供しておりますので、物流コストの可視化にご興味のある方は、是非お問い合わせ下さい。
*本コラム内の用語
*¹ルート配送=商品の販売者が車両を手配し複数の納品先を1台のトラックにより納品を行うこと
*²ミルクラン=商品の購入者が車両を手配し複数の調達先を1台のトラックにより集荷を行うこと
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