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間接材コストを削減する8つのステップ STEP.5

STEP.4では購買体制の見直しについてご紹介しました。引き続き、間接材コスト削減の実際の手法を説明していきます。

今回は単価を最適化するアプローチについて紹介します。発注/調達単価の最適化には単価引き下げ依頼ではなく適正水準を見極めることが必要です。

STEP.5 発注/調達単価の最適化

企業の調達/発注担当者であれば、常にコストの削減を経営層から要求されます。また年間計画の一部として、部署や個人に対し「費用全体を▲3%~▲5%削減せよ」といったコスト削減の定量目標を課せられます。現状の単価/料率が最適か否かを具体的にどのように判断していけばいいのかを確認していきましょう。

単価の引き下げ依頼ではなく適正水準を見極める

コスト削減のために取引先企業に対して一律に「価格を-5%下げてください」と依頼したところで大半はゼロ回答が返ってくるでしょう。立場の弱いサプライヤーに対して無理やりに値下げを求めることも中長期的に良好な取引関係を継続することは難しくなります。また、相見積もりを取得することはコスト削減の有効な手段ではありますが、価格だけで判断した場合には仕様や品質、運用面で実態が伴わないといったトラブルに発展する可能性があります。ですから単なる「価格たたき」ではなく「単価/料率の適正化」を目指すべきです。

 しかし、現状の支払金額や単価、詳細な仕様を確認し、単価/料率が適正か否かを瞬時に判断することは、専門家であっても困難です。同じような商品やサービスであっても、実際の詳細な仕様や年間の発注量とそのバラツキ度合い、また各種個別対応が発生していることが多く、一概に価格が高い/安いは判断できません。適正な単価や料率を見極めるために、まずは「コストを最小単位にまで分解」することです。価格の根拠となるコスト構造を要素分解していくことで、個々の構成要素別での価格の妥当性がはるかに評価しやすくなります。それでは価格や料率をコスト分解する3つのアプローチを見ていきましょう。

アプローチ①「元請け⇔下請け⇔孫請け」の多重構造の分解

 直接の取引先企業が元請けとなり、現場の作業を下請け企業に再委託している場合です。発注元企業からすると、元請け企業がどこに再委託しているのか、また現場での実作業はどうなっているのか見えづらくなり、個別の価格の妥当性も評価しづらいというデメリットがあります。元請け/下請け/孫請け企業のそれぞれの役割が何であるのかを把握し、各社への発注単価やマージンを最適化しましょう。

事例「施設管理費」のコスト分解アプローチ

●現場あるあるの事例

  • 大手管理会社やグループ内の施設管理会社へ管理業務を丸投げ
  • 委託内容ごとに支払っている管理料が妥当なのかがわからない
  • 管理会社の手数料率や下請けへの発注単価/料金を把握できていない

●何が課題なのか?

  • 市況よりも割高な管理手数料(率)を支払っている可能性がある
  • 下請け企業が価格や品質面で他社よりも劣っている可能性がある

●具体的な解決策

  • 施設管理会社の管理手数料(率)を適正化
  • 大手管理会社から、中堅/地場の管理会社へ変更
  • 委託内容別で下請け企業(清掃や設備保守など)の見直し
  • 管理会社を介さず、下請け企業と直接契約

アプローチ②業務委託先の工程別でのコスト分解

 外部へ業務委託している場合、その工程を個別に分解することでバリューチェーンごとにかかるコストや工数の妥当性を精査します。業務委託先を適正にマネジメントできないと、業務実態やコストの内訳がブラックボックス化し、割高な料金を延々と継続せざるを得ない状況に陥ります。業務委託先を適正にコントロールするためにも、業務委託先の各工程において、作業内容と作業費(単価×工数)を常に把握し、材料やモノの単位までコスト構造を分解していきましょう。

事例「IT関連の業務委託費」のコスト分解アプローチ

●現場あるあるの事例

  • IT関連の業務委託費にかなりの金額を支払っており、毎年増額されている
  • 他社への変更が事実上不可能であるため、委託先企業の言う事を聞かざるえない
  • IT関連の業務委託費の詳細な内容を把握できていない

●何が課題なのか?

  • IT関連の業務委託費の内訳を実績ベースで把握できていない
  • 個人別にどういうスキルの方がどういう業務を行っているかが不明
  • 業務時間に関して、委託先の報告ベースでしか把握していない
  • 社内の情報システム部が主導できておらず、IT委託先企業の言いなり

●具体的な解決策

  • 個人別の月額単価と実際の業務内容が合致しているかを確認(現場視察)
  • 個人別の業務時間は実測ベースで把握できる体制を確立
  • PCのリモート管理ツールなどを活用
  • 現地での業務量実績調査を実施(期間限定)
  • 数年後の委託先変更も見据えて、他の委託先候補企業へ提案/見積もり依頼

アプローチ③材工分離により「コストの最小単位」へ分解

 よく「一式:……円」と記載されている見積もりがあります。最終価格しか提示されない場合、その価格の妥当性を確認するため、費用の内訳を明らかにする必要があります。見積もり依頼時に要件を定義し、複数社から見積もりを取得した後に最終価格だけで比較しても問題なさそうに思えますが、そこに落とし穴が潜んでいます。要件定義や詳細仕様を伝えていたのに各社によって提案内容に差異が発生するといったことはよくある話で、最終価格だけでは見極められません。見積もりの提出フォーマットを指定し透明性の高い見積もりを取得しましょう。

事例「電気設備工事費」のコスト分解アプローチ

●現場あるあるの事例

  • 工事の見積もり、または実行予算書に「工事一式」とまとめた記載しかない
  • 「工事一式」の定義が施工会社各社で微妙に異なる

●何が課題なのか?

  • 工事内容の詳細が不明のため、工事総額が適正なのか不明
  • 各社の見積もりの正確な横比較が困難
  • 施工後に、事前に想定していた内容との差異やトラブルが発覚

●具体的な解決策

  • 工事見積は材工分離などを踏まえて、コスト構成要素の最小単位で取得
  • 個別商品ごとの資材費/材料費:「数量」×「単価」で表記
  • 工事種別の人件費:「人数」×「時間」×「時給単価」で表記
  • 発注側で見積もり記載フォーマットや根拠となる数字の定義を指定

数年に一度は候補となるサプライヤーを徹底的に洗い出す

 相見積もりでより安価な見積もりを得るためには、事前の候補企業のリサーチが欠かせません。候補となりうる可能性がある企業をいったんすべて挙げ切ることから始めます。まずは業界やエリアごとの「業界団体/協会」「業界名鑑/年鑑」「許認可を受けた登録業者一覧」「業界売上/シェアランキング」などの一覧情報を入手するのがおススメです。

昨今はネット上で、「業種名」「エリア」などで探せば一通りの企業を検索できると思いがちですが、地方の地場企業等は意外と自社のHPには手が回ってないことと、SEO対策などWEBからの新規顧客獲得という観点に乏しいため、優良企業であってもなかなかWEB検索では引っかかってきません。また、企業リサーチとして網羅性はないものの、比較的競争力がある、または新規の案件獲得に対して積極的な企業と出会える可能性が高いチャネルが「展示会/セミナー」「仲介/マッチングサイト」「専門誌」です。これらの媒体や営業チャネルでは、「新たな案件を積極的に獲得していきたい」「従来の商品/サービスよりも自社製の方が優れているので知ってもらいたい」といった勢いのある企業や新興系のベンチャーなどが参加しており、単純に安価なだけでなく、生産性自体を高めてくれる革新的な商品/サービスと出会える可能性も広がります。数年に一度は候補となるサプライヤーを徹底的に洗い出しましょう。

新規取引先企業のロングリストは、1,000社近くになることもあります。この場合、効率的に自社が求める有望取引先をスクリーニングして特定する必要があります。できるだけ手間をかけずに各企業の公開情報を元に企業を絞り込みます。

初期スクリーニングにおける企業の絞り込み基準

●事業内容
・今回の依頼内容の事業を実施していない、または本業/専業ではない企業を除外

●企業規模(売上/従業員数)
・取引先企業として企業規模が足りていない企業を除外

●対応可能エリア
・対象とするエリアで事業展開をしていない企業を除外

●その他、今回の取引で最低限必要となる条件
・自社のHPやWEBサイトもない企業は除外
・帝国データバンクの情報で信用度が一定水準に達していない企業は除外

候補となる企業に対して、今回の依頼内容の詳細とターゲット価格を伝え、見積もり依頼の可否を確認します。十分に候補企業を絞り込み、最終的に現状よりもより良い提案/見積もりが可能と思われる企業に対して、正式な見積もりを取得していきましょう実際の見積もりの依頼方法や手順については次回STEP.6でご紹介します。

 また、各社からの見積もりや提案内容は、採用/不採用にかかわらず、現在の市況相場を知る上で貴重な情報源です。見積もりの単価情報、及び、新規サプライヤーの企業情報を整理し、自社組織の調達/購買ノウハウとして蓄積していきます。取引条件や単価データはデータベース化し社内に知見を蓄積していきましょう。

まとめ

今回は発注/調達単価の最適化について3つのアプローチとサプライヤーの選定方法を紹介しました。企業経営にとってコスト削減とは単発・短期的な施策ではなく中長期的な施策です。良いサプライヤーと継続的に取引をするためには「安さ」ではなく「適正」であることが重要です。ぜひ自社のコストを分解して適正価格を把握したうえでコスト削減に取り組んでみてください。

このコラムはプロレド・パートナーズ遠藤昌矢著『コスト削減の最強戦略 企業競争力を高める間接材コストマネジメント』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・要約しています。さらに詳しい内容を知りたい方は是非書籍をご覧ください。成果報酬型コンサルティングサービスにて企業のコスト削減を支援してきた弊社のノウハウを余すことなくご紹介させていただいております。

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