STEP.7では取引先から好条件を引き出すため、実践的な現場での交渉術を紹介していきます。
交渉に臨む際の基本的なスタンスは、「誠意をもって、真剣に相手と向き合う」ことです。ただそれだけでは精神論止まりで、具体的にどうすればよいのかがはっきりしません。このコラムでは具体的な手法についてご紹介します。
STEP.7 WIN-WINを実現する実践交渉テクニック

2026年1月に「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」が施行されました。これにより、適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大され、中小受託取引の公正化と受託側の利益保護が強化されます。今まで以上に気を付けて交渉を行う必要があると考えられ、WIN-WINの関係性を実現する交渉術の重要性が高まっていると言えるでしょう。
交渉とは何か
今回ご紹介する“交渉”とは「信頼関係の構築」+「ベストは取引条件の取得」の両輪を成立させる手段だと考えています。交渉というと「相手に値下げの条件をどう了承させるか」と考えがちですが、交渉相手となる取引先企業は中長期的に付き合って行く事業パートナーでもあるため、信頼関係の構築が欠かせないのです。取引先との信頼関係は交渉のみで構築されるわけではありませんが、交渉の失敗により長年培ってきた信頼関係を一瞬で失うリスクがあります。
■信頼関係を構築するメリット
- 取引先から有益なビジネス情報を積極的に提供してもらえる
- 水準以上のサービスやスケジュール面で柔軟な対応を受け入れてもらえる
- 緊急時の対応やイレギュラーな要望に対して、他社より優遇されやすくなる
交渉に必要な基本スタンスは「誠意をもって真剣に相手に向き合う事」です。具体的な5つの心構えをご紹介します。
5つの心構え
- 交渉相手の立場に立って交渉を行う
✓自分が相手の立場ならば、どうすれば嬉しいか、どうすればそっぽを向きたくなるか、常に相手の気持ちに配慮する
- 常に交渉目的へ立ち返る
✓「プライド」「価値観の押し付け」「論破することへのこだわり」等余分な考えにより、交渉目的を見失わない
- 時間を常に意識する
✓タイムリーに連絡する、回答時期を区切る、相手のスケジュールを把握するなど、交渉するうえで時間は重要な要素である
- 交渉相手との「暗黙の共通ルール」を意識する
✓論理的な伝え方をする、一貫性を持たせた条件や方針を取る、責任感のあるルールや取り決めを常に意識する
- あきらめない。固定観念をもたない
✓どのような交渉や交渉相手であっても、最善を尽くし、絶対に出来ないと思わず、大企業相手であっても臆さない。固定観念を捨てあきらめずに交渉に挑めば、必ずベストな取引条件を引き出すことが出来る
交渉スタンスにおいて重要なポイントは、相手の立場にあった場合、どこの何について、どういう話し方にすれば、「確かにその点は見直すべきだ」と合理的に納得させられるかです。そのためにも、まずは相手の立場を十分に理解する必要があります。相手の企業はどういう事業を展開しており、個別のクライアントと対峙する時に何を気にしているか?
また、直接の交渉相手が営業担当なのか、拠点長なのか、役員クラスなのか、によっても本人が社内でどこまで裁量権があり、どういう評価体系の中でビジネスと向き合っているのかも重要です。また、交渉相手が誰であっても、基本的には論理的で一貫性のある正論を主軸にして交渉すべきです。単に「値下げをお願いします」では、相手としても前向きに検討する理由が一切ありません。事前の情報収集と分析を徹底し、「誰がどう見ても、確かにその観点では合理的に見直すべき」という正論を展開していきます。
最後に取引先相手に必要以上に遠慮しない、下手に回らないことです。特に、物流の3PLや管理業務のBPOのような業務委託先企業に対して、頭の上がらないという企業が多くみられます。定常業務を全任していることに加え、過去のトラブル対応や、臨時対応を何度もお願いしている背景から、どうしても遠慮がちになるようです。現状を打破すべく取引先との交渉を成功させたいなら、今までの前提条件や固定観念に囚われず、対等な関係のビジネスパートナーとして毅然とした態度で交渉に臨みましょう。
交渉の成否は事前の準備で決まる
交渉の成否は事前の準備で決まると言っても過言ではありません。交渉の全体の流れとしては、1.事前準備と情報分析、2.交渉シナリオの策定、3.交渉と条件協議、4.契約締結の4つの段階があります。一般的にサプライヤーに要望がある場合いきなり3.交渉と条件協議から始まる場合がほとんどではないでしょうか。何の準備や分析もなくいきなり交渉に入っては自社が望む条件を引き出し、交渉を優位に運ぶことは不可能です。

交渉の準備を始める際に、まず必要となる資料やデータを収集します。現状把握のために必要となる最低限の情報に加えて、交渉をより優位に進めるために入手すべき情報も確認していきます。
事前に収集すべき情報
●必ず収集すべき情報
- 契約書/覚書
- 詳細な仕様書
- 取引に関する過去12か月の実績データ
- 過去の交渉経緯(前任者へのヒアリングなど)
●交渉を優位に運ぶための追加情報
- 競合他社からの見積もり
- 市況の単価相場と今後の傾向
- 取引相手企業の情報
- 取引相手にとってメリットがありそうな条件
- 自社が譲歩可能な条件
交渉上、必要となる資料/データを集めたら、次に交渉を優位に進めることが出来る情報/条件を洗い出します。単純に「今より値下げしてください」と取引先にお願いしても、取引先企業からすれば応じるメリットが無いため、通常はゼロ回答となってしまいます。しかし、「取引金額の拡大」や「仕様の簡素化」「長期契約の締結」といったメリット要素を同時に提示すると、相手側から見ても「値下げ」を受け入れるメリットが出てきます。この“交渉カード”をできる限り多く手元に準備しておくことで交渉をより優位に進めることが出来ます。
まとめ
今回はSTEP.7交渉のテクニックをご紹介しました。交渉力は、正しく理解し十分な準備をすれば、誰でも身に付けることができ、その効果を発揮できます。交渉力については様々なテクニックやアプローチ方法の書かれた書籍がありますので、読んでみてはいかがでしょうか。
このコラムはプロレド・パートナーズ遠藤昌矢著『コスト削減の最強戦略 企業競争力を高める間接材コストマネジメント』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・要約しています。さらに詳しい内容を知りたい方は是非書籍をご覧ください。成果報酬型コンサルティングサービスにて企業のコスト削減を支援してきた弊社のノウハウを余すことなくご紹介させていただいております。