2015年9月国連で採択されたSDGsは企業経営にとっても取り組まなくてはならない必須の目標となりました。ご存じの通りコスト削減も企業経営にとって必須の取り組みです。このコスト削減の取り組みもSDGsの目標達成へ貢献すると考えることができます。
本コラムではSDGsの概要とSDGsに関連し目標達成に貢献できるコスト削減についてご紹介します。ぜひ参考にコスト削減とSDGsの両面で取り組んでください。
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SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月にニューヨークの国連本部で行われた国連サミットで採択された、国連加盟193カ国が達成を目指す2016年~2030年までの国際目標です。SDGsでは17の目標(ゴール)と、それを達成するための169のターゲット(具体目標)を掲げています。
現在、世界では貧困や不平等、気候変動や環境劣化、人種やジェンダーに起因する差別など様々な問題・課題に直面しています。こうした地球規模での問題を解決するために定められたのがSDGsです。
17の目標
SDGsを達成するための17の目標は以下の通りです。
- 目標1 貧困をなくそう:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
- 目標2 飢餓をゼロに:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
- 目標3 すべての人に健康と福祉を:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- 目標4 質の高い教育をみんなに:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- 目標5 ジェンダー平等を実現しよう:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- 目標6 安全な水とトイレを世界中に:すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
- 目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに:手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- 目標8 働きがいも経済成長も:すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する
- 目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう:レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
- 目標10 人や国の不平等をなくそう:国内および国家間の不平等を是正する
- 目標11 住み続けられるまちづくりを:都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
- 目標12 つくる責任つかう責任:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 目標13 気候変動に具体的な対策を:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 目標14 海の豊かさを守ろう:海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 目標15 陸の豊かさも守ろう:森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 目標16 平和と公正をすべての人に:公正、平和かつ包摂的な社会を推進する
- 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう:持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する
出典:https://japansdgs.net/
この17の目標は相互に関連し、地球規模で抱えている課題を解決するための世界共通の目標として定められました。このそれぞれの目標にはより具体的な169のターゲットが定められています。各目標のターゲットを見ることで、その目標の目指しているものがより明確になります。
SDGs自体には法的な拘束力や罰則はありません。各国に対して当事者意識を持って目標の達成を期待されています。日本政府も2030年までに各目標・ターゲットの達成に向けて取り組む体制を整えています。
SDGsとコスト削減の関連性

コスト削減は企業経営に重要な施策の一つです。無駄なコストの削減は利益率を上げ筋肉質な企業体質になるために必須と言えるでしょう。一方で、SDGsへの取り組みは企業のサステナビリティを高め、競争優位性を築くことや、企業の評判を高めブランド価値の向上に大きく貢献します。この2つの施策は実は繋がっており、どちらか片方だけを行うのではなく両方の視点を持って行うことが企業成長により良い影響を与えます。
例えば、目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や、目標13 「気候変動に具体的な対策を」といった目標では、カーボンニュートラル、再生可能エネルギーの利用といった脱炭素社会への取り組みや、照明のLED化や高効率な空調設備への転換などの省エネ技術の導入による電力消費量削減の取り組み、オフィスにおけるペーパーレス化やサプライチェーンの最適化などの取り組みが該当します。こういった取り組みはSDGs達成のためだけではなくコスト削減と同時に行うことが可能です。
SDGsに繋がるコスト削減施策

SDGsの取り組みに繋がるコスト削減の具体的な費目と手法についてご紹介します。既に取り組んでいるものでも、SDGsと紐づけることでさらなる効果を生み出すこともあります。コスト削減に取り組む際にもSDGsの視点を忘れないようにすることが大切です。
電気
電気料金の削減を行うことでCO2の削減に貢献することができます。照明のLED化や高効率な空調設備への転換など、省エネ技術の導入は、電力消費量削減に直結し、大幅なコスト削減を実現します。設備投資費用は発生するものの、長期的な視点で見れば、エネルギーコストの大幅な削減が可能となります。
また、カーボンニュートラルによる電気料金の削減が注目されています。カーボンニュートラルとは、企業活動によって排出される温室効果ガスの量を、森林などによる吸収や、再生可能エネルギーの利用などで相殺し、実質的にゼロにすることを指します。多くの企業が2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しており、再生可能エネルギーへの切り替えや、省エネ設備の導入などに積極的に取り組んでいます。これらの取り組みは、エネルギーコストの削減にもつながり、長期的な視点で見ると、大きな削減効果が期待できます。
他にもAIを搭載したエネルギー管理システムを導入することで、工場のエネルギー消費量を削減するといった手法もあります。これにより、年間数億円のコスト削減を実現すると同時に、CO2排出量削減にも貢献できるのです。
複合機
どの企業でも紙の節約(ペーパーレス)を進めているかと思いますが、これも立派なSDGsの取り組みと言えます。ペーパーレス化はどんな企業規模でも成果を可視化しやすく、SDGsへの取り組みをアピールしやすい取り組みです。目標8「働きがいも経済成長も」、目標15「陸の豊かさも守ろう」などが該当すると考えられます。不必要な紙の使用を減らすことで、循環型社会の実現や森林の伐採を減らすことでSDGsに貢献できます。
プロレド・パートナーズ社内でも、2019年秋よりESG経営推進の一環として、更なるペーパーレス化及び複合機の利用見直しを始めました。特任改善チームを立ち上げ、部門横断的に全ての印刷物の必要性評価や社員PCの印刷基本設定の変更、及び部門ごとの状況に応じた印刷ルールの最適化に取り組みました。その後、部署別と個人別の両方の観点から毎月利用状況をモニタリングし、改善活動の定着を徹底しています。結果として、取り組み前と比較し、印刷物を3分の2の水準まで削減しています。
廃棄物処理
食品を取り扱う小売業の企業では食品ロスという課題を抱えています。食品ロスをなくすことは目標12「つくる責任 つかう責任」に大きく貢献します。現在日本では年間646万トンもの食品ロスがあると言われており、その量は国連世界食糧計画(WFP)が1年で世界中にしている食品援助量の2倍にもなります。うち事業系廃棄物は357万トンといわれ、コンビニやスーパーマーケットの大きな課題となっています。
例えば、廃棄物計量システムを使用して委託量を精緻に計測し、売上と排出量に大きな差がある店舗を対象に排出量の基準値を設けることで基準値を超える店舗に対して削減施策を行い、廃棄物排出量の適正化を進めます。無駄な発注が減ることでコストの削減も達成し食品ロス問題の解決にも繋がります。
廃棄物発生量の削減は、廃棄物処理費用削減に直結します。製造工程の見直しや、リサイクル可能な素材への転換などにより、廃棄物削減を進めることができます。また、リサイクルプログラムの導入により、資源の有効活用とコスト削減を同時に実現できます。
物流
物流に関連する取り組みもSDGsに深く結びついています。環境保護や労働問題など、SDGsの多くの目標は物流業界の日常業務と直結しており、これらの目標に対する取り組みは業界全体の持続可能性を高めることに繋がり、同時に物流の最適化がコスト削減に繋がります。
環境負荷の低い原材料や製品を積極的に調達するグリーン調達は、サプライチェーン全体での環境負荷軽減に貢献します。また、輸送ルートの見直しや、共同配送などのサプライチェーンの最適化により、輸送コスト削減とCO2排出量削減を同時に実現することができます。輸送ルートや配車の最適化によるトラックから排出される二酸化炭素の削減 水素自動車の導入 船舶や鉄道を活用するモーダルシフトの実践 複数事業者による共同配送など出来ることはたくさんあります。
また現在の物流業界で直面する課題として長時間労働や人手不足があります。これらの課題解決はSDGs目標8「働きがいも経済成長も」の達成にもつながると考えられます。ツールやシステム導入による効率化と生産性の向上、シニア世代の再雇用、多様な働き方の実現による安定的な雇用の創出、賃金アップ、長時間労働の是正などが該当するでしょう。サプライチェーン全体で改善することが持続可能な物流の構築につながり無駄なコストの削減も達成できます。
物流に関連するSDGsの取り組みついては以下で詳細に解説しています。
まとめ
本記事では、SDGsを活用したコスト削減戦略について、具体的な方法や事例を交えて解説しました。企業は、自社の事業内容や特性を踏まえ、積極的にSDGsを経営に取り入れていくことが求められ、SDGsを活用したコスト削減は、企業の持続的成長と社会貢献を両立させるために重要です。コスト削減に取り組む際には、ぜひSDGsの視点を持って取り組んでください。
プロレド・パートナーズは間接材のコスト削減を得意とする経営コンサルティングファームです。費目ごとの専門家を置き、実際に成果の創出まで支援いたします。コスト削減について課題を感じている・自社のリソースが足りない等の際はぜひお気軽にご相談ください。
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