SCM/物流

ESGとは?SDGsとの違いと課題や取り組みを詳しく解説

ESGとSDGsはどちらも現代社会における持続可能な物流に必要な対策です。しかし、物流業界においては、これらの違いやそれぞれの重要性がまだ広く理解されていないというのが現状です。

本コラムでは、ESGとSDGsの定義やそれらの違いに加え、物流業界におけるESGの取り組みや課題を詳しく解説します。

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ESG物流とは?

ESGとは、「環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)」の頭文字を取った略語で、環境や社会に関する課題解決を目的に企業が行う取り組みを指します。物流業界やサプライチェーンにおいて、ESGを意識した取り組みがESG物流です。

ESG物流の概要や具体的な取り組み、企業ができることについては以下の記事で詳しく解説しています。

ESGとSDGsとの違いとは

ESGと同じく、環境や社会への課題解決を目的とした企業の取り組みにSDGsがあります。ESGとSDGsの違いとともに、それぞれの物流業界での意義について解説します。

ESGとSDGsとの違い

SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、国連が設定した17の目標と169の具体的な小目標を包含するもので、気候変動、健康と福祉、技術革新など、地球規模の課題に対応するための国際的な取り組みです。これらの目標は、全ての国が連携して達成を目指すもので、先進国だけでなく途上国の課題にも焦点を当てています。

一方で、ESG(Environmental, Social, and Governance、環境・社会・企業統治)は、企業の持続可能性を評価する重要な指標として、特に投資の分野で注目されています。ESGは、企業がどのように環境保護、社会貢献、適切なガバナンスを行っているかを示し、これにより投資家は企業の長期的なリスクと機会を評価することが可能です。最近では、企業が業績報告の一環としてESG情報も開示することが一般的になりつつあります。

ESGとSDGsは、それぞれが持続可能性へのアプローチを異なる角度から提供しています。SDGsがグローバルな規模で社会的な問題や環境問題に取り組むフレームワークを提供する一方で、ESGは企業レベルでの持続可能な経営と投資の判断基準を提供します。具体的には、ESGの「E」と「S」はSDGsの目標達成に貢献する手段とも見なされており、企業が自らのビジネス戦略を通じて社会的課題へ積極的に取り組むことで、SDGsの目標達成を支援する役割を担っています。

ESG(環境・社会・ガバナンス)の概要と物流業界での意義

物流業界は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の各側面からの影響を大きく受けています。具体的には、輸送時の二酸化炭素排出、廃材の増加、ドライバーの長時間勤務などがあり、これらはすべて業界全体の持続可能性に対するリスクを増大させます。この問題に対応するため、荷主企業と物流企業は、ESGの基準に則った、持続可能な物流の実現を目指すことが求められています。

SDGs(持続可能な開発目標)の概要と物流業界への影響

一方で、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)は、物流業界に新たなチャレンジと機会を提供しています。環境保護や労働問題など、SDGsの多くの目標は物流業界の日常業務と直結しており、これらの目標に対する取り組みは業界全体の持続可能性を高めることに繋がります。物流企業と荷主企業は目標を達成するために、具体的な戦略を策定し実行することが求められています。

物流業界におけるESGとSDGsの取り組み

物流業界において、すでにESGの取り組みやSDGsを活用する企業もあります。物流業界が直面しているESG関連の課題とSDGsへの取り組み、さらにESGとSDGsの違いを活かした事例について解説します。

物流業界が直面するESG関連の課題とSDGsへの取り組み

物流業界で直面するESG関連の課題には、二酸化炭素(CO2)排出量の増加、廃材増加による環境破壊(E環境)、ドライバーの長時間労働や人手不足(S社会)、不透明な経営状況や不祥事の発生(Gガバナンス)があります。サプライチェーン全体でESG関連の課題に取り組み、改善することが持続可能な物流の構築につながるでしょう。

物流業界に関連するSDGsの目標と、達成のための取り組みについては、以下のものがあります。

SDGs目標具体的な取り組み
SDGs目標7
「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
輸送、運搬時のクリーンなエネルギーへの転換 輸送の効率化によるトラックから出る排ガスの削減
SDGs目標8
「働きがいも経済成長も」
ツールやシステム導入による効率化と生産性の向上 シニア世代の再雇用、多様な働き方の実現による安定的な雇用の創出と人手不足解消 賃金アップ、長時間労働の是正などドライバーをはじめとした流通関連業種の待遇改善と、ホワイト物流への転換
SDGs目標9
「産業と技術革新の基盤をつくろう」
産業社会や国民生活、地方創生の社会インフラである流通の技術革新
SDGs目標12
「つくる責任 つかう責任」
大型倉庫での太陽光発電パネルの設置など再生可能エネルギーの活用 LED照明の導入など省エネルギーでの運用導入 梱包資材の削減 在庫システムの拡充による廃棄ロスの削減
SDGs目標13
「気候変動に具体的な対策を」
輸送ルートや配車の最適化によるトラックから排出される二酸化炭素の削減 水素自動車の導入 船舶や鉄道を活用するモーダルシフトの実践 複数事業者による共同配送

ESGの取り組みとして行われている代表的な施策には、「グリーンロジスティクス(グリーン物流)」があります。グリーンロジスティクスとは、地球環境への負担を減らすことを目的とした、物流における各施策のことです。おもな施策としては、エコドライブ推進やモーダルシフト推進による二酸化炭素排出量の削減、グリーンエネルギー自動車(低公害車)導入、ミルクラン集荷や共同配送による使用車両の削減などがあります。

グリーンロジスティクスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

また、ESGのG(ガバメント)領域の取り組みはSDGsの目標には含まれていません。ESGでは、ステークホルダーへの利益の最大化や不祥事の防止のための、透明性と公平性の高い経営も求められます。物流業界におけるESGでは、経営状況や役員報酬の開示、組織運用の管理や管理体制の構築、ESG関連リスクへの対応とコンプライアンス、といった取り組みが行われています。

物流の未来:持続可能性を中心とした革新

物流は国民生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラでありながら、トラックドライバーの担い手不足の深刻化、2024 年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制等の適用(2024年問題)、カーボンニュートラルへの対応等などの課題に直面しています。近年では新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻の影響により、エネルギー費の高騰なども発生し、このままでは正常な物流の機能が停止し、国民生活や経済活動に必要な物資が運べなくなる危機的状況にあると言えます。

持続可能な物流の実現のためには、物流業界が抱える深刻な課題の解決と、さらなる物流効率化の推進のための改革が必須です。そこで、国土交通省、農林水産省、経済産業省の三省の有識者、関係団体及び関係省庁からなる「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を設置するなど、国をあげて物流の持続可能な取り組みが推進されています。

ESGとSDGsのシナジーを活かした物流業界の持続可能性戦略

物流業界では、環境保護、社会的責任、適切なガバナンスを行っているかを重視するESGの取り組みがますます重要になっています。同時に、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)にも積極的に対応することが求められており、これら二つの枠組みを統合することで、物流業界の持続可能性への取り組みがより効果的になることが期待されます。

物流業界でのESGとSDGsの統合は、単に環境や社会に対する貢献を超え、企業価値の向上にも寄与します。

例えば、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に対応するため、物流プロセスにおける二酸化炭素排出量の削減に取り組むことは、ESGの環境領域(Environmental)の強化にもつながります。具体的な施策としては、水素自動車の導入や共同配送の導入などが挙げられます。

企業は自社の事業活動と直接関連するSDGsの目標を特定し、それに基づいてESGの取り組みを計画的に実施することが重要です。このプロセスでは、目標達成に向けた具体的な行動計画を策定し、定期的な評価を行うことで、進捗状況を把握し継続的に改善を図ります。

持続可能な物流の未来への展望

物流業界においてESGとSDGsへの取り組みは、企業の社会的責任を果たすとともに、ビジネスの持続可能性を確保するための重要な戦略です。これらの取り組みを通じて、物流業界は環境保護、社会的公正、経済的繁栄のバランスを取りながら発展を続けることができます。

まとめ

SDGsとESGの違いとともに、物流業界におけるSGDsやESGの取り組み、統合する方法などについて解説しました。社会的インフラとしての役割を担っている物流は危機的状況にあり、持続可能性が危ぶまれています。サプライチェーンの企業や事業所それぞれでSDGsやESGへの取り組みを行うことで、物流の持続可能性が実現します。また、企業としての優位性や信頼性の向上といったメリットも得られます。ぜひ今日からSDGsやESGに関する取り組みをはじめてみましょう。

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