SCM/物流

サプライチェーンリスクとは?定義や種類・対策方法まで詳しく解説

サプライチェーンは、製造業や小売業にとってビジネスの根幹を成す要素です。サプライチェーンが混乱すると、企業に多大な損失が生じるため、「サプライチェーンリスク」に備えることが不可欠です。

本コラムでは、サプライチェーンリスクの定義や種類、具体例、そしてその対策方法について解説します。

SCM/3PL/物流のお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、現状把握から施策の立案・実行まで一貫したサポートが可能となります。SCM改善について皆様からのご相談をお待ちしております。

 

サプライチェーンリスクとは

サプライチェーンリスクとは、サプライチェーン内の他の企業の供給が停止してしまうことで、自社の製品・サービスの供給が止まったり、遅延してしまったりするリスクのことです。サプライチェーンは製品の原料調達から生産、配送、販売と消費者の手元に商品やサービスが届くまで供給の連鎖で成り立っています。そのため、ひとつの工程や業務が停止することで、サプライチェーン全体が停止してしまうリスクがあります。自社はもちろん、サプライチェーン内の他の企業や業務にも利益面でも社会的信頼面でも大きな損失が出る可能性が高くなります。

サプライチェーンリスクには自然災害や経済変動をはじめ、近年ではサイバー攻撃も加わり多様化しています。他社だけでなく、自社がサプライチェーンリスクの原因となるかもしれません。多角的なサプライチェーンリスクへの対策に取り組むことが重要です。

サプライチェーンリスクの種類

サプライチェーンリスクは、大きく分けて以下の5つに分類できます。

  • 供給リスク
  • オペレーショナルリスク
  • デマンドリスク
  • 財務リスク
  • 法規制リスク

それぞれのサプライチェーンリスクの種類について解説します。

供給リスク

供給リスクとは、サプライチェーン上のサプライヤーの供給が止まってしまうリスクのことです。たとえば自然災害、気候変動または悪天候、サイバー攻撃、機器故障のトラブルなどにより、サプライヤーからの供給が止まってしまい、サプライチェーンでの後工程で製造に入れない、といった事態に発展してしまうリスクです。

オペレーショナルリスク

オペレーショナルリスクとは、サプライチェーン上での業務で発生するリスクのことです。具体的には製造過程での原料間違い、操作ミスなどのトラブル、労働力不足などが該当します。オペレーショナルリスクにより、製造工程の遅延による納期遅れや後工程での欠品などが発生する可能性があります。

デマンドリスク

デマンドリスクとは、需要の変化によって発生するリスクのことです。具体的には需要やマーケットトレンドの急激な変動によって原料が手に入らない、生産が追い付かないなどで、市場の需要に対応できなくなります。

財務リスク

財務リスクとは、企業の運転資金調達または投資による損失で発生するリスクです。具体的には通貨や金利の変動による損失や、信用供与先の財務状況の悪化の損失による経営破綻などが該当します。

法規制リスク

法規制リスクとは、新しい法規制の施行または改定によって発生するリスクのことです。具体的には、規制要件の変更や貿易や関税の変更などにより原材料調達ができないなどの理由でサプライチェーンが停止してしまうことがあります。

サプライチェーンリスクの具体例

近年発生したサプライチェーンの具体例について解説します。

COVID・19パンデミックによるサプライチェーンの混乱

2020年1月より全世界的に流行した新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、サプライチェーンの混乱を招きました。世界各国で渡航制限が外出制限などを行った結果、生産現場の作業員やトラック運転手など生産や物流活動を担う労働力が不足し、工場の稼働停止、物流の停止といったサプライチェーンの混乱を招きました。

半導体不足による自動車産業への影響

2020年ごろより企業のDX化の推進、電化製品のIoT化の進行や次世代通信システム5Gへの移行などを背景に、半導体の需要が拡大していました。さらに前述の新型コロナウィルスパンデミックやアメリカの半導体輸出規制                 、国内の半導体工場の操業停止などの要因が合わさり、国内外で深刻な半導体不足が発生しました。その結果、多くの半導体が必要な自動車が製造できず、各自動車メーカーの減産に繋がりました。2023年後半には需要も落ち着き、2024年8月現在はおおむね自動車産業の製造稼働率への影響は無くなっています。

天災(地震、台風)によるサプライチェーン寸断の事例

天災によるサプライチェーン寸断の代表例として、2011年3月の東日本大震災があります。地震だけでなく太平洋沿岸部への津波、さらに原子力発電所事故により東北地方をはじめ甚大な被害が出ました。被災地域に拠点のある多くのサプライヤーが事業停止となったことを受けて、サプライチェーンの寸断が引き起きました。その結果、東北地方からの供給不足による一部商品の不足や欠品などにつながりました。

サプライチェーンリスクへの対策

サプライチェーンリスクを防ぐためには、以下のような対策方法を日ごろから行うことが重要です。

  • 多様な供給元の確保
  • 事業継続計画(BCP)の策定
  • 代替供給チェーンの構築
  • サプライチェーンの可視化とトラッキング
  • サプライヤーとの強固なパートナーシップの構築

多様な供給元の確保

サプライチェーン内のひとつの工程に対してサプライヤーが限定的である場合、供給がストップすればサプライチェーン全体が停止するリスクがあります。多様な供給元を確保することで、ひとつのサプライヤーの供給がストップしても供給の連鎖は維持できるでしょう。

事業継続計画(BCP)の策定

災害や非常事態などで事業の継続が難しくなった場合、すみやかな復旧や事業の継続を目的に策定するのが事業継続計画(BCP)です。BCPを策定しておくことで、万が一のときにもサプライチェーン継続のための対応ができます。

代替供給チェーンの構築

リスクを踏まえて代替供給チェーンを構築することも有効です。原材料不足や供給元の事業停止などで供給がストップした場合でも、代替供給チェーンから供給を得てサプライチェーンを持続できます。

サプライチェーンの可視化とトラッキング

サプライチェーンリスクを可視化し、トラッキングすることで急激な需要変動やイレギュラーの発生といったリスク要因をリアルタイムで検知できるようになります。検知したリスクを社内やサプライチェーン内で共有することで、リスクが発生するまえに対応できる体制を構築できます。

サプライヤーとの強固なパートナーシップの構築

サプライヤーと強固なパートナーシップを結んでおくことで、リスク発生時のスピーディかつ円滑な対応につながります。契約締結時に責任の所在や対応方法などの詳細を明示しておくなどしておきましょう。

サプライチェーンリスクの管理ツールと技術

サプライチェーンリスクに対してBCPやサプライヤーとのパートナーシップ締結といった対応だけでなく、常にリスクを監視・管理することでリスク発生の防止や、チェーン全体への拡大の防止につながります。

サプライチェーンリスクの管理には、以下のようなツールや技術の活用が有効です。

  • デジタルツイン
  • AIとビッグデータ解析
  • ブロックチェーン技術
  • IoTデバイス

デジタルツイン

デジタルツインは仮想空間上で現実世界と同じ環境を構築できる技術です。リスクに対するシミュレーションに活用すれば、リスクの低減につながります。

AIとビッグデータ解析

AIと収集したビッグデータを解析することで、リスクの予測とサプライチェーンの最適化につながります。

ブロックチェーン技術

ブロックチェーン技術とは、情報通信ネットワーク上の端末同士を接続、やり取りした情報を暗号化し記録するデータベース技術です。おもに仮想通貨に用いられています。ブロックチェーンをサプライチェーンリスクマネジメントに応用することも可能です。

IoTデバイス

IoTデバイスを活用すれば、リアルタイムでの監視や管理が可能です。万が一現場などで不具合が発生した場合にもすぐに検知できるため、リスク発生前に対応ができます。

まとめ

サプライチェーンリスクの定義や種類、具体例や対策方法を解説しました。サプライチェーンリスクは多様化しており、いつ発生してもおかしくありません。まずは、調達から生産、供給までのBCPを策定しましょう。

自社のリスク棚卸やBCPの立案など、サプライチェーンリスクに関連した取組みを検討されている方は、プロレド・パートナーズにぜひご相談ください。

SCM/3PL/物流のお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、現状把握から施策の立案・実行まで一貫したサポートが可能となります。SCM改善について皆様からのご相談をお待ちしております。

 

関連記事

TOP