環境

FIP制度とは?FIT制度との違いについてメリット等簡単に解説

火力発電は多大なCO2を排出させるため、地球温暖化の要因のひとつであると言われています。世界の脱炭素化を推進するためには、太陽光をはじめとする自然由来の再生可能エネルギー(以下再エネ)の普及が必須です。国内では再エネ促進を目指し、2012年に「FIT(固定価格買取)制度」が制定されました。2022年には再エネ電力をより活用するために「FIP制度」も開始されています。しかし、これらの違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、FIP制度とFIT制度ではどのような違いがあるのか、さらにFIP制度のメリット・デメリットまで具体的に解説します。FIP制度についての知見を得たい方は、ぜひ参考にしてください。

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FIP制度とは

FIP制度のFIPは「Feed-in Premium(フィードインプレミアム)」です。再エネ電力の取引価格を上げるための制度で、欧州ではすでに再エネ電力の普及を促進するための制度として導入されています。再エネ電源を他電源(火力など)と同様に、自立化させるための過程として、市場価格と連動させることが狙いの制度です。

 

FIP制度とFIT制度の違い

地球温暖化による気温上昇や気候変動抑止のため、化石燃料による発電ではなく、発電時にCO2が発生しない再エネへの移行が世界の潮流です。国内でも火力発電から再エネ電力の移行を促進するべく、FIT(固定価格買取)制度が導入されました。FIT制度は再エネによる電力を市場価格と関係なく国が一定の価格で買い取る制度で、これにより再エネ事業は急速に拡大しました。しかし、FIT制度には下記のような課題も存在しています。

FIT制度の課題

電気料金の一部として、再エネ電力普及のための資金を、国民が「再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下再エネ賦課金)」という形で負担しています。再エネ賦課金は2021年度には総額2.7兆円にも及びました。

電力の生産量に関わらず、一定の固定価格で電力が買い取られることで需要と供給のバランスに問題が発生することがあります。電力市場価格と連動し、再エネ電力を自立したエネルギーにする必要が生じています。

このようなFIT制度の課題を解決し、さらに再エネシステムを促すために新たに施行されたのがFIP制度です。FIP制度は、FIT制度のように固定価格で買い取るのではなく、売電価格に、電力市場価格を反映させたプレミアムを上乗せするため、電力需給と連動した発電を促すことが可能です。以下にFIP制度のポイントとなる点を挙げながらFIT制度との違いを解説していきます。

参考:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」

FIP制度のポイント

プレミアム単価(補助額)について

FIP制度のプレミアム価格は「基準価格」「参照価格」から成り立っています。基準価格とは、電力供給のために必要となる設備投資額や、回収できる見込み額などを考慮した価格でFIT制度にも適用されています。基準価格は開始当初はFIT制度と同等にすることが定められており、1年ごとに更新が必要です。参照価格とは、電力市場に連動し月単位で変動する価格で、市場取引からの期待が見込まれる収入です。「卸電力市場の価格に連動した価格+非化石価値取引市場価格に連動した価格-バランシングコスト」により機械的に算出されます。

以上からプレミアム単価は「基準価格-参照価格=プレミアム単価」という算定方法で表され、発電事業者の売電収入は「売電価格+プレミアム価格」になります。ただし、基準価格は1年間固定ですが、参照価格は前述のとおり市場により月単位で変動するため、プレミアム価格も月ごとに変動します。

参考:経済産業省 FIP制度における基準価格とプレミアム
参考:経済産業省 資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」

バランシングとは

FIP制度では、同時同量の観点から、再エネ発電事業者は発電見込みである「計画値」をつくり、実際の「実績値」と一致させることが求められます。これを「バランシング」といいます。

バランシングにあたり、計画値と実績値の差(インバランス)が発生した場合、再エネ発電事業者は、ペナルティとして、その差分を埋めるための費用を支払う必要があります。

バランシングコストについて

前述のように、FIP制度では、「バランシング」の必要があるため(※FIT制度では不要)、再エネ発電事業者のインバランス費用に配慮し、インバランス費用の一部をプレミアム単価に反映させています。

資源エネルギー庁によるとFIP制度では、「経過措置として太陽光・風力発電において2022年度の開始当初は1.0円/kWhを交付し、施行から3年間は、緩やかに0.05円/kWhずつ低減、4年目以降は0.1円/kWhずつ低減させ、 『バランシングコストの目安=FITインバランスリスク料と同額』を目指す」ことになっています。

参考:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」

以下にFIT制度とFIP制度の違いを簡潔に表にしました。

FIT制度とFIP制度比較

  FIP制度 FIT制度
買取価格 市場により変動 固定
売電収入 卸市場を通さず小売電気事業者と相対契約を行えば、FIT買取価格より高額で電できる可能性あり 単価が固定されているため50kW~1000kWでは、10円/kWhで売電が可能(※2022年度事業用太陽光)
インバランス   FITインバランス特例で免責
インセンティブ 蓄電池有効利用で電力市場価格高額時に供給量を増やすインセンティブあり 特になし
非化石価値 取引可能 なし

 

FIP制度のメリット・デメリット

ここでは再エネ発電事業者の観点から、FIP制度のメリットとデメリットがどのようなものかを具体的に解説していきます。

FIP制度のメリット

FIP制度のメリットは、売電価格にプレミアムが付与されることで、再エネ投資へのインセンティブが確保されることです。加えて、市場価格の変動に応じた発電及び売電を行うことで、更なる収益拡大のポテンシャルがあります。例えば、市場価格が高い時に、発電量を増加させて、市場価格が低い時に、発電量を減少させる、あるいは蓄電池を活用して貯めておくなどで、収益性の向上が期待できます。

FIP制度のデメリット

FIP制度のデメリットは、インバランスリスクがあること、売電収入が変動することです。インバランスに関しては、再エネの特性上、天候や自然災害などの現象に左右されやすい為、計画と実績の乖離が発生しやすくなります。また、売電価格が市場価格によって変動するため、長期的な収益予測が立てづらくなります。

 

まとめ

再エネシステム拡大のカギとなるFIP制度について、FIT制度との違いを含めて解説しました。日本は「カーボンニュートラル2050」を宣言しており、今後脱炭素化の流れが加速していくことは間違いありません。法人の皆様は環境価値を高め、次世代に向けて持続可能な社会を構築するためにも、脱炭素に向けた取り組みを積極的に行ってはいかがでしょうか。

プロレド・パートナーズでは、企業の環境経営の取り組みについてコンサルティングを承っております。FIP制度についても何か疑問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

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