物流業界の2024年問題の対策として、注目を集めているのがモーダルシフトです。モーダルシフトは物流業界の輸送能力の不足という課題を解決できるのでしょうか。
本記事では、モーダルシフトの基本を踏まえこれまで進まなかった理由と今後について詳しく解説します。物流業界の2024年問題に興味がある人は、ぜひ記事内容をご確認ください。
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モーダルシフトとは
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている従来の貨物輸送を鉄道や船舶を利用した大量輸送が出来る輸送モードへ変更することをいいます。
2024年問題において、ドライバー不足が大きな課題となりますが、大量輸送ができる輸送モードを利用することにより、必要なドライバーの数を抑えることができます。
また、モーダルシフトはCO2排出量を抑えることができますので、今後必要となるScope3への対応へも役立ちます。
*Scope3については弊社コラムを参照下さい。
モーダルシフトが進まなかった理由
モーダルシフトは以前から物流業界を中心に、そのメリットが認知され広く活用されています。しかし、大きなメリットがある一方で、導入の広がりは限定的なものとなっています。その理由について説明します。
- 短距離輸送だとコストが高くなる
- 輸送のリードタイムが長くなる
- .災害時のリスクが高い
1.短距離輸送だとコストが高くなる
モーダルシフトでは長距離輸送のコストは安くなりますが、逆に短距離輸送のコストは高くなってしまいます。
例えば、鉄道輸送においては、駅から駅の長距離となる幹線輸送は鉄道を利用した大量輸送により安価になります。一方、集荷場所から駅、駅から納品場所へはトラックでの小ロット・近距離輸送となり割高になります。
つまり、長距離の輸送では幹線輸送の割合が増え、コストが抑えられますが、逆に短距離では割安な幹線輸送の割合が減り、割高となります。
費用対効果の分岐点は500-600kmと言われており、この距離は関東から関西の距離に相当します。日本第一、第二の都市間の輸送で効果が確実に出せないことが、モーダルシフトの阻害要因となっていました。
2.輸送のリードタイムが長くなる
輸送リードタイムとは、商品の出荷から納品までに必要とされる時間のことです。鉄道輸送・海上輸送は特性上、輸送にかかる時間的なロスが発生するため、リードタイムが長くなります。
時間的なロスが発生しやすい主な要因は次の通りです。
・集荷、幹線輸送、納品の輸送が切り分けられているため、連携する時間が必要
・幹線輸送のキャパシティを超えると、幹線輸送の便待ちが発生する
3.災害時のリスクが高い
自然災害時の輸送リスクも大きな理由となります。モーダルシフトの弱点は、大雨や雪などの自然災害によって輸送の確実性が低くなることです。
天候による遅延はトラック輸送にも起こりうることですが、モーダルシフトでは影響を及ぼす範囲が大きく異なります。決められた運行ダイヤと、限定的な路線や航路のもとでは、イレギュラー対応は至難の業です。線路が破損してしまうと、全ての線路が修理されるまで輸送の再開ができません。
海上輸送も同様に、津波や台風の高潮などによって海が荒れている間は、身動きが取れなくなってしまいます。一方、トラック輸送は災害時も柔軟な対応ができる点がメリットとなります。
モーダルシフトのメリット
モーダルシフトへの転換はどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
3つのメリットをピックアップしました。
- 長距離輸送の物流コスト削減
- 人手不足の問題を解消
- CO2の排出量の削減
1.長距離輸送の物流コスト削減
トラック輸送は長距離輸送のコストが高くなる傾向にあります。
トラックの運転には、「連続運転は最大4時間」「2日間の平均運転時間は最大9時間」といった運転時間に関する制限があります。長距離の輸送においては、トラックドライバー複数日拘束又は複数ドライバーの対応が必要となり、いずれも人件費の上昇につながります。
また、有料道路などの実費コストも増加します。鉄道輸送・海運輸送の場合は、一度に大量の荷物を長距離で輸送することが可能です。そのため、輸送距離が長くなるほど、荷物一つあたりの輸送コストは安くなります。
2.人手不足の問題を解消
深刻度が高まりつつあるドライバー不足の問題も、モーダルシフトが進めば大きく解消へ向かいます。
鉄道や船舶での貨物輸送のメリットは、少ない人員で多くの荷物を輸送できる点です。輸送の中でもドライバーを長く拘束する幹線輸送が、鉄道や船舶に別の輸送モードに置き換わることでドライバー不足の解消に繋がります。
3.CO2の排出量の削減
トラック輸送から鉄道や船舶輸送へのモーダルシフトにより、CO2の排出量を抑えることができます。
国土交通省の調査によると、1tの貨物を1km運ぶ際にトラックから216gの二酸化炭素が排出されると報告されています。一方、鉄道を使った輸送では、二酸化炭素は20gしか排出されず、船舶を使った場合は43gのみの排出です。
輸送方法をトラックから鉄道や船舶に転換するだけで、80〜90%のCO2排出量削減効果があります。
モーダルシフトが加速する理由
メリットとデメリットがあるモーダルシフトですが、今、改めて見直されています。その背景について、詳細を説明します。
1.2024年問題の引き起こす影響の大きさ
2024年4月から、「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの労働時間が制限されることになります。これにより、1日あたりの平均労働時間は12.46時間となり、特に長距離輸送では翌日中に運べない地域が発生します。
この2024年問題が、ドライバー不足と輸送費の上昇を加速させることは避けられません。その対策として、モーダルシフトが注目されています。これにより、人員不足の解消がより効果的行われ、同時に短距離輸送のコスト増加の影響が最小に抑えられることで、モーダルシフトの有効性が高まる可能性があります。
2.政策パッケージによる商習慣の変化
2024年問題に関して、政府から政策パッケージが発表されました。
*政策パッケージについては弊社コラムをご参照下さい。
モーダルシフトのデメリットの1つとして挙げた輸送リードタイムについて、これまでは買い手である納品先の効率化が優先され、顧客リクエストへの対応が売上確保の必須条件でした。そのため、小ロット多頻度の納品や翌日納品がサービスレベルの基準となり、発荷主企業にとって非効率な物流となっていました。しかし、政策パッケージの主旨の1つである「商習慣の見直し」は、この条件の緩和を求めるものとなります。
そのため、「商習慣の見直し」が加速すれば、発荷主企業の納品について選択肢が広がり、モーダルシフトの拡大が期待できます。
まとめ
モーダルシフトは、輸送量に対しての人件費が安く、長距離輸送になればなるほど低コストの運送を実現できます。一方で、近距離輸送では割高になってしまう、自然災害時の対応で柔軟性にかけるなど、運用上の弱点も見られました。
しかし、2024年問題の影響から、モーダルシフトが今までに増して評価される兆しも見えてきています。2024年問題解決に向けての切り札の1つとして、今後の取り組みが注目されるところです。
プロレド・パートナーズでは、2024年問題への対策など物流の効率化を図る荷主企業様を数多くご支援しています。業務改善やコスト削減を検討している担当者の方は、ぜひプロレド・パートナーズへご相談ください。
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