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マンションの大規模修繕工事とは?概要とコスト削減方法について詳しく解説

マンションは築年数が経つと日射による紫外線や風雨の影響を受けて、少しずつ劣化していきます。建物が健全な状態を長く維持するためには、定期的な修繕工事が必要となります。大規模修繕工事は建物の安心・安全のために欠かせない大切な工事であり、適切なタイミングで行うことが重要です。

この記事ではマンションの大規模修繕工事の概要とコスト削減方法について、ご紹介いたします。

マンションの大規模修繕工事の概要

まずはマンションの大規模修繕工事の概要についてご説明します。マンションの居住性や資産性にも影響する大切な工事ですので正しく理解しましょう。

マンションの大規模修繕工事とは

大規模修繕工事とは、経年劣化による雨漏りや外壁の剥離をなるべく抑え、安心・安全に居住できるようにするための定期的なメンテナンス工事を指します。

大規模修繕工事にかかる費用の大まかな目安としては、1戸あたり100~150万円とも言われています。これはあくまでも目安であり、マンションの規模によっても異なりますが、総額では数千万~億単位になります。いざ工事を実施するときに工事費用を一括で徴収すると区分所有者にとって大きな負担となるため、一般的に、マンションの管理組合が「修繕積立金」として、月ごとに費用を少しずつ徴収して積み立てています。

「修繕工事」と「改修工事」の違い

「修繕工事」と混同しやすい用語として「改修工事」があります。どちらも建物の修理に関係していますが、工事の内容に差があるため、正しく理解することが大切です。しっかりと違いを見ていきましょう。

「修繕工事」とは

問題ある箇所の性能や機能を建築当時の水準まで回復させる工事です。建物には耐用年数があり経年や外的要因で劣化が進んでいきます。建物や設備・部材などに不具合の発生した箇所を、以前と同様に支障なく利用できる状態まで修理します。

「改修工事」とは

建物全体の機能・性能面を向上させ、より住みよいマンションにしていくための工事です。機能の維持や回復だけでなく、建設当時よりも性能・機能をグレードアップすることで、社会や時代によって変化していく居住環境の水準に適応させることを目的としています。

なぜマンションの大規模修繕工事が必要なのか

それではなぜ、マンションの大規模修繕工事が必要なのでしょうか。大きく2つの理由について説明します。

建物の安全性維持

建物の安全性維持は最も重要な理由の1つです。マンションは築年数が経つと様々な部分の老朽化が進みます。建物の老朽化のなかでも最も深刻なのは、コンクリート内部の劣化です。ひび割れや防水層の亀裂などがあると水や空気がコンクリート内部に入り込み、コンクリートを支える鉄筋を腐食させ、建物全体の強度を弱くしてしまいます。

また築年数が経過すると、しっかり接着されていた外壁も下地から浮いたり、ひび割れたりすることがあります。外壁の検査を怠ると剥がれたタイル等が落下し、通行人に危険が及ぶといった事態にもなりかねません。

こうした経年劣化をできるだけ抑え、建物を長く安全に使っていくためには、定期的なメンテナンスが必要です。軽度のうちに発見し修繕工事を行うことで、こうした深刻な劣化を予防できます。

資産価値の維持

大規模修繕工事には資産価値の低下を防ぐ側面もあります。先に挙げたような経年劣化は年数が経つにつれて悪化するため、適切に大規模修繕工事をしてきたマンションとそうでないマンションでは、見た目や快適性に大きな差が出てきます。外観のきれいなマンションとそうでないマンションであれば、誰もがきれいなマンションに住みたいと思うでしょう。

また、故障や不具合だけでなく付属する設備の仕様が古くなると、住まいとしての暮らしやすさが損なわれ、資産価値が下がってしまいます。大規模修繕工事を適切な時期に行うことで、マンションの資産価値の低下を防ぐことができます。

大規模修繕工事の適切な周期・タイミング

十数年おきに行う必要がある「大規模修繕工事」は、大掛かりな計画を伴うため、工事を行う数年前から準備をしておく必要があります。ここでは、大規模修繕工事の一般的な施工頻度や周期についてご説明いたします。しっかりと知識を蓄え今後に備えておきましょう。

大規模修繕工事の周期

大規模修繕工事はおおよそどれくらいの周期で行うものかご存知でしょうか?

マンションの大規模修繕工事は、一般的に12年周期と言われることが多く、国土交通省による『長期修繕計画作成ガイドライン』においても「12年周期」と表記されています。また、建築基準法上「竣工・外壁改修後10年を経てから最初の調査の際に全面打診等による調査を行う」ことが定められています。外壁の落下事故が起きてはいけないため、早めにこれらを実施するマンションが多くなっています。

建物の劣化状態によっては「12年周期」を多少前後させる対応も必要となるため、まずはマンションの状態をしっかりと把握することが重要です。建物の状態に応じた適切な改修計画を立案するために、まずはマンションの劣化状態について正確な診断を行いましょう。大規模修繕工事の2年前程度がマンションの状態を診断する最初の診断適齢期とされています。

大規模修繕工事のタイミング

大規模修繕工事を実施する時期やタイミングに厳密な決まりはありません。実情を見てみると、前回の修繕または竣工当時から10年程度を目安として、大規模修繕の協議を始めることが多いようです。

大規模修繕工事のタイミングについて国土交通省調べ『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査』で見てみると、「大規模修繕工事は工事回数1回目が築15年以下、2回目は築26~30年、3回目は築41年以上で実施されている割合が最も高い」といった統計が記載されています。

ただ、近年は性能が高い材料も普及し始めています。例えば、大規模修繕工事の際に耐久性や防汚効果に優れた製品を用いることで、修繕のタイミングを15年・18年と後ろ延ばしにし、修繕費用を抑える工夫を検討することも増えてきています。

「12年周期」だから工事を行うのではなく、適宜必要な工事内容を見極め検討することが大切です。

大規模修繕工事の内容

大規模修繕工事ではマンションの各部分で工事が行われます。ここでは、それぞれの工事の内容について取り上げます。

仮設工事

大規模修繕工事で最初に行われる工事が「仮設工事」です。仮設工事では作業員のための足場、防音シート、現場事務所など、竣工後には撤去する設備を設置します。

繊細な作業や力仕事をする作業員にとって安定した足場は不可欠です。防音シートには工事の際に発生する騒音の低減や、塗料などを周囲に飛散させない目的があります。

タイル補修工事

タイルが外壁に使われているマンションの場合は、「タイル補修工事」を行う必要があります。

「タイル補修工事」とは、下地から浮いたりひび割れたりしたタイルを補修する工事のことです。全面打診や目視で補修が必要な箇所を特定します。美観だけでなく、安全性の観点からも大切な工事です。

シーリング工事

「シーリング工事」とは、外壁材やタイルのつなぎ目、窓サッシと外壁の隙間などをシーリング材でふさぐ工事のことです。

シーリング材は紫外線の影響を受け、年数とともに硬化しひび割れやすくなるため、雨水が侵入する危険性が高まります。シーリング材を新しくすることで、室内への雨水侵入等を防ぐことができるため、建物の強度維持のためにも必要な工事です

塗装工事

「塗装工事」とは、美観を保つ目的の工事と思われている方も多いかもしれませんが、実は外壁や鉄部といった外装を保護する役割も担っています。外装に紫外線や雨水が直接当たることを防ぎ、劣化を遅らせます。

ただし塗装自体も紫外線等の影響で劣化してしまうので、定期的な塗替えが必要となります。塗装工事には足場の設置が必要ですので、大規模修繕工事の際にまとめて行うことが一般的です。

防水工事

「防水工事」とは、屋上やバルコニーといった外部に面する箇所から建物内部に雨水が侵入することを防ぐための工事です。防水方法はいくつかありますが、いずれも紫外線や雨風で劣化してしまうため、定期的な補修が欠かせない工事です。また、一度雨漏りを起こしてしまうと、雨水の侵入箇所を特定することが困難なため、多額な補修費用が発生する可能性があります。

その他付帯工事

上記以外でも必要となる代表的な工事を以下に記載します。

・玄関扉・サッシ交換
・給水管・排水管の更新
・エントランスの修繕
・エントランス部分の手すりの設置
・段差解消

尚、最近では修繕工事に合わせて段差解消や手すりの設置など、バリアフリーに関係する工事を併せて行うケースも増えています。

大規模修繕にかかる費用

ここまで、マンション大規模修繕工事の概要についてご説明しましたが、この記事をお読みいただいている方が最も気になる項目は「費用」についてではないでしょうか。

ここからは大規模修繕工事費の相場と、コスト削減の可能性についてご紹介します。

大規模修繕工事の費用相場

令和3年に国土交通省がまとめた『マンション大規模修繕工事に関する実態調査』には大規模修繕費用の統計が記載されています。

統計によれば、大規模修繕工事にかかる費用の平均値は以下のとおりです。

大規模修繕工事の回数大規模修繕工事の費用1戸当たりの費用
1回目15,237.4万円151.6万円
2回目11,702.7万円112.4万円
3回目14,758.6万円106.1万円
(※弊社にて平均値部分を抜粋、 共通仮設費は含んでおりません。)

上記は平均値の金額ですので、マンションの規模や設備、劣化状況によって大きく変動します。また、築年数が重なるにつれて時代に合わせたニーズが出てくる可能性もあります。建物にとって節目のタイミングである大規模修繕工事の際に資金が足りないといった事態が起きないよう、資金計画は早いうちからの備えと定期的な見直しが必要です。また、金額に影響する要素は上記以外にもあります。特に高額になる理由を以下に紹介します。

大規模修繕工事が高額になる理由

大規模修繕工事の費用は国交省による実態調査で示されるように、高額な費用が必要となります。以下では大規模修繕工事にかかる費用が高額になる要因を3つ挙げます。

中間マージンの発生

マンションの大規模修繕工事は、管理会社がグループ企業や提携している施工会社に修繕を依頼することが多く、多額の中間マージンが管理会社の取り分として見積金額に上乗せされることがあります。

見積金額の妥当性を確認できていない

「管理組合理事は当番制」「理事は1年で全員交代する」などの背景もあり、多くの管理組合が管理会社に任せきりにしていることがほとんどではないでしょうか。限られた時間のなかで見積金額妥当性の判断や適切な施工会社の選定を行うことは大変難しく、手間もかかります。適切な工事内容や単価を理解していない状態で、施工会社の提案のままに工事を発注してしまうと、コスト高を招く場合があります。

業界特有の傾向を把握できていない

建設業界には特有の傾向が存在します。一例として「工事規模に合った建設会社を選定しないと工事費が割高になる」という傾向があります。建設会社にはそれぞれ得意とする工事規模があり、一般的にスーパーゼネコンなどの大手建設会社は大規模施設、地域に根差した地場の建設会社は小規模~中規模施設の建設が得意とされています。

地場の建設会社が大規模施設を不得意とする理由は、ノウハウがないことによるコスト高が多い一方で、大手建設会社が小規模施設建設に向かない理由は、その収益性が大きく関係しています。大手建設会社では平均年収=人件費の水準が業界全体を上回っているため、一般管理費や現場管理費を含む諸経費率も高くなり、工事費が割高になる傾向があります。

このような傾向を把握していないことで、工事規模に適さない建設会社を選定してしまい、余計なコストがかかる可能性があります。

コスト削減の方法

前述の要因などから高額になるケースが多々あるマンション大規模修繕工事ですが、ここではコスト削減の方法をいくつかご紹介いたします。

管理組合から直接施工会社に発注する

先のセクションでご説明したとおり、管理会社が多額の中間マージンを上乗せしている場合があります。管理組合から直接施工会社へ工事発注することで、中間マージンを無くし、コスト削減を図れる可能性があります。その場合、施工会社との連絡・調整や、工事内容の確認等を管理組合で実施する必要があります。施工会社を選定する際には見積だけでなく会社規模や工事実績を確認することも重要です。

管理組合で相見積を取得する

複数社に見積を依頼することで、競争環境が醸成され価格が市況価格に近くなる、もしくは市況価格より割安になり、コスト削減を図れる可能性が高くなります。また、工事内容を比較することで不要な工事が含まれているかを確認でき、不要な工事が含まれている場合はその工事をやめることでコスト削減が可能です。

コンサルタントに依頼する

コンサルタントは、専門的な知識・業界内の豊富なネットワーク・データベース等を活用し、工事費用のコスト削減を図ります。コンサルタント各社手法は異なりますが、多くの経験と実績から最適なアプローチを模索するため、コスト削減効果は大きくなる傾向にあります。

大規模修繕工事にコンサルタントを活用するメリットと注意点

コンサルタントを活用することで得られるメリットは、コスト削減を図れることだけではありません。ここでは、代表的なメリットをご紹介いたします。

管理組合の負担が減る

大規模修繕工事には多額な費用がかかるうえに、工事内容・費用・時期など適切な判断が求められる重要な場面が多く存在します。大規模修繕工事に対して十分な知識のない管理組合員で計画を進めると、日常生活に影響を及ぼすほどの大きな負担となる場合もあります。

代表的な負担の一部は以下のとおりです。

・複数施工会社の相見積を取得し判断する
・休日も管理組合のために稼働する
・金額以外の条件で施工会社を選定する
・予算や要望に合わせて施工会社と交渉する
・本当に今必要な工事か確認し判断する
・事前に様々な情報収集を行う

コンサルタントは専門的な知識を有するため、十分な知識のない管理組合のサポートをすることでこれらの負担を軽減し、スムーズに計画を進めることができるでしょう。

第三者目線でアドバイスがもらえる

コンサルタントは第三者目線でのアドバイスを行います。前述のとおり、マンションの大規模修繕工事は、管理会社がグループ企業や提携している施工会社に修繕を依頼することが多く、管理会社に相談しても偏った判断をされる危険性があります。

こういったしがらみを持たないコンサルタントは、管理組合の要望を聞き入れながら中立的で偏りのない立場でアドバイスを行います。管理組合はそれらを適切な判断の指標にすることができます。

コストを適正化できる

専門家であるコンサルタントに依頼しコストを適正化すれば、費用を抑えられる可能性があります。十数年に一度大規模修繕工事を経験する管理組合と異なり、コンサルタントは過去の経験から適正価格を判断することや、データベース上の価格との照合を行うことができます。

また、専門的な観点から仕様や数量を見直す、業界に特化した交渉のスペシャリストが交渉を代行する等、コスト削減の可能性を一層高めることが可能です。

コンサルタントを活用する際の注意点

いくつか、メリットをご紹介させていただきましたが、一方でコンサルタントに依頼する際に注意すべき点もあります。それは、コンサルフィー(コンサルタント依頼料)です。

コンサルタントに依頼するメリットばかりに目が行ってしまうと、コスト削減を達成できてもそのほとんどをコンサルフィーの支払いに回さなければいけない、といったことが起こり得ます。

まとめ

大規模修繕工事の概要とコスト削減方法についてご説明しました。

大規模工事は何度も経験するものではないからこそ、事前の準備がとても重要です。しかし、手間や時間がかかる、専門的で勝手がよく分からない、などの部分については、コンサルタントに相談することも選択肢の一つです。コンサルタントに依頼する際には、管理組合の人・知識・時間のリソースを適切に把握し、どの分野を依頼するかをあらかじめ把握しておくことが大切です。コンサルフィーも考慮した上で検討しましょう。

プロレド・パートナーズは「成果報酬型」のため、削減成果以上の高額なコンサルフィーを請求されることはありません。また、工事費目を含む50費目以上に専門のコンサルタントが在籍しており、2000社以上のコスト削減実績を持つ交渉のプロフェッショナル集団です。コスト削減のご提案だけでなく、徹底した現場主義のもと最後までプロジェクトに伴走いたします。マンションの管理組合や修繕委員会で大規模工事を控えた方、検討を始めようという方はぜひお気軽にご相談ください。

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