SCM/物流

物流KPIとは?設定するメリットや導入の際に押さえるべき注意点について解説!

人件費や燃料費の上昇が続く中、多くの企業において、物流費の削減に向けた改善が進められています。その改善の取組みを評価し加速させる方法の1つが物流KPIです。

物流の管理を目的としたKPIを設定していますか?物流KPIを設定するだけで終わることなく、しっかりと活用できていますか?このコラムでは物流KPIとは何か?また、その目的やメリットについて説明します。

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物流KPIとは

KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語にすると「重要な実績業績の評価指標」となります。KPIを活用すれば、目標に対する現状を定量的に可視化することができます。物流だけでなく、営業・財務・生産・人事など事業活動の様々な場面で導入されています。

物流KPIを設定する主な目的は、輸配送や倉庫オペレーションの、コストと品質の維持・向上です。そのため、物流KPIはトラック輸送の効率を測る「積載率」や倉庫内の作業効率を測る「生産性」など、企業にとって重要な物流プロセスに対し設定します。

KPI設定の目的、メリット

物流KPIの設定は、数値の取得や整理に手間がかかる場合もあり、ネガティブな印象を持たれるかもしれません。実際に、自社物流へのKPI設定の難易度が高いと感じる方も少なくないと思います。しかし、KPI設定の難易度が高いということは、それだけその物流が広範囲であったり複雑であったりすると言え、広範囲であればあるほど複雑であればあるほど、KPI導入の効果は大きくなります。具体的には以下のようなメリットが期待できます。

1.課題の可視化

物流業務の各プロセスが適正に実施されているかどうかを定量的に可視化することができます。一般的に倉庫は大型化し、輸配送は多頻度化しているため、管理に必要な情報が多く、管理者が全ての現場で行われているプロセスを、常に確認することが難しくなっています。KPIを設定することで現状把握が容易になり、改善が必要となる課題を可視化させることができます。

2.コミュケーションの品質向上

KPIは物流の現状を定量化して表現できるので、普段は物流から離れた業務を行っている関係者との共通認識が形成し易くなります。共通認識を早めにもてれば、業務改善へ議論が集中でき、コミュニケーションが効率化されます。物流の直接的な従事者だけの改善には限界があるため、近年では営業や生産に従事するメンバーも巻き込んだ改善の必要性が高まっています。そのような場合は特に、物流KPIは有効となってきます。

3.目標の達成と評価

KPIの活用は、物流改善プロジェクトにおいて必須となります。KPI無くして、目標の達成はありません。また、目標に対する達成度を適切に評価し、関係者へフィードバック/評価していくことも重要となります。KPIを用いることにより、客観的で公平な評価を行うことができます。

詳しくはこちらのコラムをご覧ください

倉庫/物流センターの生産性改善プロジェクト(前編) 「ゴール設定」から「プロジェクト体制の立上げ」まで

物流KPIの定義例

上述の通り物流KPIは目標に沿って設定しますので、業務内容や現場の状況により設定項目やその定義が変わります。設定の例として、国土交通省が平成27年に公表した「物流事業者におけるKPI導入の手引き」より、いくつかご紹介します。今回のコラムでは、その手引きに記載された内容について補足説明も記載しています。

1.コスト・生産性に関するKPI

①保管効率(充填率)
保管効率(充填率)=保管間口数÷総間口数

倉庫や物流センターの保管スペースの保管効率を測る指標。

【補足説明】
保管効率向上の考え方は2つあります。1つ目は理論的な保管キャパシティを最大化することです。2つ目に、そのキャパシティに対して充填率をどれだけ高められるかです。


②人時*生産性(庫内作業)
人時生産性(庫内作業)=処理数÷投入人時

ピッキング、仕訳、梱包作業等の生産性を測る指標。人別、ライン別、時間帯別等で計測することが多い。

【補足説明】
倉庫内作業のプロセスごとに設定しますが、プロセスごとの人時データの取得が困難な場合は、いくつかのプロセスをまとめたり(入荷検品と格納を合わせて入荷生産性とするなど)、投入人時数の多いプロセス(ピッキング)に絞ったりするケースもあります。


③積載率
積載率=積載数量÷積載可能数量(重量、容積、容積換算重量)

車両の積載効率を改善するための指標。ルート別、顧客別等に把握し、車格の見直し、配車・ルート見直し、物流条件の見直し等に活用される。

【補足説明】
輸配送全体の効率化を検討する際に、車両ごとの積載率を算出することで、納品先や配送ルートによる課題、季節や曜日波動による課題など、改善のポイントが明確になります。

2.品質・サービスレベルに関するKPI

④棚卸差異
棚卸差異=棚卸差異÷棚卸資産数量

在庫の紛失、盗難、誤出荷等による帳簿在庫と実在庫の差異を計測し、在庫管理の改善に活用する。

【補足説明】
数量ではなく金額ベースで計算する場合もあります。差異数量の多い商品カテゴリや商品について原因分析と対策を行います。


⑤誤出荷率
誤出荷率=誤出荷発生件数÷出荷指示件数(受注数等)

誤出荷(品違い、数量違い、出荷先違い等)の発生率。

【補足説明】
棚卸差異への対策に似ていますが、誤出荷の多い商品や出荷傾向を特定して対策を行います。


⑥遅延・時間指定違反率
遅延・時間指定違反率=遅延・時間指定違反発生件数÷出荷指示件数(受注数等)

遅延(納期遅延)、時間指定違反の発生数。

【補足説明】
遅延が発生している納品先やエリアの分析を行うことで、その原因が地域性にあるのか、又は、配送管理や配送スキーム自体に課題があるのかが分かります。


⑦クレーム発生率
クレーム発生率=クレーム発生件数÷出荷指示件数(受注数等)

顧客クレームの発生率。誤出荷は上記の通りであるが、その他、書類のミスや作業者の挨拶・服装等サービスの官能評価にも用いられる。

【補足説明】
クレーム発生率を分析し、頻繁に発生するクレームに対してのマニュアル作成やクレーム事例の横展開を行います。

3.物流条件・配送条件に関するKPI

⑧出荷ロット
出荷ロット=出荷数量(数量、重量等)

輸送効率、庫内作業効率を改善する観点で、顧客別・納品先別の出荷ロットサイズを計測するもの。

【補足説明】
ビジネスの変化は早く、定期的に物流も変化させなければいけません。モニタリングを継続することで現状の物流を見直すタイミングが明確になります。


⑨配送頻度
配送頻度=配送回数÷営業日数

多頻度納品を改善するため、配送先当たりの配送頻度を計測するもの。

【補足説明】
少量多頻度の納品が近年のトレンドですが、本当に必要なサービスであるかは、定期的に営業や顧客へ確認を行い、サービスレベルを積極的にコントロールしていくことが重要です。


⑩納品先待機時間
納品先待機時間=納品先における待機時間の平均

納品先で指定時間に到着したにも関わらず待機が発生する場合、その改善のために待機の発生状況を計測するもの。

【補足説明】
待機時間はコストそのものです。恒常的に発生している場合は、輸配送の費用の中に待機コストが盛り込まれていますので、待機時間の短縮によりコストの適正化が図れます。

【参考】
「物流事業者におけるKPI導入のあり方に関する検討会」「KPI導入の手引き」(最終版)の公表について :国土交通省

物流KPIを導入する際に押さえるべき注意点

物流KPIの導入において注意すべき点は、対象範囲が広すぎたり、目標が高すぎたりしないことです。対象範囲が広すぎると、関係者で共通認識が形成できず、優先順位の統一が図れないといった障害が発生します。また、高すぎる目標設定も倉庫作業者など実際に業務にあたるメンバーの意欲を削いでしまいます。適切な導入方法については、今後掲載するコラムをご覧ください。

まとめ

冒頭で説明しましたように、物流を取り巻く環境は厳しさを増しています。物流企業のコストは上がり、荷主企業の物流費比率も上昇が続いています。人件費や燃料費といった物流企業の調達原価も高騰していますので、業務の効率化が大きなカギを握っています。

業務効率化のために、どのようなKPIを設定するべきか、企業やビジネスの状況により異なります。プロレド・パートナーズはそのような物流改善実行支援を得意としておりますので、貴社物流の現状分析から、KPIの設定と導入まで一貫して貴社ビジネスの効率化をサポートします。物流KPIの導入にご興味を持たれたら、まずは物流状況の相談からお気軽にご連絡ください。お待ちしております。

*本コラム内の用語
*人時=1人が1時間働いた時間を1人時としたもの。2人が4時間働いた場合は、8人時。

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