物流業界では人手不足、輸送コストの高騰、環境問題と言った多くの課題が発生しています。これらの課題解決を図る物流業務の効率化支援を目的に、国は「物流総合効率化法」を策定しました。
今回の記事では、物流総合効率化法の概要や目的、認定を受けるメリットや流れ、さらに2024年5月の改正で変更となったポイントを解説します。
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物流総合効率化法とは
物流総合効率化法とは、物流業務の効率化を支援する国の法律です。物流業界では、人手不足や消費者ニーズの多様化、環境問題への対応などの課題が発生し、物流業界の効率化が急務となっています。
なお、物流総合効率化法では「流通業務の総合化と効率化」と表現されているものの、主な対象は輸送、保管、荷捌き及び流通加工と物流業務に注力した内容となっています。
物流業務の効率化や環境問題への対応を実現するためには、物流事業者同士や荷主等との連携、業務の自動化をはじめとした物流DX、再生可能エネルギー設備の導入などを促進していく必要があります。ところが物流DXをはじめとした施策を導入するためには計画立案や資金が求められます。そこで、物流業務効率化への取り組みを資金面から支援するために、物流総合効率化法が制定されました。
物流総合効率化法の目的とは
物流総合効率化法は、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の第一章にて規定され、「流通業務の総合化及び効率化の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的としています。
物流の総合化や効率化の促進が求められる背景にあるのが、物流で発生しているさまざまな課題です。その課題を解決するために、物流の効率化が求められ国が物流業者の支援を行うことになりました。
物流業界の課題
物流業界では、以下のような課題が発生しています。
- 環境負荷低減の必要性
- 労働力の不足
- 需要の高度化と多様化(Eコマースの拡大)
これらの課題解決に向けた物流事業の生産性向上が不可欠となります。その際、個々の物流事業者の取組みのみでは限界があることから、物流事業者同士、荷主など多様な関係者と連携し取組みを促進していく必要があります。
物流業界の課題や対策方法、今後の動向については以下の記事で詳しく解説しています。
物流総合効率化法の認定を受けるメリット
物流総合効率化法の支援対象として認定を受けることで、さまざまなメリットが得られます。具体的な物流総合効率化法の認定によるメリットを解説します。
物流事業の総合的実施
事業の実施に当たり、各事業法の登録や許可を必要とする場合、効率化計画の認定申請と合わせて事業登録と許可を一括取得することができます。
補助金・税制優遇を受けられる
物流総合効率化法の支援対象となると、資金面でさまざまな補助金や税制優遇措置を受けられます。
- 計画策定経費・運行経費の補助
- 輸送連携型倉庫への税制特例(5年間法人税が割増償却8%および固定資産税が課税標準 1/2)
- 信用保険制度の限度額の拡充
- 長期低利子・無利子貸付制度
物流総合効率化法の支援対象となる事業
物流総合効率化法の認定基準要件と、要件と満たすおもな事業を順に解説します。
輸送モードの結節を行う機能等を有する一定規模の物流拠点施設を整備する事業
輸送モードの結節を行う機能など有した、一定規模の物流拠点施設の整備事業は物流総合効率化法の支援対象です。一定規模の物流拠点施設の整備事業としての認定基準要件は以下の通りとなっています。
- 幹線輸送と都市内輸送を結節する自動車ターミナルなどの広域物流拠点
- 幹線輸送を効率化するための中継輸送の物流拠点
物流のDX・GXによる効率化、生産性向上及び環境負荷の低減を図る事業
令和5年の物流総合効率化法改正により、物流のDXやGXによる効率化・生産化向上や環境負荷の低減を目的とした事業も支援対象となりました。同事業の認定基準要件は以下の通りです。
- 物流DX:物流施設の自動化に必要な施設の導入
- 物流GX:EV車両、再生可能エネルギー関係施設の導入 など
以下のような物流DX・GXを目的とした設備や機器の導入費用も、支援対象となります。
- 太陽光パネル
- 蓄電池
- EVトラック
- 充電設備
- 無人搬送車
- ピッキングロボット
- 立体自動倉庫 など
物流総合効率化法の認定を受けるための流れ
物流総合効率化法の認定を受けるための流れを以下にまとめました。
- 最寄りの運輸局などに相談する
- 物流担当窓口から事業計画や支援措置の確認を受ける
- 事業計画が認定対象、かつ支援措置を受けられる見込み(※1)があると認められる
- 具体的な事業計画を作成する
- 事業計画の最終確認を行う
- 認定基準の適合性を再確認する
- 支援措置を再確認する
- 正式申請を行う
- 認定のための審査(※2)を受ける
- 必要に応じて説明や補正を行う
- 審査終了後、総合効率化計画が認定される
※1 事業計画が認定対象かつ支援措置を受けられる見込みがあるか、以下の事項を確認する
- 計画が認定対象となるか
- 希望する具体的な支援措置
- 支援を受けるための調整は十分か
- 各事業法との関係、整合性
- 大まかなスケジュール
※2 審査では以下の行われる
- 申請書についての説明聴取
- 必要書類の審査
- 内容の補正指導
申請のために必要な書類は、国土交通省「物流総合効率化法に基づく支援」のページにてダウンロードできます。
2023年~2024年で改正されたポイント
物流総合効率化法は、二度の改正を受けて現在に至ります。2023〜2024年で改正されたポイントを順に解説します。
2023年の改正ポイント
従来の支援対象事業に加えて、「物流のDX・GXによる効率化、生産性向上及び環境負荷の低減を図る事業」が財政融資の支援対象に追加されました。
2024年の改正ポイント
トラックドライバーの負担軽減を目的とした、倉庫の機能強化のための任意的要件が追加になりました。以下のような機能を持つ、倉庫でのトラックドライバーの荷待ち時間削減のための設備導入が、物流総合効率化法の支援対象となります。
- 貨物の運送の用に供する自動車に係る自動車登録番号標を撮影し、当該自動車に係る情報を取得する機能
- 第二項に規定する人工知能関連技術を活用した情報システムにより前号の情報の解析を行う機能(官民データ活用推進基本法(平成二十八年法律第百三号)第二条 )
- 赤外線投光機能
「2024年問題」でのトラックドライバー不足による、物流の停滞を踏まえた支援要件追加となっています。
まとめ
物流総合効率化法の概要や目的、認定を受けるメリットや流れ、物流総合効率化法の改正ポイントについて解説しました。物流総合効率化法は物流企業の持つ課題解決が実現する支援を受けられる法律です。 業務効率化や生産性の向上を目的とした新たな機器導入などのコスト面での支援が受けられます。自社の物流DX推進のコスト面での問題解決となる可能性があるため、ぜひ活用してみましょう。
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