SCM/物流

物流の未来をリードするCLO~後編~データドリブン物流経営の進め方

前編ではCLOの役割について詳しく解説しました。物流業界では、労働力不足や輸送コストの高騰、環境規制の強化など、山積する課題に対応するためには、従来の経験や勘に頼る経営から脱却し、データを最大限に活用する「データドリブン経営」へのシフトが求められています。

本記事では、CLOがどのようにデータを活用して物流経営を変革していくのか、その具体的な進め方と課題解決の手法を解説します。

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CLOとデータドリブン経営

CLOが推進していくべき「データドリブン経営」について解説していきます。

データドリブン経営とは

CLOがリードするデータドリブン経営は、企業の競争力を高めるための鍵となります。物流に関わる膨大なデータを活用し、効率的な意思決定を可能にするこのアプローチは、従来の経験と勘に基づく経営を超えた新たな価値を生み出します。具体的な手法として、IoTやAIを活用したリアルタイムでの輸送状況や在庫データの収集による、物流プロセス全体の可視化が挙げられます。これにより、リードタイムの短縮や輸送効率の向上が実現します。

例えば、ある企業では、CLO主導でデータに基づいた在庫の最適化を実施し、目標在庫水準を達成しました。この成功は、データ活用の重要性を示すとともに、CLOのリーダーシップが企業の経営効率の向上に寄与できることを物語っています。データドリブン経営の普及により、CLOの役割は今後さらに重要性を増していくでしょう。

CLOとサプライチェーンのデータ統合

CLOは物流だけでなく、サプライチェーン全体のデータ統合を通じて、効率化と最適化を推進します。サプライチェーンの各プロセス(調達、製造、販売)で生成されるデータを統合し、分析することで、需給ギャップの解消や輸送コスト削減を実現します。

具体的には、AIを活用した需要予測モデルによる、過剰在庫の抑制と欠品リスクの低減が考えられます。需要予測システムの導入に際しては、その効果を可視化することが重要です。予測精度の向上がどの程度在庫削減に寄与するのか、物流コストがどのように適正化されるのか、さらには予測作業に要する工数がどれほど削減できるのかといった具体的な数値を明確にし、それに基づいて意思決定を行うことが、データドリブン経営の基本となります。

CLOと持続可能な物流のデータ活用

持続可能な物流の実現には、データ活用が欠かせません。特に、CO2排出量削減に向けた施策を実行する際には、データによる効果の可視化が重要です。例えば、モーダルシフトや共同配送の導入によって、CO2排出量がどの程度削減されるのか、さらに物流コストや在庫量、配送時間への影響がどのように変化するのかを明確にする必要があります。このようなデータの可視化は、CLOが施策実行の意思決定を行う上での基盤となります。

また、CLOはIoTやAIを活用し、リアルタイムでの輸送データやエネルギー消費データの収集と分析を行います。例えば、物流車両の走行データを基に、運行ルートの最適化や空車率の低減を図ることで、エネルギー効率を向上させることが可能です。さらに、再生可能エネルギーを活用した物流施設の運営や、配送時の省エネ走行の推進も重要な施策として挙げられます。

CLOは、企業の持続可能性目標を達成するために、環境への配慮と競争力向上を両立させるデータドリブン施策を推進します。そのためには、物流全体を通じたKPIの設定とモニタリング、施策の効果検証、そして継続的な改善が必要となります。CLOは、持続可能な物流を実現することで、企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)目標の達成に寄与する責任があります。

CLOが解決すべき課題とデータドリブンによる将来展望

CLOの役割が重要性を増す一方で、データ活用の面ではいくつかの課題が存在します。その一つが、部門間でのデータ統合の難しさです。サプライチェーン全体で生成される膨大なデータを統一的に管理・活用するためのプラットフォーム構築は、多くの企業にとって依然として大きな課題となっています。また、IoTやAIといった先進技術の導入に伴う初期投資の負担や、それに対応する人材のスキル不足も問題視されています。特に人材面においては、物流業界全体で見られる従業員の高齢化が、スキル継承や新技術の適応において大きな障壁となっています。

これらの課題に対して、CLOはデータドリブン戦略を活用することで対応します。例えば、データ共有プラットフォームを構築し、部門間での情報連携を強化することで、物流プロセス全体の効率化と最適化を実現します。また、データ分析スキルを持つ人材の育成や、外部の専門リソースを積極的に活用することで、スキルギャップを埋め、新技術の導入を加速させることが可能です。

将来的には、CLOは企業の経営戦略と物流戦略をデータに基づいて統合し、持続可能な成長を実現する中核的な存在となるでしょう。市場環境や技術が急速に進化し続ける中で、CLOのデータドリブンなリーダーシップは、企業の競争優位性を決定づける鍵となります。

CLOが推進するデータドリブン経営の実践ステップ

データドリブン経営を推進していく際に重要な、ステップを詳しく解説していきます。

1.現場データの統合

データドリブン経営を導入する第一歩は、物流現場のデータを統合し、課題を明確化することです。基幹システムから得られる出荷データや在庫データ、調達データに加え、物流会社からの輸送実績や配送先別の詳細データといった外部データを収集し、統一的なデータ基盤に統合する必要があります。この統合により、各部門で分断されていた情報を一元化し、可視化することが可能となります。

具体的な手法としては、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの導入が挙げられます。基幹システムにすべての情報を取り込むことが理想的な場合もありますが、多くのケースで基幹システムの再構築には多額のコストと時間を要するため、現実的ではありません。そのため、基幹システムと連携可能なBIツールを導入し、販売計画や物流会社からの請求明細などの外部データを取り込みます。そして、基幹システムのデータと統合・分析することで、課題を数値化し、改善の必要なポイントを明確化します。

これにより、CLOは物流プロセスのどこに改善の余地があるのかを的確に把握し、データに基づいた戦略の立案が可能となります。統合されたデータは、全社的な意思決定の基盤として機能し、効率的な課題解決への道を開く重要なステップとなります。

2.目標設定とKPI設計

現場データを統合した後は、改善に向けた目標を設定し、それを達成するための具体的なKPI(重要業績評価指標)を設計する段階に進みます。目標設定は、データ分析結果を基に、現実的かつ達成可能な範囲で行うことが重要です。例えば、「物流コストの10%削減」や「在庫回転率の20%向上」など、具体的な数値目標を掲げることで、取り組みの方向性が明確になります。

KPI設計においては、全社的な視点と部門ごとの役割を考慮する必要があります。輸送効率を示す指標として「車両積載率」や「配送遅延率」、在庫管理の指標として「在庫日数」や「欠品率」が挙げられます。たとえば、積載率の改善においては、物流部門単独での取り組みには限界があります。営業部門による販売条件の見直しや、店舗部門による配送頻度の調整など、他部門との連携が鍵となります。このように、部門をまたいだ取り組みには、データドリブンアプローチが非常に有効です。たとえば、「販売条件を変更すればX%の積載率向上が見込まれる」「配送頻度を最適化すればX円のコスト削減が可能」といった具体的な成果目標を提示することで、全社的な取り組みを具体的に進展させることができます。

さらに、KPIを達成するためのアクションプランを具体化し、各部門間で役割分担を明確にすることが重要です。CLOは、データに基づいて目標を設定し、それを全社で共有することで、各部門が同じ方向を向いて行動する環境を構築しましょう。このプロセスは、物流全体の効率化を推進するだけでなく、経営戦略との連携を強化するための重要な鍵となります。

3.リアルタイム管理の実現

データドリブン経営を成功させる上で、リアルタイム管理は欠かせない要素です。物流現場で収集されるデータを即時に分析し、それに基づいて迅速な意思決定を行うことで、改善サイクルを加速させることができます。

しかし、KPI管理を実施している企業の中には、データの収集や集計、分析に多くの時間を要し、月間実績の報告が翌月末になってしまうケースが少なくありません。1か月以上経過してからのKPI会議では、数値の悪化原因に対する記憶が薄れるなど、十分な分析ができないため、改善対応が遅れてしまうことがあります。こうした遅延は、競争力の低下や機会損失につながるリスクを伴います。

BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを活用してKPI集計を迅速化することで、経営層や現場担当者がリアルタイムで同じデータを共有し、迅速な意思決定を行うことが可能になります。たとえば、販売不振により在庫量が増加へ転じた場合、関係者が即座にデータを把握できれば、調達量や生産量の削減といった適切なアクションを迅速に取ることができます。また、販売が好調な場合でも、在庫確保の動きを即時に行うことで、欠品リスクを回避することが可能です。

このようなリアルタイム管理の実現により、物流プロセス全体の柔軟性と競争力が向上するだけでなく、顧客満足度の向上にも寄与します。リアルタイムでのデータ活用は、単なる物流改善の手段ではなく、変化の激しい市場環境において競争優位性を高める重要な武器となります。

CLOは、リアルタイム管理を導入することで、経営全体のスピード感を強化し、変化する市場ニーズにも迅速に対応できる体制を構築します。この体制により、企業の競争力はさらに強化され、持続可能な成長を実現する基盤が形成されます。

4.改善サイクルの継続的実行

データドリブン経営は、一度の改善で終わるものではなく、継続的なサイクルの実行が求められます。CLOは、データ分析とモニタリングを通じて、改善施策の効果を定期的に検証し、新たな課題を発見する役割を果たします。

継続的な改善サイクルの実現には、PDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルをデータに基づいて運用することが重要です。データ収集と分析により施策の効果を評価し、その結果を基に次の計画を立案します。また、施策の実行状況をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じて柔軟に対応を行う仕組みを整えます。

まとめ

データドリブン経営は、物流の効率化やサプライチェーン全体の最適化、さらには持続可能な物流の実現を可能にする、これからの物流戦略で必要不可欠です。CLOは、データを統合し、現場の課題を可視化することで、迅速かつ精度の高い意思決定を行い、企業の競争力向上を牽引する役割を担います。

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